自律運航など最先端デジタル技術導入
日本郵船(東京都千代田区、曽我貴也社長)によると、同社はデジタル技術を活用した安全運航の達成と船上業務の効率化を目指し、最新の自律運航システムをはじめとするマリンDX機器を搭載した自動車専用船(全長:199・95m、全幅:38m)を2026年3月に竣工予定。自律運航システム、大動揺防止システム、船内全域をカバーするWi-Fiネットワークを同船に搭載し、実際の商用航海中にトライアルを実施して効果を検証する。
近年、船舶の大型化や交通量増加に伴って操船の難易度が高まっているほか、搭載機器の複雑化などにより乗組員の負担が増加している。また、航海中の事故の原因の7割近くはヒューマンエラーに起因しており、安全運航の達成にはその予防と船上業務の効率化が不可欠となっている。
今回搭載する自律運航システムでは、船員監視のもと、自動で衝突・座礁を回避し安全な運航を支援する。従来操船者が手動で行っていた航海当直時の情報収集、状況分析、避航計画の立案などをサポートすることで操船者の負担を軽減し、安全性の向上を目指す。 このシステムは、公益財団法人日本財団(東京都港区、尾形武寿会長)が進める無人運航船プロジェクト「MEGURI2024」で開発されたもので、AIを活用した画像認識技術やレーダーターゲットの自動解析技術などにより周囲の情報を収集して状況を分析し、衝突リスクなどの情報を可視化するほか避航計画を立案して、自動で操船を行う。
二つ目の、大動揺防止システムは、海象条件が同じでも、船の針路や速力によって船体の挙動は大きく異なり、場合によっては非常に大きな動揺が発生して貨物の荷崩れなどの危険が生じることがある。専用のレーダーによって観測された波浪データをもとに本船コンディションに応じた船体動揺をシミュレートした結果に基づき、最も揺れにくい針路と速力を操作者に提案することで大きな動揺の発生を予防し、貨物の保護と安全性の向上を目指す。
もう一つは、船内全域をカバーするWi-Fiネットワーク。衛星通信の発達により、船陸間の通信環境は改善が進んできているが、船内では船橋(ブリッジ)や居住区など通信可能な場所が限られているのが現状。機関室や甲板上などの現場では、オンラインマニュアルや資料の閲覧のほか、リアルタイム映像でのトラブル状況の確認、傷病者発生時の陸側医療機関とのコミュニケーションなどが困難な場合がある。
また、船体は金属でできているため、船内コミュニケーションに使うトランシーバーが届けにくい場所が存在し、日常業務に支障をきたすことがある。これらの課題を解決し船上業務の効率化と安全運航を実現するため、同船には船内全域にWi-Fiアクセスポイントを設置し、船内の通信環境を大幅に改善する。
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※MEGURI2024:内航海運の少子高齢化に伴う人手不足、ヒュ-マンエラ-による海難事故といった社会的課題の解決と日本の海事産業や関連産業の強化を目的に、無人運航船の実用化を目指して技術開発を進めるプロジェクトで、日本郵船グループも参加している。