電波技術協会賞表彰式を開催

 一般社団法人電波技術協会(久保田誠之理事長)は11月18日(火)、東京都千代田区のKKRホテル東京で第39回電波技術協会賞贈呈式を開き、通信や放送、電波利用技術の各分野で功績のあった12人を表彰した。
同賞は、通信・放送・電波利用に関する技術の振興、発展に顕著な功績のあった個人の表彰を目的に昭和62年に創設され、今年で39回目を数える。これまでに延べ362人を表彰してきた。
 表彰に当たり、主催者を代表して久保田理事長は「ご推薦いただいた関係機関の皆様や選考委員会の皆様に厚く御礼申し上げる。またそれぞれの専門分野でのご功労、ご功績に敬意を表するとともに心からお祝い申し上げる。今年はイタリア・ボローニャでマルコーニが無線通信実験に初めて成功してから130年、我が国で放送開始から100年と、電波技術にとって大きな節目の年。この記念すべき年に汗を流してこられた会社関係の皆様、推薦者や賛助会員の皆様にも参加いただき本日の贈呈式を開催できることうれしく思う」とあいさつした。
 来賓として、総務省情報流通行政局長の豊嶋基暢氏は、「受賞された功績を拝聴し、私自身役人の中では比較的電波に携わる機会が長かったが、当時の思いを巡らせる中でこういう方々のご尽力があったということを思い出し、積み上げていただいたご功績のおかげで通信放送社会があるということを実感した。逓信放送はじめ各種無線通信や電波測定の技術の向上に大きく貢献いただいた。今年はAM放送から放送100年の節目。ラジオからテレビ、衛星放送多チャンネル時代、地デジと大きなビッグイベントがあり、大きな技術革新の中で電波利用をどう高めるかの取り組みを進め、日常生活を豊かにするという側面や国民の知る権利に応え健全な民主主義の発達に寄与するという重大な役割を担ってきた。通信ではモバイルの進展が世の中を変えた。ブロードバンド化からインターネットサービスと、電波技術はモビリティを大きく変え、いつでもどこでもが一般の国民に手が届くようになった。最近では時間に関係なくコンテンツを楽しめるようになり、技術的な可能性の花が開くことで通信と放送の関係性も変わってきている。皆さんの取り組みにあらためて感謝し、通信行政を担う一員として、我が国の経済社会をよりよくしていきたいと決意を新たにした」とあいさつした。
 このほか、NHK技術局長の伊藤寿浩氏は「さらなるサービス高度化に向けて信頼性の高い電波インフラ整備、受信機等の技術開発や魅力あるコンテンツ製作とそれを支える技術が歩調を合わせて進歩発展していく必要がある。弛まない技術革新を通じてより豊かな情報社会の実現に向けて皆さんと推進していきたい」とあいさつ。KDDIコア技術統括本部執行役員常務副統括本部長の山本和弘氏も「今後も電波技術の進展は社会課題解決や新たな価値創造の原動力となる。次世代社会インフラ支える基盤として電波技術への期待は高まっている。皆さんの活躍が世界の情報通信の未来を切り開くことを確信している」と祝辞を贈った。
 受賞者を代表して、元九州朝日放送取締役技術担当の松永慎二さんは、「栄誉ある賞をたまわり光栄に存じる。私たちはデジタル変革期の中、通信、放送、電波利用の分野で技術の向上や普及の取り組みに参加してきた。通信技術の進歩と放送のデジタル化は私たちの生活をより便利で安全なものに変えた。振り返ると、移動通信の高速化や700メガ再編などで可能になったモバイル通信はライフスタイル向上に大きく貢献した。またデジタル放送はテレビ受信機の開発や緊急地震速報、災害情報伝達システムなど人々に災害情報を正確かつ瞬時に届ける不可欠なシステムを構築した。さらに送信者も停電時でも伝達システムの生命線は確保される。国際スポーツ中継の高精細化は競技の感動をより深め、8K放送では表現できる範囲をより広げ視聴体験を豊かにした。こうした取り組みに参加できうれしく思うとともに、評価いただき身に余る光栄。取り組みは土台となった電波制度や技術基盤によってのことであり、それらを整備した行政組織や団体、事業者のご努力に敬意を表したい。何より諸先輩や同輩、メーカーなどすべての方に感謝申し上げる。今バトンタッチした後輩にとっても賞が励みとなり、これからの技術発展に寄与する。我々もエールを贈り、これからの電波技術の発展に尽くしていきたい」と喜びを語っていた。
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 各受賞者と功績は次の通り。
 (日本放送協会推薦)
 ▽河端英一氏(元日本放送協会松山放送局技術部部長、現株式会社明電舎社会・電鉄システム営業本部社会システム営業部専任部長):NHK全国放送所の電源強化整備などによる安定した電波確保に貢献
 ▽緒方一貴氏(元日本放送協会放送技術局局長、現エキスプレス顧問/KDDIコア技術統括本部ネットワーク開発本部顧問):スポーツ中継における国際信号のハイビジョン化など映像技術の発展に貢献
 (NTT推薦)
 ▽古野辰男氏(元NTTドコモ総合研究所主任研究員、現ドコモ・テクノロジ開発推進部専任課長):移動無線通信システムの伝搬特性解明及び回線設計の最適化により無線アクセス方式の発展に貢献
 ▽中川匡夫氏(元NTT未来ねっと研究所グループリーダ、現鳥取大学工学部電気情報系学科教授):無線周波数回路技術と無線信号処理技術の研究開発により無線通信システム技術の発展と展開に貢献
 (KDDI推薦)
 ▽伊藤泰成氏(現KDDI電波部):移動体通信衛星サービス用地球局の衛星追尾精度の改善・向上による通信サービス安定提供に貢献
 ▽井上隆氏(現KDDIエンジニアリングエリア設計部):セルラーシステムのエリア設計におけるカバーエリア予測精度の向上によるモバイル通信サービスの普及に貢献
 (一般社団法人日本民間放送連盟推薦)
 ▽片柳幸夫氏(元福島中央テレビ常務取締役)700MHz帯の周波数再編等により放送事業及び移動通信の発展に貢献
 ▽松永慎二氏(元 九州朝日放送取締役技術担当):地上デジタル放送移行と営放システムの構築、FM補完放送の積極的置局により放送事業の発展に貢献
 (一般社団法人電子情報技術産業協会推薦)
 ▽安木成次郎氏(元東芝映像ソリューション取締役上席副社長、現TVS REGZA顧問):テレビ受信機の開発や放送規格策定などによりデジタル放送の普及促進に貢献
 ▽松下智昭氏(元DXアンテナ開発第1部第1課課長/同社技術規格室室長):テレビ受信システム機器及びケーブルテレビFTTH化に伴う機器の技術開発と普及に貢献
 (一般財団法人電波技術協会推薦)
 ▽森川栄久氏(現国立研究開発法人情報通信研究機構ネットワーク研究所ワイヤレスネットワーク研究センター宇宙通信システム研究室主任研究技術員):我が国の基幹的な衛星通信実証実験による大容量移動体衛星通信技術及び通信・測位複合技術の研究開発に貢献
 ▽喜多村和洋氏(元シャープ執行役員スマートディスプレイシステム事業本部長):世界初の8K放送対応テレビの商品化・映像体験の高度化に貢献

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。