関東総通局、「IoT導入支援セミナーin川越」を開催

 総務省関東総合通信局(黒瀬泰平局長)と公益財団法人埼玉県産業振興公社は、9月6日の午後1時30分からウェスタ川越(埼玉県川越市新宿町1―17―17)で「IoT導入支援セミナーin川越 ~IoT機器等の電波利用システムの適正利用のためのICT人材育成事業~」を開催した。共催は埼玉県、公益社団法人埼玉県情報サービス産業協会。 このセミナーは、総務省「IoT機器等の電波利用システムの適正利用のためのICT人材育成事業」として、IoTの導入・利活用を行うユーザ企業等において、電波の特性も踏まえつつ、IoTを利活用できる人材を育成することを目的として開催した。IoTの導入・利活用に関心のあるユーザー企業、埼玉県内の自治体関係者などIoTに興味がある90人が参加した。 このセミナーの目的は、IoTの基礎知識としてIoTとは何か、IoTの技術・関連法制度、導入する場合の検討手順等を学んでもらい、その後、参加者同士でグループディスカッションを行うなどして、理解を深めてもらうことである。 内容は【第1章】IoTの基礎知識(IoTとは何か? IoTのイメージをつかみます)【第2章】IoTの技術・関連法制度・LPWA等の紹介(もっと知りたいIoT ~IoTの技術を知ろう)【第3章】IoTの活用・導入の進め方(ワークショップを通して導入手順を学びます)【その他】施策紹介ほか(IoTに関連する施策について紹介)。 まず主催者挨拶を黒瀬関東総合通信局長が行った。「現在、わが国ではいわゆる『静かなる有事』に直面している。IoTをあらゆる産業において活用することで、生産性の向上などにつなげることが不可欠の課題になっている。総務省ではこうした状況を踏まえ、昨年度からIoTのユーザー企業の皆さまを対象にしたIoTの人材育成事業に取り組んでいる。昨年は全国14ヵ所で行われて、IoTに関する知識、電波利用の基本的知識などを理解いただくための講習会やワークショップを開催した。本年度は全国で25ヵ所において開催する。本日のセミナーでは『IoTとは何か』というイメージをつかんでいただいて、IoTの技術、関連する法制度、導入する場合の検討手順などを学んでいただければと思う。グループディスカッションなどを行っていただければと思う。総務省関東総合通信局では引き続き、IoTの利活用推進に向けてセミナーなどを通じて取り組んでいく」と述べた。 続いて、公益財団法人埼玉県産業振興公社新産業振興部長の島田守氏が主催者挨拶した。「本日はIoTのセミナーだが、皆さん、こういった新しい技術の導入にはたいへん関心が高いと思う。すでに国内外でどんどん活用している動きは皆さん、ご存知だと思う。ドイツでは、ものづくりの国内回帰ということで、多品種のものをスピーディーに生産してお客さまに届ける〝スマート工場〟を進めている。埼玉県では埼玉県庁の方でもこうした様々なセンシング技術を使っていこうと例えばドローンの活用、あるいはAIを用いた救急相談自動応答システムの開発、AIを用いた梨の摘果判断システムの開発などを取り組んでいる。私ども埼玉県産業振興公社では企業の皆さんがこういったIoTなどを導入するにあたっての支援を県産業労働部と連携して行っている。今回、総務省関東総合通信局から埼玉県でセミナーを行いたいということで、たいへん、ありがたいお話しをいただいた。今回は私どもとして初めて自治体の職員の方にも参加いただいた。場所も川越ということで、それには理由があって、埼玉県では川越市の隣の鶴ヶ島市で『埼玉県鶴ヶ島ジャンクション周辺地域基本計画』を策定した。計画には、この地域に先端産業等を集積して経済の好循環をもたらすことや、AI・IoTなどの先進技術を活用して超スマート社会を実現することなどを掲げている。同市の農大跡地で先端産業・次世代産業などの成長産業の誘致に向け、立地事業者も公募した。そして、それを周辺の市町村にも波及させようとLPWAの活用も考えている。市役所からの街の情報を届ける。医療、農業分野での活用も考えている。このほか、行政では例えばイントラの管理、あるいは防災・減災、子供やお年寄りの見守り、こういったものに先端技術が活用されればと思う。いろいろな手法があるのでセミナー参加の皆さんはここで学んでぜひヒントを持ち帰っていただいて次の様々なサービスにつなげていただければと期待している」と述べた。 