「YRPビジョン2025発表会」 YRP

 横須賀リサーチパークは、7月20日にYRPホール(横須賀市光の丘3―4YRPセンター1番館)で、2025年度に向けた横須賀リサーチパークの活動内容を発表する場として「YRPビジョン2025発表会」を開催した。WEB(ライブ配信)を併用するハイブリッドとして開いた。実施主体はYRPビジョン2025発表会実行委員会。後援は総務省。 25年となる横須賀リサーチパーク(YRP、Yokosuka Research Park)では「新しいビジネスを出する地域共創の場」を目指し、横須賀テレコムリサーチパーク、一般社団法人YRP研究開発推進協会、横須賀市、YRP進出企業及び関係者が一体となり、2025年の将来像を定めた「YRPビジョン2025」を策定した。 これまでの研究開発の支援に加え、横須賀のDX推進なども支援していくなど、新しいYRPを目指し▽先端ICT拠点としてのYRP▽地域にICTコンサルタントとしてのYRP▽共創フィールドとしてのYRP▽国際連携の礎となるYRP―の行動計画を示し、YRP進出企業だけでなく、横須賀で活動・生活をしている人たちと共有をしてもらい、ともに未来を創って行きたいとしている。 主催者挨拶を鈴木茂樹横須賀テレコムリサーチパーク代表取締役社長が行い次のように述べた。 1997年、丘陵地の地形を活かして、電波・情報通信・ネットワーク技術を中心としたICT技術の研究開発拠点としてYRPが開設されました。 開設から25年、国際的な電波・情報通信技術の発展を目指して独立の研究機関、企業の研究所、そして大学の研究機関が多数転出されました。その集積にメリットを活かした産学官の国際連携によりまして第3世代携帯から第5世代携帯、そしてWiーSUNなどの新しい技術が生まれました。現在、Beyond 5G、6G移動通信の開発が進められています。しかしながら、いくつか撤退をされており、建物のいくつかは空いている状態で少し寂しい状態です。 一方、開設以来、自動車関連をはじめとして、さまざまな分野の研究機関が進出されました。近年は工業プラスチックや半導体関連など多様な業種の企業の研究所が進出され、新たな連携協業ビジネスなどの可能性があります。 開設以来、四半世紀を迎えたこの機会に多様な研究開発機関の集積のもとに技術、経済、社会の変化を踏まえて横須賀市、YRP、進出企業の参画を得まして、株式会社横須賀テレコムリサーチパーク、一般社団法人YRP研究開発推進協会が事務局となってこの「YRPビジョン2025」を策定いたしました。 ビジョンではYRPの将来像を皆さまと共有し、今後取り組む方向性を示すとともに行動計画を策定いたしました。 2025年に向けてYRPに〝人が集まり、賑わいが生まれる〟新しいビジネスを創出する地域共創の場とするべく、新たな活動に取り組むこととなっています。このため、これまで以上に進出企業間の連携、協業の場の創出、様々なイベント・セミナーも企画してまいります。 ぜひ皆さまにもそれぞれの形でご参画いただき、地名が光の丘ですので、このスローガンにありますように『明日への光、YRP 皆様と共に』に沿ってビジョンを実現してまいりたいと考えております。 市長挨拶を上地克明横須賀市長が行い次のように述べた。 YRPは携帯電話の爆発的な普及とともに目覚ましい発展を遂げました。2002年頃には無線通信の分野で世界をリードするリサーチパークとなり、この頃は企業大学などが集結し、産学官の60を超える研究所が所狭しと軒を連ねていました。当時の横須賀市長の沢田秀男氏はYRPは〝天の時、地の利、人の和〟と、すべてを調和した横須賀の新たな拠点といわれました。新しい道を模索し続けて新たな企業、産業の進出をいただきながら、最先端の開発拠点としての地位を築いております。本日発表のビジョンは、株式会社横須賀テレコムリサーチパークの鈴木茂樹社長による強力なリーダーシップのもとYRP内の企業をはじめ、多くの企業や研究機関、大学間のご協力をいただきながら策定したものです。従来のビジョンとの大きな違いとして、YRPが将来に亘って大きな役割を果たしていくとの関係者の皆様の強い思いが表れていることです。これまで以上に横須賀という地域を意識したものであります。横須賀の地域経済の活性化や地域を支える人材育成などの計画に多くの分量をさいていただいています。2025年ビジョンによって、YRPが横須賀という地域に、新たに深く根を張り立派な実を付けようとしていることをお感じいただきたいと期待しています。 来賓挨拶を新井孝雄総務省関東総合通信局長が行い次のように述べた。 1997年の創設以来、YRPはワイヤレス分野、光通信を中心とした研究開発や実証環境整備に加え、社会実装の推進、国際連携といった幅広い活動を通じて我が国を代表する研究開発拠点として情報通信分野の発展をリードしてきました。