スカパーJSAT 宇宙安全保障の多角的戦略をアピール「宇宙事業IR DAY 2026」開催

スカパーJSAT(東京都港区、米倉英一社長)は3月11日、同社宇宙事業部門の取り組みを説明する「スカパーJSAT 宇宙事業IR DAY 2026」をオンラインで開催した。「宇宙事業の重点戦略」「宇宙インフラを支える地上局」「安全保障需要の拡大に応える役割」の3つのテーマでプレゼンを実施。ここでは、日本の防衛力・経済力・情報力の根幹にも直結する「安全保障需要の拡大に応える役割」パートの趣旨を紹介する。

 

現在、中東および東アジアにおいては非常に緊張感が高まっており、それに伴う宇宙安全保障の需要が増大している。その状況に対応するため、日本国内においても防衛・安全保障目的の宇宙利用が急速に拡大しており、官民連携による技術開発やインフラ整備が加速している。

 

内閣府は、宇宙空間の安定的利用と自由なアクセスを維持・確保し、国の平和と安全、同盟国との連携を高めるための戦略的な宇宙基盤として「宇宙安全保障構想(安全保障のための宇宙アーキテクチャー)」を2023年6月に公表した(アイキャッチ画像)。本構想では、官民を挙げて衛星コンステレーションを活用した地球観測や情報収集、情報通信、ミサイル防衛、宇宙領域の把握等のアセットを目指すとしている。スカパーJSATはこの構想において重要な民間パートナーとして、衛星を活用した「とらえる」「つなぐ」「まもる」の3つの視点で安全保障貢献を推進している。

 

宇宙から「つなぐ」「とらえる」、そして宇宙利用を「まもる」

 

まず「とらえる」領域では、スタンド・オフ防衛能力の向上に向けて地球観測を強化する。具体的には、光学やSAR、熱赤外などの衛星データ提供に加え、自社での光学観測衛星コンステレーションの構築や、衛星コンステレーションの整備・運営事業、解析ソリューションの高度化に取り組んでいる。

 

これに関連し、スカパーJSATは防衛省が推進する「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」を落札した。26年1月には、三菱電機や三井物産と共同で特別目的会社(SPC)「株式会社トライサット・コンステレーション」を設立し、26年2月には防衛省と約2831億円の事業契約を締結している。スカパーJSATはこのSPCへの45%の出資を通じて、画像データの取得や地上設備の運用管理、事業全般の管理業務を担う。スケジュールとしては、26年4月から段階的に運用を開始し、28年4月からの本格運用を目指している。

 

次に「つなぐ」領域では、無人アセット防衛力を支える通信インフラの高度化を図る。無人航空機(UAV)向けの回線提供や、マルチバンド・マルチオービット化を推進するほか、次世代の超秘匿通信技術として注目される「量子鍵配送(QKD)」サービスの開発にも着手している。同社は、衛星QKDのリーディングカンパニーであるSpeQtral社と資本業務提携を結び、商用化に向けたリードタイムの短縮を図る。また、JAXAの宇宙戦略基金による研究開発案件にも参画しており、30年度以降のサービス開始を見据えて技術実証を進めている。

 


「量子鍵配送(QKD)」

 

さらに「まもる」領域においては、宇宙状況把握(SSA)の強化に注力する。JAXAの技術試験衛星(ETS-9)に相乗りする形で世界初の静止軌道向け民間光学センサー「GSOM」を搭載し、所属不明衛星やデブリの常続的な監視を行う。将来的には、アジア・太平洋地域の静止軌道帯を国際協力で監視する「静止軌道SSAネットワーク」の構築を目指す構想を持っている。

 


光学センサー「GSOM」

 

これらの事業展開にあたり、スカパーJSATは民間のノウハウや資産を活用して効率的な整備・運営を行うPFI方式を積極的に活用している。

 

政府が23年度から5年間で計1兆円に及ぶ宇宙防衛予算を投じる中、スカパーJSATは安全保障領域での収益を24年度見込みの約100億円から2030年度には約300億円まで拡大させる目標を掲げている。同社は、防衛通信衛星の整備や光データリレー、画像解析データの取得など、多岐にわたる防衛省予算案件の獲得も目指している。情報通信から地球観測、宇宙状況把握までを網羅する広範な宇宙安全保障アーキテクチャを構築することで、次なる成長への備えを万全にする構えだ。