NHK 寺田健二前技術局長インタビュー「AI・IP・クラウドなども活用し効率的な番組作り」

日本最大級のメディア総合イベントである「InterBEE 2022」が11月16日に開催する。NHKは電子情報技術産業協会(JEITA)と共同で出展する。今回は「知りたい現在(いま)がある、創りたい未来がある」をコンセプトに、「4K8K推進」「最新技術利活用」「未来のメディア」の3本の柱で展示を行う。 NHK 前技術局長(現:経営企画局技術戦略室長)の寺田健二氏に、今回の展示の見どころの他、4K8K放送の状況と今後の課題、IP・AI、地上放送の高度化、新放送センターの建設状況などについて聞いた。 ――4K8K放送の状況と今後の課題についてお聞かせください 寺田 NHKは東京国立博物館と共同で、文化財をデジタルで記録し、これまでにない番組の制作や鑑賞体験を提案する、「8K文化財プロジェクト」を進めています。3Dスキャナやフォトグラメトリといった最先端の技術を用いて文化財の超高精細3DCGを作成し、8KディスプレイとリアルタイムCG技術を組み合わせることで、新たな鑑賞手法を確立しました。現在、東京国立博物館で開催中(10月18日~12月11日)の特別企画「未来の博物館」では、8K映像技術と3DCGを駆使した大迫力の映像空間や鑑賞システムを多くの方に体験いただいています。 この模様は「生中継!8K特別展示 国宝東京国立博物館のすべて」や「鑑賞法は無限大!未来の博物館へようこそ」など放送を通して、視聴者のみなさまにもお楽しみいただいています。これまで培った知見や技術を活用し、伝統文化や芸術、歴史遺産の記録や新たな楽しみ方の模索に取り組み、今後も8K技術を活用し、広く社会に貢献していきたいと考えています。 4K放送についてはIPリモートプロダクションを活用しています。3年ぶりに開催された「京都祇園祭」(4KHDR生放送)では巡行区間が長距離にわたることから、複数の中継基地を設置するためにIPリモートを活用しました。また、「長岡まつり大花火大会」・「秋田大曲花火競技大会」では2K・4K・8K同時生中継を実施しながら、IPリモートで会場から離れた場所に最適なミクシング環境を整え、マルチチャンネル音響による高品質な番組制作にも取り組みました。この結果、BS4Kで今年度もっともよく見られた番組として、高い評価をいただきました(10月現在)。 先日、経営計画の修正案でお示ししたように、2024年3月末に2Kの衛星波は2波から1波になります。4K8K放送は、これまで以上に衛星波を支える重要な存在になります。11月から始まるInter BEE 2022や各種イベントなどを通して、4K8Kの魅力や左旋衛星放送の受信方法を広く伝え、4K8K放送をより多くの方にお楽しみいただけるような取り組みを継続していきます。(全文は11月16日付第7467号1面に掲載)