NEC、多言語動画制作を効率化

 NECは、毎日放送(MBS、大阪市北区、虫明洋一代表取締役社長)と共同で、NECが提供するAIアバターソリューションに生成AIを活用し、多言語動画コンテンツの制作を大幅に効率化するWebアプリケーションのプロトタイプを開発、2025年8月から有効性を実証した。
 MBSとの取り組みは2025年4月から開始、8月からWebアプリを活用した実証を行った。
 同実証では、MBSの日本語のニュース原稿をもとに、多言語のニュース動画を制作支援するアプリで、従来、アナウンサーや編集者など複数の専門スタッフが1時間以上を要していた一連の工程を、1人の担当者がPC上で操作するだけで約10分に短縮できることを実証した。
 近年、放送業界では制作業務を担う専門人材の不足が課題となる一方、インバウンド観光客や在留外国人への情報発信のため、多言語対応の重要性が増している。
 こうした中、NECはDEEPBRAIN AI社のAIアバターソリューション(AIアナウンサー)を活用し、原稿入力だけでAIアバターが読み上げる動画を自動生成するサービスを提供してきた。しかし、外国語コンテンツを制作するには、事前に人の手で原稿やタイトルを翻訳し、動画投稿用の概要文やハッシュタグも各言語で用意する必要がある点が課題だった。
 今回開発したアプリは、日本語の原稿を入力するだけで、AIアナウンサー利用時における次の工程をシームレスに実行する。これにより、多言語コンテンツ制作を一人の担当者が直感的な操作で完結させることを可能にした。
 加えて、AIを活用した原稿制作支援機能を備えており、要点が入ったテキストを入力するだけで、アナウンスに適した構成・文体の原稿を自動生成する。これにより、担当者の文章作成スキルに依存することなく、質の高い原稿を容易に準備できる。
 アプリを使った作業の概要は次の通り。
 ①原稿の準備:日本語原稿を入力し、AI校正機能でチェック。メモ書きのような簡単な文章の場合、原稿制作支援機能がアナウンスに適した原稿へと推敲②映像の準備:ニュース映像など手元の素材を利用できるほか、映像がない場合は複数の画像を選んでスライドショー形式の動画生成も可能③メタ編集:AIによる見出し案・ハッシュタグ・要約文のメタデータ自動生成を活用④多言語編集:編集した各テキストを、指定した複数言語(英語、中国語、韓国語、フランス語)にAI翻訳⑤動画コンテンツ生成:各言語の翻訳テキストをもとに、AIアナウンサーによる音声合成とアバター動画を言語毎に自動で生成⑥投稿:動画配信やSNSへ投稿する際、編集した各言語のハッシュタグや要約文のメタデータ付与。
 MBSは同アプリを活用し、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」をテーマにしたニュース動画を多言語で制作する実証を行った。その結果、従来はアナウンサーの手配や収録、翻訳、動画編集など多くの専門スタッフと時間が必要だった多言語動画制作を、1人で約10分という短時間で実現し、制作現場の大幅な効率化と、迅速な多言語情報発信の可能性を実証した。

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。