富士通、ジョブ型人材マネジメントへモデルチェンジ
富士通は12月15日にオンライン会見し、サステナビリティ説明会を開催した。
富士通のサステナビリティ経営について執行役員常務CSSOの山西高志氏が説明した。
山西氏は「富士通のパーパスは“イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより接続可能にしていく”ことだ。当社の事業活動すべてにおいてこのパーパスが起点になっている。富士通の2030年に向けたビジョンは“デジタルサービスによってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになる”ことだ。このビジョンに向けた取り組みを行っていくことで、会社の成長、企業価値向上を実現していく。そこにおいて重要なテーマをマテリアリティとし、定めたのは『必要不可欠な貢献分野』において、付加価値最大化と社会インパクトを創出していくこと。そして、マテリアリティ『持続的な発展を可能にする土台』は、成長の加速、磐石な経営基盤を打ち出している」とした。
さらにマテリアリティフレームワークとして「先ほどの『必要不可欠な貢献分野』は▽地球環境問題の解決▽デジタル社会の発展▽人々のウェルビーイングの向上―の領域である。『持続的な発展を可能にする土台』はテクノロジーや経営基盤、人材である。こういった領域において、お客様にテクノロジーやデジタルサービスを提供することで、インパクトを創出する。それからコミュニティや従業員、サプライチェーンへの働きかけで社会インパクト、財務インパクトを出していく」と話した。
企業価値を高める富士通の人材戦略について取締役執行役員専務CHROの平松浩樹氏が説明した。
はじめに時田隆仁富士通代表取締役社長CEOのトップメッセージを紹介した。時田氏の人事改革哲学は「『事業は後からついてくる。駆動力は人である』。まず人事改革から着手。これなくして、事業ポートフォリオの改革は困難。変化対応力から、変化創造力へ」という。
「時田社長は『我々の変革の根幹には人がいる』と強い信念を持っている。それは『事業は後からついてくる。駆動力は人である』の言葉に象徴されている。富士通は自ら変化を創造していく力を社員とともに育み、社会の持続可能性に貢献する企業を目指している。パーパスドリブン経営との一体性として、パーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく。これを実現していくためのものだ。HR Visionでは、社内外の多才な人材が俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業へ―と定めている。これらは様々な人事・機構改革の起点である」と平松氏。
そして、ジョブ型人材マネジメントへのフルモデルチェンジを断行したという。ここでは4項目を挙げた。▽事業戦略に基づいた組織デザイン▽チャレンジを後押しするジョブ型報酬制度▽事業部門起点の人材であるリソースマネジメント▽自律的な学び/成長支援―である。ジョブ型報酬制度をさらに細分化すると▽職責ベースの報酬体系▽高度専門職系人材処遇制度▽評価制度見直し―である。
続いて、人事改革における取り組みで、詳細を説明した。「ジョブ型人材マネジメントを基盤として、組織文化を育みながらアウトカムとして財務、非財務指標の改善を目指している」(平松氏)。
ジョブ型人材マネジメントについてさらに見ると、平松氏は「従来の富士通の人材マネジメントは“適材適所”だった。現在は“適所適材”である。これは、マーケットや競合の変化を予測して戦略を策定し、それを実現させるために必要な組織と人材を構想する。そこから現有の人材とのギャップを明確化しそれを埋めるための具体的な施策を打つことである。このジョブ型人材マネジメントの中核となるのがポスティングの大幅な拡大である。これまで会社や人事が行ってきた配置転換やローテーション、昇進昇格ではなく、社員一人ひとりが実現したいキャリアプランを自律的に考え、ポスティングで異動や幹部社員昇格を目指す形に大転換した。これにより社員はより主体的に成長の機会を掴み、各組織もまた適切なポジションに最適な人材を獲得できるという、双方にとってメリットのある仕組みを構築している」と述べた。
さらに新卒一括採用から『多様な人材を通年でフレキシブルに採用』している。新卒採用・キャリア採用の区分にこだわらず計画数も定めない。2026年度(2026年4月入社)の新卒採用より、「ジョブ型人材マネジメント」の考え方を拡大移行している。「多様な人材を最適なタイミングで獲得することで、常に企業戦略に合致した人材ポートフォリオを追求する。これにより市場の変化に迅速に対応できる人材戦略を実現し、競争優位性の確保に貢献している」と平松氏。
このほか富士通における人事改革で『キャリアオーナーシップ』を挙げた。これは、会社任せではなく、社員が自らより良い生き方・働き方を考え主体的にキャリアを形成するという意識・行動だ。会社はキャリアの機会を提供するスタイルであり、社員は受け身ではなく自らキャリアにチャレンジする。個々の目指すキャリアに応じた専門的教育を主体的に学ぶようになる。
さらに『ダイバーシティ&インクルージョン』『従業員エンゲージメント』を説明した。
次期中期経営ビジョンへの方向性と施策は「AI共存・人中心の組織変革とデータドリブンHRによる価値創造をめざす」こと。ここでは次の3項目を挙げた。
▽人とAIの協調で生産性を向上、組織・マネジメント変革の推進(AIとの共存・協働で、人はより創造的で高度な業務に専念。組織全体の生産性を高め、抜本的な組織・マネジメント変革をめざす)▽グローバルレベルでの人材ポートフォリオの最適化(俊敏なチーム編成と多様な価値観で、世界規模の価値創造を加速)▽データドリブンHRによる社会課題解決と産業貢献(先進的なデータ活用と科学的知見で、社会全体の人材課題解決と産業の発展を主導)―とした。
人的資本経営の実践のキーは▽Gapの明確化(あるべき姿を描き、現状とのGapを明らかにする)▽人材流動性(個々がキャリアオーナーシップを発揮し自律的にチャレンジ)で、これらが合わさったものだとした。
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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