GTJ、業務用デジタル自営通信機器2026年の展望
総合トレーディングジャパン(GTJ、東京都千代田区、劉震社長)は、業務用通信機器分野でグローバルに展開するHytera Communications Corporation Limited(Hytera/ハイテラ)より、業務用デジタル自営通信機器の国内展開に関するパートナーとして、認証取得、販売、保守・サポートなどの事業を手がけています。劉社長および来日中のHytera社北東アジア地区統括副本部長Edward Lam氏は、「電波タイムズ」の新春インタビューに応じ、両社の近況と2026年に向けた展望について語りました。
GTJ関連
1.新型本質安全防爆携帯無線機「HP79XEx IIC」「HP71XEx IIC」発売
プラント、石油コンビナート、化学・製薬工場、ガス製造・備蓄施設、石油備蓄基地など、爆発性雰囲気が存在する現場では、本質安全防爆構造の通信機器を使用することが労働安全衛生法、消防法、電気事業関連の法令により求められています。当社ではこれまでも、危険エリアにおける通信の安全確保を最優先事項として取り組んでまいりました。
2017年に発売した本質安全防爆無線機『PD798Ex』は、全国の石油・化学・ガス事業者、消防機関、新エネルギー分野など、幅広い現場で長年ご採用いただき、現場の最前線で確かな実績と強い信頼を積み重ねてきました。PD798Exにご満足いただく一方で、〝より小型で軽量な無線機がほしい〟〝防爆仕様イヤホンマイクを増やしてほしい〟といった切実な要望が多く寄せられておりました。
こうした現場の声に誠実に向き合うべく、当社とHytera社では、無線機本体の機能向上に加え、アクセサリー類の安全性・操作性・耐久性の強化にも継続して取り組んでまいりました。
その成果として誕生したのが、このたび発売した『HP79XEx ⅡC』『HP71XEx ⅡC』です。防爆仕様イヤホンマイクとの組み合わせ運用を前提に設計を最適化し、防護具を着用した状態でもスムーズに操作できる点が、前機種とは大きく異なる特徴です。
新型防爆無線機は、最大2W送信出力、IP68防水防塵、米軍規格MIL―STD―810Hへの準拠、マイナス30~60度Cの広範な使用温度範囲、約390gの軽量ボディなど、複数の国内唯一の特長を同時に実現しています。さらに、最新のRF設計により受信感度が向上し、従来機種より通信距離が1割以上拡大しました。過酷な環境下でも高い信頼性で通信を確保し、現場作業の安全と効率の双方を支える装備としてご評価いただけるものと考えております。
発売後は展示会やデモンストレーションを通じて積極的に紹介しており、〝本体が軽く使いやすい〟〝アクセサリー運用の自由度が上がった〟〝緊急時の連携がより確実になる〟といったお声を多数いただいています。現在、多くの企業様が導入をご検討されており、『効率性が上がる』『緊急時の対応がより確実になる』といった声もいただいています。今後も現場のお声を大切にしながら、製品・アクセサリー双方の一層の改善に努めてまいります。
2.大阪・関西万博「中国パビリオン」専用通信機器の導入を支援
2025年4月から10月に開催された大阪・関西万博では、Hytera社が『中国パビリオン』における専用通信技術の公式提供企業に選定されました。当社はその日本国内パートナーとして、システム設計段階から導入、現場運用、保守サポートに至るまで幅広く関わり、パビリオンの通信インフラを支える役割を担いました。
パビリオンの運営チームには、当社より『Hytera HyTalk PoCクラウド型通信システム』を提供し、開幕前の設営期間から閉幕までの半年間、通信の最適化と運用管理を継続的にサポートしました。本システムは、個別・グループ通話、GPS位置情報共有、暗号化通信などに対応しており、展示運営、来場者誘導、イベント管理、警備、要人対応、緊急連絡など、現場の多様なオペレーションを一元的に支えました。
会期中は一日数千~数万人規模の来場者が訪れる極めて混雑した環境でしたが、通信トラブルや遅延は一度も発生せず、半年間にわたり安定稼働を維持しました。特に、ハイピーク時でも通信が途切れず、指示系統が滞りなく運用できたことは、パビリオン関係者から高く評価されました。大規模国際イベントにおける実運用を通じ、Hyteraの技術力と当社サポート体制の信頼性を実証する結果となりました。
また、当社が運営するクラウド型PoC通信サービスは、万博パビリオン向けの運用にとどまらず、2022年のサービス開始以来、国内の運送業、教育機関、エネルギー関連施設など、さまざまな業種のお客様に導入・活用いただいております。通信の安定性、導入の容易さやランニングコストの最適性、業務端末としての堅牢性・操作性が評価されており、今後もさらなる強靭性・安定性の向上を図り、お客様の業務に寄与する通信サービスの提供を継続してまいります。
3.Hytera関連 2025年のトピック
業務用無線通信分野を前進させる最大の原動力は〝技術革新〟です。2025年、HyteraはAI・5Gといった先端技術を積極的に取り入れ、グローバルのパートナー企業と協力しながら、次世代のスマートコミュニケーション技術の確立に取り組んでおります。
大阪・関西万博の中国パビリオンでは、会期6か月間を通じ、高負荷環境下でも安定した通信を提供し、1日最大22万人規模の来場が発生した日でも遅延のないネットワーク運用を維持いたしました。この実績は、都市型イベントや防災インフラにおける高度通信の可能性を示すものとなりました。
