KDDIが大阪堺データセンター稼働開始  製薬や製造など幅広い分野でのAI社会実装を加速

 KDDIは2026年1月22日に「大阪堺データセンター」の稼働を開始した。産業・商業の集積地である大阪都市圏近郊に位置し、製薬や製造など幅広い分野でのAI社会実装を加速させるための基盤として活用を図る。
 同AIデータセンターは、地上4階建てで延床面積約57000平方㍍。2025年4月に取得したシャープ堺工場の跡地にある大規模な電力・冷却設備を再利用することでわずか半年という短期間での稼働を実現させた。30年以上にわたるデータセンター構築の知見や、海外M&Aで培った評価手法を応用し、耐震性や環境リスクなどの重要項目に絞った迅速な用地取得判断を実施。また、海外での施設転用経験を活かして改修・検証作業を早期に見極めることで、新設工事を最小限に抑えている。
 NVIDIAの最新AIサーバーである「NVIDIA GB200 NVL72」を導入。計算能力の向上による発熱問題に対応するため、従来の空冷方式に加え、水冷方式の一種である直接液体冷却を導入した。 KDDI Telehouse 渋谷データセンターで培った水冷技術と運用ガイドラインを活用することで、高度な計算能力を安定して提供できる環境を整えている。
 セキュリティと信頼性の面では、次の特長を備えている。
 ▽ソブリン性の確保: 日本国内で運用されるため、国内法規に基づいた適切なデータ管理が可能。これにより、国外への不適切なデータ移転や第三者による支配リスクを低減し、機密性の高い医療データや企業の機微情報も安心してAI学習に活用できる。
 ▽広帯域・高品質なネットワーク: 最大100Gbpsのインターネット接続に加え、閉域網「KDDI Wide Area Virtual Switch 2」や、さまざまなパブリッククラウドと広帯域で閉域接続が可能なマルチクラウドゲートウェイを提供。これにより、全国に分散した大規模なデータセットを安全かつ高速に集約し、AIの学習・推論を行うことが可能。
 このほか、Google社の高性能生成AIモデル「Gemini」をオンプレミス環境で利用できるサービスも提供する。
 同AIデータセンターでは、特定の業界が抱える課題を解決するための「垂直統合型」のサービス展開を目指す。主な活用事例は次の通り。
 【製薬業界:医療ビッグデータの高度な分析】
 KDDIとKDDIグループの医用工学研究所(MEI)、および武田薬品工業との連携により、2026年4月以降、AIを用いた医療ビッグデータの多角的な分析を開始する。電子カルテデータが施設ごとに分断されており、特に医師の所見などのテキストデータの有効活用が困難という課題の解決策として、ソブリン性が確保された国内環境でデータを安全に保管し、医療特化型LLMを用いることで、テキストから必要な情報を効率的に抽出・分析。希少疾患や難病の兆候の可視化、患者一人ひとりに最適な治療(アウトカム)の創出、およびデータ分析にかかるコストと期間の削減につなげる。
 【製造業界:流体解析の高速化・高度化】
 スタートアップ企業であるモルゲンロットと連携し、製品設計における流体解析を支援。自動車や航空機の開発において、燃費や安全性を左右する空気・熱の流れの解析には膨大な計算量(数億~数十億のメッシュ分割)が必要なことから、GPU環境で制約がある等といった課題の解決策として、同AIデータセンターの高度な計算能力を活用し、機密性の高い設計図面を安全に扱いながら、大規模かつ高解像度なシミュレーションを実施。自動車や航空機、鉄道車両、船舶などの開発プロセスにおける期間短縮と精度向上に貢献する。
 【国産AI(LLM)の開発・推論】
 ELYZAとともに、領域・企業特化型のモデル開発を推進する。医療、金融、行政などの専門領域では、汎用AIでは専門用語や特有の規制への対応が不十分で実業務への本格的な導入には課題がある現状への解決策として、同AIデータセンターのセキュアな環境で、企業の機密データを活用した学習を行い、特定の用途に適した性能・コスト・スピードを兼ね備えたモデルを構築。領域/企業特化モデルの開発から推論まで一気通貫で提供することを目指す。
 同AIデータセンターは、再生可能エネルギー由来の電力を100%使用しており、環境負荷の低減にも配慮している。KDDIでは、2025年度中に国内外の全データセンターで再生可能エネルギーへの切り替えを完了し、2040年度にはグループ全体でのネットゼロ達成を目標としている。また、2026年3月にスペインで開催される「MWC26 Barcelona」において、これらのAIデータセンターに関する取り組みを展示する予定。ネットワークとAIを統合したデジタルインフラを高度化させることで、日本の産業競争力の強化に貢献していくとしている。