カスハラ対策ソリューション「SoftVoice」提供開始 ソフトバンク、AI音声変換技術でオペレーターの心理的負担軽減

 ソフトバンクは、コールセンターなどの電話応対業務におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策として、利用者の音声をAI(人工知能)を使って穏やかな声色にリアルタイムで変換する「SoftVoice(ソフトボイス)」のサービスを発表した。2026年2月2日から無料トライアルをスタートする。
 「SoftVoice」は、同社と東京大学大学院情報理工学系研究科の高道慎之介特任准教授との共同研究成果を基に開発したAI音声変換技術によって、コールセンターなどで架電してきた顧客の怒鳴り声や感情的な声を、発言内容を変えることなく声のトーンや抑揚をリアルタイムで調整し、威圧感を抑えた声色に変換するソリューション。応対するオペレーターは、電話システムなどにインストールした「SoftVoice」アプリの音声変換ボタンを押すだけで、通話中に即時に音声を変換できるほか、不適切な言動などが続く場合には、警告メッセージを再生して通知することができる。

 同社では、「SoftVoice」の開発に向けて約300人を対象に、AI音声変換技術による電話対応時のオペレーターの心理的不安の抑制に関する実証実験を実施。その結果、「SoftVoice」で変換した通話音声は、変換する前と比べて、怒りの感情に関する評価指標が平均で30%以上低下することが確認できたという。この結果を踏まえて、地方自治体等さまざまな業界でPoC(概念検証)やベータ版アプリの無償提供を進めてきた。
 過度な要求や不適切な言動によるカスハラは、従業員の心理的負担を増大させるだけでなく、継続的に発生することで離職率の増加につながり、企業の事業運営にも影響を及ぼす可能性がある。同社によると、業務で電話対応する人の7割以上がカスハラを経験しており、またこうした経験をしたうちの約9割が心身への影響を訴えているという。こうした社会的背景を踏まえて、労働施策総合推進法が改正され、職場におけるカスタマーハラスメント防止のための措置が、2026年10月から事業主に義務付けられる予定。これに伴い、企業や自治体には、従業員が安心して働ける職場環境の整備に向けた迅速な対策が求められている。
 実際の電話応対業務においては、カスハラと適切な主張の線引きが困難なケース、いわゆる「グレーゾーン」が多くあるが、そのような状況でも、「SoftVoice」を通じて発言内容を穏やかなトーンで聞くことで、オペレーターの心理的負担の軽減を目指す。

 開発を担当した同社IT統括AIテクノロジー本部の中谷敏之氏は、「従業員の心の盾として利用してもらいたい。カスハラ対策が当たり前となる社会にしていきたい」と話していた。
 「SoftVoice」の主な機能は次の通り。
 ①怒り抑制(AI音声変換)
 通話中の顧客の怒り声や威圧的なトーンを、AI音声変換技術を活用して、通話内容を変えずに「怖くない声」にリアルタイムで変換。アプリの操作だけで簡単に切り替えることができ、150種類の音声パターンから声色を選択可能。発表時の実機デモではこのうち6種類が披露された。
 ②警告メッセージ
 顧客との通話が長時間に及んだり、暴言や脅迫的な表現が続いたりする場合に、オペレーターから現場の管理者に警告メッセージの送信を依頼して、管理者が承認することでお客さまに対して警告メッセージを流すことができる。状況に応じて「あいまいな警告」「明確な警告」「強制終了」の3段階の警告レベルを使い分けることができ、顧客との感情的な対立を避け、冷静なコミュニケーションをサポートする。
 ③ノイズ抑制
 通話中の顧客の周囲の環境音や雑音をAIで低減し、声を聞き取りやすくすることで円滑なコミュニケーションを実現。アプリの操作で簡単に切り替えることができる。
 ④通話録音
 通話内容を録音・保存することで、応対品質の向上に加えて、顧客とのトラブル防止やリスク管理にも活用できる。
 カスタマーサービスを抱える民間企業等を主なターゲットとしており、利用料金はID10個から月額税抜き5万円、以降1IDにつき月額5千円。申し込みから2か月間の無料トライアルも実施している。