「Matter」普及加速に向けて連携協定、MCPCとCSA

 モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(東京都、安田靖彦会長、MCPC)は2025年10月10日、IoT標準規格「Matter」を策定する無線通信規格標準化団体Connectivity Standards Alliance(アメリカ カリフォルニア州デイビス、プレジデント兼CEO Tobin Richardson、CSA)と、日本における「Matter」などを基盤としたスマートホームの普及・啓蒙を目的としたマーケティング連携協定を締結した。
 Matterは、CSAが推進する業界統一のオープンソース接続規格で、メーカーを問わず、プラットフォームを超えてIoT機器間のシームレスな通信を可能にするもの。異なるメーカー間の相互運用性を確保し、設定の簡素化とセキュリティの標準化を実現することで、スマートホームの導入・運用の利便性を大幅に向上させることが期待されている。
 日本におけるスマートホーム普及加速に向けては、利便性の追求(日常生活での具体的なメリット)、ユーザビリティの改善(スマホをコントローラとした操作性向上)、共通規格の普及が鍵となっている。スマートホームは、モバイル端末やIoTデバイスを活用した生活支援インフラとして、社会的課題の解決に貢献する可能性を有しているが、現状ではメーカーごとのアプリ設定や認証方式の違いにより、ユーザーが複数のアカウントや接続設定を個別に行う必要があり、導入障壁が高い状況という。
 CSAは、800社以上のグローバルテクノロジー企業で構成される国際標準化団体で、IoT 分野におけるオープンな標準規格の策定と普及を推進している。2024年には日本支部が設立され、日本市場におけるMatterの認知向上と実装支援を本格化させている。またMCPCはこれまでもエンタプライズ市場などでのIoTの普及活動に携わっており、さらにホームでのIoT市場拡大を考えた際にまだ課題があるということから、ホームIoT=スマートホーム機器のグローバル標準を策定し、市場プロモーションを行っているアライアンスとの連携強化が不可欠と判断し、協調体制の構築に至ったとしている。
 協定を機に、MCPCでは技術委員会活動の一環として「Home IoT推進WG(ワーキンググループ)」を立ち上げ、会員企業とともにMatterを含むスマートホーム技術を導入する際の検証や導入支援を模索・推進していく。具体的には、スマートフォンを中心とした操作性向上や具体的な生活メリットの提示を通じて、ユーザーへのプロモーション活動を展開し、スマートホームの利便性を広く伝えていくほか、Matterがセキュリティの標準化を重視していることから、普及を通じて、メーカー間の認証方式の違いによる導入障壁を解消し、ユーザーが安心して利用できる環境づくりに貢献していくとしている。
 東京都港区芝公園の機械振興会館で行われた締結式には、CSA側からCEOのTobin Richardson氏とHead of TechnologyのChリsLaPre氏、日本支部代表の新貝文将氏と同副代表の中村成貴氏が出席。MCPC側からは代表幹事の畑口昌洋氏とHome IoT推進WGリーダーの小熊堅司氏が出席し、協定書に署名して互いに握手を交わした。
 畑口氏は、「Matter普及に向けて契約できることをうれしく思う。これを機会に普及に努めていきたい。MCPCは多くの会員があり、Bluetooth普及での経験もあることから自信を持って推進していきたい。これを機にいい協調ができたら」と話した。
 またTobin氏は、「こういう機会をいただき、新しい技術を広めていけることはうれしく思う。MCPCは実績も多くあり、同じ形で一緒にできることを光栄に思う。Matterは使われて初めて効果を発揮する技術。家庭で実際に使ってもらえたら」と話した。
 MCPCが推進するモバイル/IoT/AI技術の利活用と標準化活動において、スマートホームは重要な柱の一つという。スマートフォンの普及率が97%(NTTドコモ モバイル社会研究所調査)に達する現在、OSレベルでMatterをサポートする環境が整っており、ユーザーはメーカーを問わず、容易にスマートホーム機器や住宅設備と連携できる。また、住宅・不動産業界では、スマートホーム機器の導入が物件価値の向上や国の補助事業との連携に寄与しており、介護・物流・医療などの分野でも、スマートデバイスとの連携によるサービス品質向上が期待されているという。
 MCPC技術委員会Home IoT推進WGリーダーの小熊氏は、「スマートホームは、ユーザーが日常生活の中で最も頻繁にIoT技術の利便性を実感できる環境の一つ。日本ではスマートフォンの普及率が97%に達している一方で、スマートホームの普及率は13%(リビングテック協会ネットリサーチ2023)にとどまっており、スマートホーム市場は今後の成長が期待される分野と捉えている。近年ではMatterなどのオープンな標準規格の策定が進み、スマートフォンへの対応も拡充されつつある。ユーザーにとって馴染み深いスマートフォンは、家庭内でも外出先からでもスマートホーム機器を操作できる主要なデバイスとして、ますます重要な役割を担っている。MCPCでは、スマートホームに関するサービス提供上の課題解決やユーザーへのプロモーション活動を通じて、スマートホームの普及促進に貢献していきたい」と話していた。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。