災害想定した電波感度調査結果を公表、全国漁業無線協会

 一般社団法人全国漁業無線協会(上竹秀人会長)はこのほど、災害発生時を想定した漁業用海岸局による全国一斉の電波感度調査結果を公表した。
 大規模地震の発生等により一部地域で公衆回線等が使用できないような状況が発生した場合、公衆回線に頼らない漁業無線を活用することで、これら地域と外部とを結ぶ情報伝達網の維持や確保につながる場合がある。このため同協会では、社会貢献の一環として毎年協会員である全国各地の漁業用海岸局の参加を得て、全国一斉の電波感度調査を実施している。
 今年度は令和7年7月2日(水)午前10時から午前11時35分にかけて8MHz帯の調査を、同月9日(水)午前10時から午前11時49分にかけて27MHz帯の調査を実施した。27MHz帯は2年ぶり2回目で夏場の実施は初めて。
 調査は、全国共通波(8252kHz)及び4つの地区別波(北海道8773kHz、東北8740kHz、北陸・中国8737kHz)並びに、全国共通波(27524kHz)を使い、無線局運用規則第39条(試験電波の発射)に従い、それぞれの無線局が順次試験電波を発射し、それら電波を全国各地の無線局が一斉に受信することで、各地における受信感度を調査した。
 対象は、8MHz帯については、全国の漁業用海岸局(中短波・短波無線局)のうち、北海道から沖縄までの本協会会員25海岸局及び非会員1局。27MHz帯については、全国の漁業用海岸局(超短波無線局)のうち、北海道から沖縄までの本協会会員35海岸局及び非会員1局。各周波数帯共に一部局は施設メンテナンス工事中のため、今次調査では参加を見送った。
 8MHz帯感度調査の結果では、受信件数594件中、5段階評価の「3」以上は332件となり、メンテナンス工事をしている北海道地区/無線局の一部局を除き、全国規模で概ね一定の受信感度が得られた。本年1月の実施結果との比較(同じく北海道地区/無線局の一部局を除く)では、前回同176件、感度向上186件、感度低下232件だった。
 27MHz帯感度調査では、受信件数406件中、感度「1」が279件、「2」が59件、「3」が35件、「4」が22件、「5」が11件。岩手・福島の電波を長崎で、沖縄の電波を石川で受信するなど、電離層のスポラディックE層によると思われる長距離間の受信報告があったとしている。
 8MHz帯については、平成30年10月以降、各漁業用海岸局の協力により、全国共通波(全国一括呼出応答用周波数)の整備が順次進められてきている(調査時17局)。
 同協会の業務部長の鈴木照雄氏は電波タイムス社の取材に対し、「8MHzについては概ね良好な結果が得られたほか、27MHzは夏場ならではのスポラディックE層の影響も確認できた。今後も訓練を含めて実施を続けていきたい」と話していた。

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kobayashi
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