ROBO-HIがクマ対策、公道を自律走行できる警備ロボで

 ROBO-HI(東京都中央区、谷口恒代表取締役社長)は、同社の自律走行警備ロボ「PATORO(パトロ)」において、近年被害が拡大しているクマなどの野生動物対策に特化した新機能を強化・展開すると発表した。
 従来の「固定式」の忌避(きひ)装置が抱えていた最大の課題である「動物の慣れ(馴化)」に対し、自律移動ロボならではの不規則な「動き・音・光」の組み合わせでアプローチし、人と動物の棲み分けを支援する。
 近年、クマ被害が深刻な社会問題となっている。これまでLEDライトや超音波、爆音機などの設置型対策機器が導入されてきたが、野生動物は学習能力が高く、場所が変わらず刺激が一定である「固定式」の装置には、時間が経つと危険がないと判断し、慣れてしまう(馴化する)という課題があった。
 そこでROBO-HIは、自律走行ロボ「PATORO」の機動性を活かし、「場所を特定させない」「刺激パターンを読ませない」ことで、この馴化問題の解決を図る。

 クマ対策ソリューションの3つの特長は次の通り。
 このソリューションでは、次の3つの要素を複合的に組み合わせることで、クマ等の野生動物に対して「得体の知れない生物(脅威)がいる」と認識させる。
 ▽自律移動による圧倒的な「生体感」
 従来の固定式と異なり、PATOROはエリア内を自律的に動き回る。 クマを含む野生動物にとって、静止している物体よりも「動いている物体」の方が脅威として認識されやすく、ロボが実際に移動することで、まるで生き物が巡回しているかのような“生体感”を演出する。
 PATOROは、一般社団法人ロボットデリバリー協会の「安全基準適合審査」に合格しており、地域の警察へ届け出だけで公道走行ができる。私有地を含めて地域の生活圏を広く巡回できる。
 ▽AIスピーカーによる「音の移動情報」
 搭載されたAIスピーカーからは、オオカミの遠吠えや人間の会話音声、破裂音などをランダムに再生する。
 単に大きな音を出すだけではなく、ロボが移動しながら発音することで、「音が近づいてくる」「遠ざかる」といった方向性が生まれる。この聴覚的な“動きの情報”は、クマの警戒心を強く刺激し、接近を躊躇させる効果が期待できる。
 ▽回転灯による「視覚的な威嚇」
 高輝度の回転灯(パトランプ)を作動させながら走行する。 暗闇の中で光源そのものが移動し、光の当たり方が刻一刻と変化することで、動物に強い違和感と警戒心を与える。

 「PATORO」の最大の強みは、これら3つの要素をランダムに組み合わせられる点にある。
 すなわち走行ルートのランダム化=毎回決まったルートではなく、不規則なルートで巡回。刺激のランダム化=音の種類、音量、発音のタイミング、回転灯のパターンをAIがランダムに制御。「いつ、どこから、どんな刺激が来るか分からない」状況を作り出すことで、野生動物の学習・予測を困難にし、長期的な忌避効果の維持を目指す。

 今後は、自治体等と連携し、実証実験および導入エリアを拡大するとしている。

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。