
首都圏国立大学合同ハッカソン開催 ソフトバンクと国立大学、企業向け新規事業アイデア探る
ソフトバンクと首都圏内の国立大学共催による合同ハッカソンが8月18日(月)から9月20日(土)まで約1ヵ月間にわたり開催されている。このうち東京外国語大学(東京都府中市朝日町)では8月25日、第三回目の合同プログラムがあり、学生たちや企業担当者によるワークショップの様子を取材した。
ハッカソンとは、システムの解析や改良を意味する「ハック(Hack)」と「マラソン(Marathon)」を組み合わせた造語。主にソフトウェア開発におけるエンジニアやデザイナー、プログラマーなどが集まり、一定期間集中的にアプリケーションやシステムなどを開発するイベントを指し、参加者がチームごとに意見やアイデアを出し合い、決められたテーマに沿って進めた開発の成果を競い合う。
ソフトバンクでは、「AI技術を活用して参加企業の新規事業を創造しよう」をテーマに、学生が1カ月でアイデア創出からプロトタイプ開発までやり遂げる企業参加型の実践イベントとして初めての合同ハッカソンイベントを企画。首都圏内にあるお茶の水女子大学、電気通信大学、東京外国語大学、東京海洋大学、東京農工大学、一橋大学の6大学の学生らを対象に参加者を募ると共に、学生によるアイデアの提唱先となる企業の参加を呼び掛けた。この結果、「花王」、「CRI・ミドルウェア」、「東京スター銀行」、「ハートビーツ」の4社が参加を表明し、応募者約60人から厳選した男女24人の学生が参加する形で「首都圏国立大学合同ハッカソン」がスタートした。
ハッカソンでは、学生とメンターとして参加する各企業担当者で1つのチームを構成し、全4チームでアイデアを競う。
学生らは、ソフトバンクが社内起業制度として実際に運用しているワークショップ制度「ワークショップby SBイノベンチャー」に参加して課題やニーズのヒアリングからアイデア出し、実際の新規事業としての活用に向けた具体化までの流れを学ぶ。
このほか、ソフトバンクからはアイデア創出に向けたツールとして、実務で役立つノウハウやAI・DX分野の技術を「レシピ」という形で学べるオンライン学習プラットフォーム「AxrossRecipe」や、誰でも簡単に利用できる生成AIサービスで、日常業務の効率化を実現するSBテクノロジー株式会社提供のAzure OpenAI Service活用サービス「dailyAI」、リアルタイムのWeb情報とGPTシリーズやClaudeシリーズなど最新のAIモデルを活用し、質問に対して根拠(引用)付きで回答を提示したり、包括的な調査とレポート作成を自動実行するAI回答エンジン「Perplexity Enterprise Pro」等が参加する学生らに提供された。
この日のワークショップでは、ソフトバンク担当者が実例を元に、そのプロダクトが解決する課題を抱える顧客が実在し、かつその顧客がプロダクトによる課題解決を強く望む状態を指す「Problem Solution fit(PSF)」に到達するまでの流れや検証方法を解説。参加者らはワークシートを活用して議論を重ねながら仮説の洗い出しや深掘り、検証方法の検討などを進めていた。
電気通信大学情報理工学域Ⅱ類一年の織田真顕さん(19)は、「ハードやロボット制作等のものづくりに向けたスキルアップしたいと思って参加した。CRI・ミドルウェアさんの担当ということで映像データのアクセシビリティ向上に向けていかに独自性を出すかに苦労しているがみんなで助け合いながら進めている。一位を目指して最後まで走り抜けたい」と話していた。
メンターとして参加している花王デジタル戦略部門デジタル戦略企画センターデジタル戦略企画部の廣澤祐さんは、「今の時代AIに聞けばそこそこの物が出てくる中で何を入れるかがビジネスパーソンとして求められる。自分で考え抜くことを大事にしながら目的や意義に目を向けて、いざ社会に出たときにそれを説明できるような人間になれるなら意義がある」と話していた。
各大学に所属していた経緯からコーディネーターとして参加した電気通信大学産学官連携センターの高尾敏史さんは、「単科大学の多くが他分野で学ぶ視点での交流が少ないことから理系と人文系の大学が交流できるような機会があればいいと思っていた。グループワークを通じて学生の間に少しでも観点を養ってもらいたい。学生が減少している中で大学としても単体で生き残れる時代ではない。こういう協力の在り方もあると思う」と話していた。
企画を担当したソフトバンクデジタルエンジニアリング本部デジタルソリューション開発第3統括部事業開発部第一課の寺田充樹さんは「新しい価値やアイデアの創出といった実践的な教育に貢献できたら」と話していた。
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