【第1章】の講演を埼玉県産業振興公社IoTコーディネーターの山脇隆司氏が行った。「IoTとは、現実世界の様々なモノがインターネットとつながることである。モノの世界で収集したデータが、通信によりインターネット空間に送信・蓄積され、データを分析・活用することで新たな価値の創出につながる。そして、IoTによって、得られるデータの幅、量、リアルタイム性が格段に増大する」と身近なケースを例に説明した。そして「IoTがビジネスの仕組みや仕事のやり方に、様々なイノベーションを生み出す。IoTをツールと活用することで、自動化、既存業務の改善、課題解決、新規事業の創出につながる。IoTを導入することにより、新たなサービスの提供や予測による未然対応が可能になる」と話した。続いて、IoTの導入・利活用の例をいくつか挙げた。農業では、各種センサーやカメラから農場のデータを自動で収集。データを分析することで適切な散水や肥料・農薬散布を実現している。また、製造業では、各種センサーで製造機械の状態(データ)を自動で収集。データを分析することで故障予知・生産性向上を実現している。ヘルスケアの例では、常に身に付けているウェアラブルデバイスで心拍数や動きを測定。自動的に健康に関するアドバイスが送信される。このほか商業や介護でのIoT導入・利活用の例を挙げて講演を終えた。 【第2章】の講演をNTTラーニングシステムズ教育研修事業部マネジメントコンサルティング部の後藤尚氏が行った。後藤氏は「IoT機器等の電波利用システムの適正利用のためのICT人材育成事業 講習会テキスト」に沿って説明。IoTデバイス、IoTゲートウェイ、クラウド・データベースといったIoTを構成する機器、センサーによるデータ収集について、有線通信と無線通信、電波の有効利用、電波法、自社サーバーとクラウドサービスといったデータ蓄積の方法及びデータ分析、データ活用などを説明。電波の有効利用では「IoTを利用する上では電波の有効利用を図りつつ、IoT機器の種類・特性・用途に応じた選択などの基本的な知識や技術を理解し、IoTの適切な導入・利活用を図ることが不可欠である」と述べた。また「情報セキュリティとは、情報の機密性・完全性・可用性を維持することと定義されている。IoTのセキュリティ対策の必要性では、IoT特有の性質とリスクを踏まえたセキュリティ対策を行うことが必要だ」とし、「IoTセキュリティ対策では5つの指針がある。大項目では方針、分析、設計、構築・接続、運用・保守であるが、中でも特に構築・接続での初期設定に留意することは大事だ」と述べた。また、IoT社会の本格化に向け、広範囲のエリアをカバーし、低コスト・低消費電力での通信を実現できる無線通信技術『LPWA』に期待が寄せられている」とし『Sigfox』の説明にバトンタッチした。 続いて、京セラコミュニケーションシステムズLPWAソリューション事業部副事業部長の大木浩氏が行った。大木氏はIoTネットワーク「Sigfox」の導入事例の紹介を中心に話した。「『Sigfox』ネットワークの特徴は低消費電力、低コスト、クイックスタート可能な簡便化、グローバル展開―である。『Sigfox』のグローバル展開では、8月現在で45ヵ国、400万平方㌔㍍、9億800万人の人口をカバーしている。そして、2018年中に60ヵ国へ展開する。国内エリア展開では2020年3月までに人口カバー率99%を目指す。IoT取り組みの狙いは業務の効率化と新たな顧客価値の提供だ。『Sigfox』のIoTネットワークで〝すべてのものが『つながる』新たな未来へ〟つながる」と述べた。 紹介した導入事例をいくつか挙げると独居高齢者見守りサービス(能動的見守りと受動的見守りをひとつのデバイスで実現)、スポーツ自転車向け盗難防止・盗難抑止サービス、看板状態監視ソリューション(看板の傾き・揺れを遠隔監視)、ビニールハウス環境センシング(ハウス内の環境〈温度・湿度〉をセンシング)、水漏れ検知サービス、灯油配送業務効率化(遠隔でタンク内残量を可視化)、LPガスの配送業務効率化(ガス残量のリアルタイム把握)―などを説明した。 続いて、【第3章】ワークショップ等を経て、公益社団法人埼玉県情報サービス産業協会、埼玉県産業技術総合センター、公益財団法人さいたま市産業創造財団が施策を紹介した。