KDDI子会社で大規模不正取引の疑い 外部流出額は約330億円見込み、決算短信は3月末に延期

 KDDIは2月6日、業績説明会を東京都千代田区の高輪本社で開催し、連結子会社のビッグローブとその子会社ジー・プランにおいて、大規模な不適切取引の疑いが判明したと発表した。これに伴い、精査が必要なことから2026年3月期第3四半期の決算短信の開示を3月末まで延期することを明らかにした。松田浩路社長は「経営トップとしての責任を痛感している」と陳謝した。
 KDDIによると、2社が絡む広告代理事業において広告主が存在しないにもかかわらず、架空の取引を繰り返し、複数年にわたり架空の売上高を計上していた疑いが発覚した。複数の代理店を介して資金を還流させるスキームが組まれ、直近では月間数百億円規模の資金が流れていたとみており、現時点で判明している連結業績への影響は、過年度分を含めた累計の売上高取消額が約2460億円、営業利益の取消額が約500億円にのぼる見通しとしている。また、手数料として外部に流出した約330億円についても、引き当てを実施した上で回収に努めるとしている。
 KDDIでは、取引規模が過大している傾向にあることから2025年10月に2社の広告代理事業の管理体制強化として監査役等を交えた社内調査を実施。同12月中旬に一部の広告代理店から入金が遅延したことを契機に社員の証言を得て疑いを認識したという。現時点でジー・プランからビッグローブに出向していた社員2人が関与していた疑いが強いとみており、外部の弁護士や公認会計士を含めて設置した調査チームを通じて具体的な取引の開始時期や被害額の詳細等について調査を進めるとしている。
 一方、主力である通信・注力領域の事業は力強く推移していると説明した。
 モバイル事業については、構造改革が奏功し、スマートフォン解約率が低下する一方で、モバイルARPUは4550円(前年同期比190円増)と大きく成長している。金融事業の営業利益は前年同期比30・5%増と好調で、預金調達力も向上した。
 また、新たな成長の柱として、全国のデータセンターとネットワーク網を繋ぐ「AIデジタルベルト」構想を推進。AIの社会実装を加速させる新会社として「KDDI iret」を設立し、2028年度には3000名規模のエンジニア体制を構築する計画とした。
 松田社長は業績説明会の冒頭、「KDDIグループ全体の信頼を揺るがしかねない重大な事案と認識しており、経営トップとしての責任を痛感している」と陳謝。今後の対応について、「特別調査委員会による事実関係の徹底解明に全面協力する」とした上で、
「信頼を確保するための対応に、私自身がリーダーシップを持って主体的に取り組みます。公明正大に、ガラス張りの中で仕事を進められる仕組みを作り、人間力と倫理観を高める風土を率先して作ってまいります。再発防止と事業成長の両輪で、持続的な成長に向けた歩みを進めていきたい」とコメントを発表した。
 KDDIでは3月末を目途に調査報告書を公表し、速やかに確定した決算を開示する方針。なお、本事案による通信サービスへの影響はなく、26年3月期の配当予想についても変更はないとしている。