今回策定されましたYRPビジョン2025がYRPを地域の住民が集い、新しいビジネスを創出することを目指すものでございます。ビジョンの実現はさまざまな社会課題を解決し産業競争力の強化を通じて、地域社会の発展と情報通信産業の成長を大きく貢献するものと確信いたしております。 岸田内閣では地域の社会課題を解決し、全国どこでも誰でも便利で快適に暮らせる社会を目指してデジタル田園都市国家構想を推進しておりますが、総務省ではデジタル田園都市国家構想の実現に向けて光ファイバー、5Gなどのデジタル基盤を整備するため、本年3月デジタル田園都市国家インフラ整備計画を策定いたしました。この計画の策定に向けて関東総合通信局におきましても、関東地域のニーズに応じたインフラ整備を推進するため、関東デジタル田園都市構想推進協議会を設置したところです。 協議会には横須賀市からもご参画いただいており、ここYRPでの取り組みをはじめとしたICTを活用した先進的な事例、こういったものについて共有いただき、関東地域におけるデジタル田園都市のモデルとして取り組んでいただきたいと考えております。 基調講演を小泉進次郎衆議院議員が行い次のように述べた。 この横須賀選出で横須賀生まれ、横須賀出身としても、YRPのこれからの発展に向けての私の思いをお話させていただく機会をいただいたことを心から感謝申し上げたいと思います。 この基調講演では、YRPビジョン2025でも触れられているサイバーセキュリティーこの1点について、私はお話したいと思います。 会場には、地元の高校生もいらっしゃると聞いています。この高校生、今16歳なのか17歳18歳くらいかもしれませんが、1997年、このYRPができた年に私は16歳でしたから、そのことを考えると、正直申し上げてYRPができた年として記憶に残っているのは、日本で初めてアルファベットがついている駅の名前ができた。それがYRP野比駅で、その記憶が通学のために京浜急行に乗っていた立場からすると、横須賀って新しいという記憶が残っています。 一時期は携帯の開発でYRPが盛り上がって、近年、このYRPの中も空きが目立つような状況になっていますが、私は先ほどの上地市長のお話し、かつての横須賀市長の沢田秀男市長の言葉を引いて〝天の時、地の利、人の和〟これが揃っていたっていうのは当時の話でありましたが、今が第2弾なんですね。その天地人が揃ってきている機会ではないかと思っています。 今、世の中もデジタル化の進展を迎えて、大きな変革の時代を迎えています。インターネットをはじめとして、サイバー空間と今、私たちがこのように過ごしているフィジカルな空間は至るところでますます結び付きを強めています。金融機関、大手製造業に限らず、医療機関、農業など多方面でデジタルの活用が進んでいます。身近なところでは、コロナの影響もあって、テレワークは大きく進展しました。 一方で、こうしたデジタルの社会ではサイバー攻撃のリスクも大きくなっています。国民生活の安心安全の観点はもとより、経済の安全保障の観点からもサイバーセキュリティーの重要性は極めて高くなっています。昨今の国際情勢からも、サイバー攻撃のリスクは格段に高まっています。例えば、ランサムウェアと呼ばれるウイルスにコンピューターが感染して、身代金を要求するウイルスによる攻撃が近年急増しています。今年に入ってからは、テレビのニュースや新聞で報道されているように、自動車関連会社やアニメーション制作会社、食品会社などさまざまな業種の日本企業を対象として、ランサムウェアを含めたサイバー攻撃が発生しています。 愉快犯というのは、個人から高度な攻撃グループまで攻撃者も多様化していて、企業の規模や業種によらず被害が拡大していることを認識する必要があります。 ロシアによるウクライナ侵攻でもサイバー攻撃が繰り広げられていますが、通信衛星へのサイバー攻撃が行われて、ウクライナの電力設備も攻撃を受けていると報告されています。一方で、ウクライナはIT義勇兵を募ってロシアへの攻撃を仕掛けています。また、両国間だけではなくて、社会的な思想によってサイバー攻撃を行ってきたハッカー集団アノニマスがロシア政府へのサイバー攻撃を実施しています。 また、メディアやSNSでの偽情報の拡散などを通じたお互いに心理的な圧力をかけたり、判断のミスを誘ったための情報戦も展開されています。 まさにサイバー空間において、軍事面にとどまらない複雑な対応を強いられるいわゆるハイブリッド戦の様相を呈しています。こうした世界の厳しい現実に日本だけが無関係でいられるわけではありません。 日本もこうした事態に備えていくために、サイバー分野への対応能力を強化していくことは喫緊の課題であります。今や攻撃は多様で攻撃を受ける対象も多岐にわたって、中小企業も含めて攻撃の対象となっています。