「2022新春記念特別号」 NHK会長インタビュー  前田晃伸氏

 2021年は昨年に引き続き新型コロナウイルスの感染拡大により、社会的・経済的に大きな影響を与え、人々の暮らしやライフスタイルも大きく変化した。NHKにおいては一部番組の収録が遅れるなどの影響はあったものの、リモート収録・プロダクションを積極的に取り入れるなど、コロナ時代における新たな番組制作スタイルの確立を着実に進めてきた。 また、2021年度からスタートした経営計画では、「新しいNHKらしさの追求」をキーコンセプトに、様々な経営改革を実施、特に改革の土台と位置付ける人事制度改革では管理職を公募するなど従来にないユニークな手法も用いている。 2020年1月に新たに会長に就任した前田晃伸氏に、2021年を振り返ってもらうとともに、新型コロナウイルスの影響と対応、経営計画の進捗と課題、常時同時・見逃し番組配信サービス「NHKプラス」の状況、減災防災報道への取り組みなどについて聞いた。 ――この1年間を振り返っていただき、特に心に残った出来事などをお願いします。 前田会長 昨年は、「新しいNHKらしさを追求」し、「スリムで強靭なNHK」へと生まれ変わることを柱とした3か年経営計画の初年度でした。初年度は、「改革実行の年」と位置づけていましたが、さまざまな改革が大きく動き出し、進捗した1年になったと思います。NHK内部の話ではありますが、すべての改革の土台となる「人事制度改革」が着実に進みました。特定の地域に根ざして活躍する「地域職員」も大幅に増やします。「グループ経営改革」についても、関連団体のトップに本体の局長クラスの職員をあてて本体との一体経営を促進するなど順調に進んでいます。また、「放送総局改革」・「視聴者総局改革」・「地域改革」など、本丸であるコンテンツやサービスの改革にも本格的に取り組んでいるところです。こうした一連の改革の成果は、今年4月以降に視聴者の目に見える形でお示ししたいと考えています。 また昨年も、新型コロナウイルスの感染拡大の影響は小さくありませんでした。「訪問によらない営業活動」に全面的に舵を切っていたこともあって、受信料収入は当初懸念していたよりは比較的堅調に推移しましたが、番組制作や取材活動には引き続きさまざまな制約が生じました。このところ、国内の感染者数は落ち着きを取り戻しつつある状況ですが、感染力が強い可能性がある変異株「オミクロン株」の感染状況については今後も注視する必要があると考えています。 57年ぶりの自国開催となった東京オリンピック・パラリンピックでは、ほとんどの競技会場で無観客となる中で、これまで以上に放送が重要な役割を担うこととなりました。スポーツの持つ魅力を、放送やインターネットなど多様な伝送路を通じてライブでお届けすることで、視聴者に放送の持つ力を改めて実感していただけたのではないかと感じています。さらに、「ロボット実況・字幕」や「手話CG実況」などといった先進的なユニバーサル・サービスの一層の拡充にも取り組みました。こうした成果は今後にしっかり活かしていきたいと思います。(全文は1月3日号に掲載)