またHyteraは、世界各地の主要イベントにおいて通信サービスの専業プロバイダーとして重要な役割を果たしております。たとえば、ASEAN首脳会議(マレーシア)やG20首脳会議(南アフリカ)といった大規模国際サミットに専用通信機器・サービスを提供しており、セキュリティと機密性が極めて重視されるこれらの場面で、主催者から高い評価と信頼を獲得しています。
日本国内においては、新世代の『ⅡC防爆対応デジタル無線機』が安全性・軽量性・耐久性の面で高く評価されており、エネルギー・化学・製薬など、安全性を最重視する産業分野からも大きな期待が寄せられています。
さらに、INCHEM TOKYO 2025に参考出展した本質安全防爆スマートフォンは、既存の防爆無線機ユーザーを中心に大きな反響を呼び、「早期の製品発売を望む」という声が非常に多く寄せられました。
企業体制の強化も進んでおり、モロッコやタイでは現地オフィスが拡充され、地域密着型のサポート体制が一段と強化されました。加えて、南アフリカ、コロンビア、クロアチアの3地域で開催された『Hytera Global Partner Summit(HGPS)』では、世界各地のパートナーとの協業がさらに深化し、産業・公共セクターのデジタルトランスフォーメーションを支える新たな取り組みが進展しています。
技術分野では、AIと統合した指揮統制プラットフォームが進化し、防災・治安・インフラ監視などの意思決定支援に活用が広がっております。また、技術認証や産業エコシステム構築の面でも成果があり、HyteraのMCXソリューションは4年連続で「国際クリティカルコミュニケーションアワード(ICCAs)」を受賞しました。2025年には、香港都市鉄道向けの5G MCXシステムが「交通部門ベストアプリケーション賞」を受賞し、専用通信分野におけるHyteraの技術力と信頼性が改めて評価されました。
2026年に向けて、Hyteraは『スマートイノベーションと価値共創』を掲げ、グローバルパートナーとの協業をさらに深化させていく方針です。専用通信のブロードバンド化、公衆網との融合などの取り組みを進め、先進技術によって都市の防災・治安インフラの高度化に貢献してまいります。より安全でスマートな社会の実現に向け、Hyteraは今後も技術・サービスの両面で貢献を続けてまいります。
4.2026年の抱負
自然災害の激甚化や産業インフラの複雑化により、危険エリアを含む幅広い現場で〝確実につながる通信〟の重要性は年々高まっています。当社としても、自営無線ネットワークの強靭化は今後も継続して取り組むべき重要課題であり、安定した通信インフラの提供を一層強化してまいります。
一方で、近年は危険エリアで業務に従事されるお客様から、『防爆環境でもスマートフォンの利便性を活用したい』というご要望を多くいただくようになりました。高画質カメラの活用、業務アプリとの連携、クラウドを利用したデータ管理など、スマートデバイスが持つ機能を防爆区域でも使いたいというニーズは確実に増えております。当社としても、その重要性を強く認識し、こうした期待に応えることが次のステップであると考えております。
その一環として、現在Hytera社と緊密に連携し、2026年中の〝本質安全防爆仕様スマートフォン〟の発売に向け準備を進めております。防爆規格に適合しながら、スマートデバイスとしての操作性や拡張性を最大限確保することで、従来の無線機では実現が難しかった業務支援機能を提供し、危険エリアのワークフロー改善や安全性向上に寄与したいと考えております。
さらに、公共の安全確保に向けた社会的要請の高まりを背景に、警察・消防・自治体・交通機関などが採用するウェアラブルカメラへの期待も高まっています。現場状況を客観的に記録することで、事件・事故の証拠保全に役立つだけでなく、業務の透明性向上や職員保護にも寄与する装備として、欧米ではすでに広く普及し、アジアでも導入が急速に進んでいます。
こうした市場動向を踏まえ、当社は2026年中にウェアラブルカメラ製品の日本市場投入を目指しております。現場で求められる高耐久性や高画質、広角撮影などの基本性能に加えて、撮影データを安全に一元管理できる証拠管理システム(Digital Evidence Management:DEM)の導入支援も行うことで、デジタル証拠運用の高度化や情報管理の効率化にも貢献してまいります。
日本においても、治安対応の透明性向上、職員保護、デジタル証拠の適正管理といった観点から、ウェアラブルカメラの必要性は確実に高まると見込まれています。当社としては、こうした社会的ニーズに応え、社会インフラを支えるさまざまな現場において新たな選択肢を提供することで、業務の信頼性向上に寄与し、日本の現場運用を支える一助となれるよう取り組んでまいります。
今後も、非常時・平常時を問わず現場の皆様の業務を確実に支える通信環境を提供することを使命とし、技術力の強化と製品ラインアップの拡充を進めてまいります。国内のお客様にとって価値ある通信ソリューションを継続的に提供していけるよう、メーカーとの連携もさらに深めていく所存です。
写真は わずか115g、2K高解像度のウェアラブルカメラGC550
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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