電力やガス金融といった重要インフラ企業者を中心とした民間での対応の強化はもちろん不可欠でありますが、社会全体を混乱に陥れようとする大規模なサイバー攻撃やハイブリッド戦に対しては、官民が連携して防ぐことが必要であります。 横須賀には防衛関連の施設も多くあって、陸上自衛隊の久里浜にある通信学校や武山の高等工科学校、そして防衛大学校など、サイバーセキュリティーの観点から重要な施設が集積をしています。 YRPに進出している民間企業の中にも、サイバーセキュリティーに強い問題意識と関心を持っている企業、そういった皆さんも含めて国の政策と連携した形で、今こそ私たちの地元横須賀をこうした力を結集した一大拠点としていくことができないかと私は考えています。 日本のサイバーセキュリティーを強化していくためにやるべきことはたくさんありますが、その中でも特に欠けている要素が攻撃者目線での訓練であって、高度な攻撃者による攻撃を再現するための研究が日本は欠けています。高度化をする技術サイバー分野においては、新たな攻撃技術のイメージを先取りした取り組みが必要であると私は考えています。 今申し上げたような横須賀の地の利を生かしながら、実際の環境を模擬したような大規模な設備を整備することによって、攻撃者目線での研究訓練の実施を可能とするような一大拠点とできないか。ぜひ皆さんにもお考えもいただきたい。 日本の防衛にとって、大きな転換点となる中で、横須賀での取り組みを積極的に発信をして、日本の安全保障に横須賀が貢献をしていく。そういうことになっていけるように、私は取り組んでいきたいと思います。 先端の研究開発拠点と商工会議所をはじめとした草の根の活動。この両輪で横須賀をサイバーセキュリティーの街にして、日本の経済安全保障の先進地域にしていきたい。 むしろ、高校生の世代やこれからも皆さんにとっていえば、横須賀はデジタルの先進地域である。このデジタルの街、横須賀というような環境の地域になっていくためには、通信環境を整備していくことは極めて重要だと思っています。YRPビジョン2025の中でも、先端ICT拠点としてのYRPとして政府プロジェクトと連携した情報通信基盤の環境整備が盛り込まれています。 オープンな無線アクセスネットワークの構築を目指すO―RANと呼ばれるものの普及に向けた取り組みや、人手不足をはじめとする地域の社会課題の解決に役立つローカル5Gの社会実装は、まさに時宜を得た取り組みだと思っています。政府のプロジェクトや税制を活用しながら、この横須賀での取り組みを加速していきたいと思います。 さまざまなこの重要な政策を進めていく要所要所に思いのある方々がいて、そして歴史をさかのぼれば旧帝国海軍の街、横須賀これが戦前の姿で、戦後は日米同盟象徴の街。これが横須賀で、私はこれがネットワーク時代の横須賀はサイバーセキュリティーの街。また経済安全保障を担っていく街、デジタルの街、横須賀である。 「YRPビジョン2025」概要説明を鈴木茂樹氏が行った。 一般社団法人YRP研究開発推進協会、横須賀テレコムリサーチパーク、横須賀市、京浜急行電鉄などは一体となって、新たに「YRPビジョン2025」を策定した。〝新たな価値を生み出す場、横須賀リサーチパーク〟を謳い、YRPを、先端ICT拠点として、また地域のICTコンサルとして機能させ、共創フィールドとして活用してもらい、また新たな国際連携の礎となることにより、新しいビジネスを創出する地域共創の場とする将来像を描いている。 同ビジョンは「ビジョンが描くYRPの将来像~新しいビジネスを創出する地域共創の場~」を掲げて▽リアル/バーチャルに人が集うコミュニケーションハブの形成▽ICT技術等を活用したアプリケーションサービスの実現による社会課題の解決▽自治体、YRP進出企業、協会会員企業とのマッチングによる地域産業の育成を打ち出した。将来像の実現に向けた4つの方向性は①〝先端ICT拠点〟としてのYRP②〝地域のICTコンサル〟としてのYRP③〝共創フィールド〟としてのYRP④〝国際連携の礎〟となるYRPーである。 続いて「YRP/横須賀の魅力、未来、YRPへの期待」をテーマにパネルディスカッションを開いた。 モデレータは越塚登東京大学大学院情報学環教授。 パネリストは小泉進次郎衆議院議員、川添雄彦NTT代表取締役副社長、門脇直人(国研)情報通信研究機構理事、飯田和利エア・リキード・ラボラトリーズ代表取締役社長、水野堅市ワイ・アール・ピー情報産業協同組合理事長。 続いてYRP進出企業の取組を紹介した。講演したのは次の5社。  谷直樹NTTドコモ常務執行役員(CTO)R&Dイノベーション本部長、渡邉秀樹矢崎総業常務執行役員技術研究所長、中山高志ニフコLife SolutionsCompanyカンパニー長、鵜飼 裕司FFRIセキュリティ代表取締役社長、山崎裕明ヤマシンフィルタ取締役常務執行役員。 閉会挨拶を川俣幸宏京浜急行電鉄取締役社長が行った。