ソフトバンク、再エネ自家発電とAIで基地局省電力化

 ソフトバンクは、サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現を目指し、通信インフラの脱炭素化などを推進している。その一環として、電力を「作る」と「使う」の両面から環境負荷の低減に取り組むため、「太陽光・風力の再生可能エネルギー(再エネ)による自家発電型基地局の実証」と、「AI(人工知能)を活用した基地局のスリープ(Cell Sleep)を動的に制御するシステムの開発・導入」という二つの取り組みを開始したと発表した。
 同社によると、太陽光と風力による再エネ自家発電型基地局の実証を昨年から千葉県市原市で実施している。この基地局は、稼働に必要な電力の一部(約3分の1)を自家発電で賄うことで、CO2の排出量を削減。また、停電時には一定時間自立稼働が可能なため、災害時の通信確保などにも貢献する。災害時などの活用を想定し、2026年度以降に一部地域へ拡大することを検討している。
 再エネ自家発電型基地局の主な特長は次の通り。
 ①太陽光と風力によるハイブリッド対応で、天候や時間帯に左右されにくい持続的な発電を実現。
 ②蓄電残量が規定値を下回ると自動的に商用電源に切り替わる仕組みで、スムーズな運用が可能。
 ③停電時にも、蓄電池により一定時間の自立稼働が可能。電力が一時的に枯渇した場合にも、太陽光や風力により自動的に再充電・再稼働ができ、高いレジリエンスを実現。
 ④レンズ状のカバー(ディフューザー)を装備したユニークな小型風車により、離島や山間部など風況が不安定な地域でも設置可能。
 風力発電向けには、小型レンズ風車(3kW機)を採用している。この風車は、風を効率的に集めて加速させるディフューザーを備え、3m/s程度の低風速でも高い発電効率を発揮することが特長で、一般的な同サイズの風車と比べて約2~3倍の発電効率を実現する。また、設置面積が小さいため、離島・山間部などでの導入にも適している。
 この基地局の活用により、基地局で使用する電力における再エネ比率を高め、通信インフラの脱炭素化に向けた新たなモデルを構築する。
 また同社は、AIを活用して基地局のスリープ制御を動的に行い、省電力効果の最大化を図るシステムを開発し、一部の基地局を対象に導入を開始した。このシステムは、通信トラフィックが少ない時間帯に一部のセルを自動でスリープ(低消費電力状態)へ移行させ、通信品質を維持しながら消費電力の削減を実現する。
 システムの特長は次の通り。
 ①AIによるスリープ対象セルの判定(特許出願済み):AIで人流や通信トラフィックを分析することで、通信品質を維持しながら対象セルを判定する。基地局のスリープ制御は、対象となるセルのトラフィックが他の周辺基地局でカバーされ、かつそれらの周辺基地局の輻輳(ふくそう)が発生しないことを前提に行う必要がある。これまでは、スリープ時にも安定したサービスエリアを維持するために、周辺基地局が同じ建物にあり、アンテナの方向も同じという厳しい条件を設けて対象セルを判定していたが、AIの分析により、通信品質を維持しながら対象セルを拡大することが可能。この機能により、スリープ対象セルを約1万4000セルから約2万4000セルに拡大できる見込み。
 ②AIによるスリープ可否のパラメーター設定:AIを活用することで、スリープ可否を判断する際の閾値(いきち)を動的に自動で設定する。これまでは、全ての基地局に対してトラフィックやスループットなどに関する一律の閾値を設定し、スリープ可否を判断していたが、AIを活用することで、基地局ごとに最適化した閾値を動的に自動で設定することが可能。これにより、各基地局の処理能力や周辺基地局の数などに応じて柔軟な閾値を設定できるため、1局当たりのスリープ時間が約1・4倍に拡大する見込み。また、これまでは手動で閾値の設定を行っていたため頻繁な変更が困難だったが、自動化により状況に応じて最適化された閾値を容易に設定することが可能となる。
 ③スリープによる品質低下時の自動最適化:スリープ実施後に万が一該当セルの通信品質が低下した場合には、自動で通常運用へ移行させることで、安定した通信品質を確保する。ソフトバンクは、このシステムの活用により省電力効果を最大化し、年間で約500万kWhの消費電力削減を見込んでいる。
 同社は、取引先などを含めたサプライチェーン全体で排出する温室効果ガスを2050年までに実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現に向けて、グループ全体で取り組みを進めている。この一環として、2030年度までに自社の事業活動で使用する電力の100%を実質再生可能エネルギー化し、そのうち50%以上を再エネによる発電で調達することを目指している。
 総電力使用量の半分以上を占める基地局については、SBパワー株式会社が供給する実質再生可能エネルギーへの切り替えを進め、2024年度には基地局で使用する電力の90%以上を実質再生可能エネルギー化した。環境負荷の少ない通信インフラの構築をはじめ、「ネットゼロ」に向けた取り組みを強力に推進し、脱炭素社会の実現に貢献していくとしている。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。