フィジカルAIで協業 三菱電機、燈

 三菱電機、燈(あかり、東京都千代田区、野呂侑希代表取締役社長兼CEO)は、3月16日に都内ホテルで、「三菱電機・燈 協業に関する戦略発表会」を開催した。
 三菱電機は1月29日、産業特化型AIの高精度化と実用化により革新的ソリューションを提供するスタートアップ企業である燈と、出資および協業に関する契約を締結したと発表した。三菱電機は、燈との提携を通じて、最先端のAI技術を活用した事業変革を加速して、新たな価値創出と「Serendie」(セレンディ、データ活用を通じて事業横断型のサービスを創出するためのデジタル基盤)関連事業の拡大を目指している。
 三菱電機の漆間啓代表取締役、執行役社長CEOが「三菱電機のイノベーティブカンパニーへの変革に向けて」と題して説明した。
 「どうして燈社と協業なのか。ひとつ目は、AIのスタートアップ企業であるということ。2つ目は、燈社は2021年に会社を創業して以来、建築業界に対して、彼らの技術をもってAI化していくと。データを整理する、あるいは分析することに取り組んでおり、それに的を絞ってきたこと。我々の持つ知見と協業することで、ウィンウィンの関係が築けるのではないか。また、『質実剛健』や『爆速』という燈社の理念をしっかりと定めて会社を経営されている」と話した。
 そして、「環境の変化を吸収し安全に動くAI」が三菱電機のフィジカルAIとし、止めてはいけない現場を支える3000万台の設備で得られた経験や工夫を活用し、現場で使えるフィジカルAIを実現する―とした。建築業界、運送業界、製造現場などの人手不足が顕著になっていることにも対応するという。
 「現場の暗黙知を取り入れながら、それをミックスさせたのがフィジカルAIである。当社は、現場のノウハウ、暗黙知を取りながら、スムーズに動いていく現場を考えていきたい」(同)。
 変化に強い工場に向けては、「3つの技術の壁」がある。データの壁、自動化の壁、安全行動の壁があって、それに対して同社は『セレンディ×AI技術』で解決する。
 「燈社と連携しながらフィジカルAIを開発する、燈社はAIエージェントの爆速化に知見を持っている。デジタルツインの構築技術を持っている。ロボットのAI化に対する技術を持っている。我々が持っているものと、燈社の得意な領域を掛け合わせる」と述べた。6ヵ月以内にPoC(検証プロセス)を完了し、事業化を目指す。

 続いて、燈の野呂社長が「企業概要と協業の狙いについて」話した。
 「我々は、最先端のAIを使って企業の課題解決、産業の未来を作っている。我々は、日本を照らす灯りになりたいと社名を燈とした。日本の灯台になる、日本の産業を照らすと掲げている。建築業界で多くの会社から様々なデータを得たり、ソリューション提供していく中で、工場のリニューアルだったり、生産ラインの計画にも携わり、製造業DXへと足を踏み出してきた。今はものづくり産業全体をターゲットとして、日本の基幹産業全体に貢献していければと思う」と話した。
 同社は、100種類以上のAIモジュールを持って、幅広くAIを開発蓄積している。同社のAIの強みは「これまで現場でデータになっていなかったものをデータ化して、それをデジタルツインの形でデジタル上に持ってくる。モジュールを使ってシミュレーションを行い、ここでAIを訓練したりとか、シミュレーションを行って、そこで培ったアルゴリズムやAIを再び実機に搭載して現場に持っていく」ところだ。

 続いて三菱電機の武田聡専務執行役CDO、CIOが両社の協業戦略について説明した。
 「フィジカルAIは、工場の現場だけでなく、様々なミッションクリティカルな現場で有効となる。現場の変化を吸収して、安全かつセキュアに動くものを目指している。私どもの現場にすでに膨大なOT(オペレーショナルテクノロジー)領域のデータがある。『セレンディ』のデータ基盤を整えて、私どものOT領域のデータをAIで活用できるデータ基盤を整えている。このデータをフルに活用することでフィジカルAIが実現できる。さらに三菱電機は、様々な分野で制御のできる機器自体を持っており、この機器がAIで高精度な制御が行えることになる。また、AIで現場が安全かつセキュアに動かすことを実現する。これらを実現して、よりフレキシブルな現場を作っていきたい」と話した。
 「フィジカルAIは、自律分散制御が原則。大量のデータがリアルタイムで現場で動くので、スピードが速いのが特徴だ。いちいちクラウドに上げると、高速な制御ができない。現場に近いところで自律分散的に処理をするAIを作らないと。常に現場は変化する。学習し続けて賢くなり続けるAIでないといけない。サイバー空間でデータを学習して賢くなって、それをフィジカルに戻して、自律的に分散制御する。燈社は、デジタルツイン、サイバー空間でデータを学習させる技術は優れたものがある。そこで学習したものをAIのアルゴリズムに落とすことも優れているので、現場の制御技術などと燈社の技術を組み合わせると、スピーディーにフィジカルAIが実現できる」(同)。

写真は 左から武田氏、漆間氏、野呂氏

この記事を書いた記者

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。