
新会社「イヨウガゾウラボ」を設立 ソフトバンクと東大、医用画像データ提供で医療AI研究開発等支援
国立大学法人東京大学(東京都文京区、藤井輝夫総長)、pafin(東京都千代田区、共同代表取締役:アズムデ・アミン、斎藤岳)およびソフトバンク(東京都港区、宮川潤一代表取締役社長執行役員兼CEO)などは、医用画像データの収集・加工・流通を通じて医療AI(人工知能)の発展を支援する新会社「株式会社イヨウガゾウラボ」を、2025年9月1日に設立した。
同事業は、東京大学による「ICT活用による医療画像データ流通システムの構築」プロジェクトから発足し、2019年にpafinが参画。その後、21年には東京大学とソフトバンクによる産学協創事業であるBeyond AI 研究推進機構での取り組みを経て、CTやMRIなどの医用画像の価値創出に向けた技術の共同研究に取り組んできた。
2022年には技術研究組合(CIP)制度を活用して、東京大学・金太一特任教授を研究リーダーとして「医用画像通信技術研究組合」を組成・設立し、CIPでの研究成果を活用した実用化研究(事業化検証)を経て、イヨウガゾウラボを設立し、サービスの提供を開始した。
イヨウガゾウラボでは、東京大学の先端技術による医用画像の価値化、pafinのシステム開発力による医用画像プラットフォームの構築・運営、ソフトバンクの事業推進力など各社の強みを生かし、医療・研究現場のニーズに応える新たな医用画像サービスを展開する。
医用画像を使った医療・ヘルスケア分野では、各種疾患の診断支援などさまざまな場面でAIの活用が期待されている。しかしその一方で日本国内では、個人情報保護に関する制度的な課題や技術的なハードルにより、AIの研究開発に必要な医用画像データが市場に十分に流通しておらず、研究開発機関や企業などが高精度なAIを開発することが困難であることが現状という。
こうした背景で、イヨウガゾウラボは、患者の同意に基づき医用画像データを安全に収集・加工して、AIの学習に必要な教師データを作成し、AIの開発に取り組む研究開発機関や企業へ提供することで、医療AIの技術革新を支援する。これにより、人々の健康促進や医療サービスの高度化に貢献し、誰もが健康に暮らせる社会の実現を目指す。
具体的なビジネスモデルとして、協力病院や医師との独自のネットワークを活用し、CTやMRIなどの医用画像データを患者の同意を取得して収集。収集した医用画像データは、医師監修による高品質な教師データの構築、AIの誤学習を防ぐためのノイズ除去や不適切なデータの除外、個人情報保護に配慮した顔変形やタグ情報の匿名化処理などの工程を経て、研究や製品開発に適した形式に加工し、期限付き使用ライセンスを販売する形で医療AIベンダーや医療機器メーカーや研究機関、医療機関等の顧客ターゲットに提供する。
提供開始時のサービスは次の二つを想定。一つ目のAI開発用セットサービスは、「脳動脈瘤セット」、「脳梗塞セット」のように、特定の疾患に対応した画像と教師データをセットで提供する。もう一つのオーダーメイドサービスは、医療機器メーカーなどの要望に応じて、特定の疾患部位や画像条件に対応するデータセットを個別に構築・提供する。
電波タイムズの取材に対し、イヨウガゾウラボの國枝良代表取締役兼CEOは、「医療AIの最大の壁『医用画像の不足』に正面から挑む。独自の収集・匿名化・流通技術で、高品質な画像データの循環を加速させ、医療AIの実用化を力強く前へ進めたい。そして、日本発の技術を世界に広げ、誰もが安心して質の高い医療を受けられる未来の実現に向けて挑み続ける」と話していた。
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新会社概要は次の通り。
▽社名:株式会社イヨウガゾウラボ(英文社名:Medical Imaging Innovation Lab Corp. )
▽所在地:東京都港区海岸1―7―1
▽設立日:2025年9月1日▽事業内容:医療で実際に使われている多様な医用画像データの収集と、医用画像データおよび教師データの運用・保守・管理および販売
▽代表者:代表取締役兼CEO・國枝良
▽資本金:1億5000万円
▽株主:ソフトバンク、pafin、国立大学法人東京大学他
この記事を書いた記者
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