「周波数再編アクションプラン」整備へ 総務省

 総務省は、平成29年度電波の利用状況調査(714MHz以下の周波数帯を対象)の評価結果(30年7月)及び電波有効利用成長戦略懇談会(座長・多賀谷一照千葉大学名誉教授)の報告書(30年8月)の提言等に基づく具体的な周波数の再編を円滑かつ着実に実施するため、「周波数再編アクションプラン(29年11月改定版)」を見直し、「周波数再編アクションプラン〈30年度改定版〉(案)」を作成した。同案について、10月16日までパブリックコメント(意見公募)を募集する。##本文 「周波数再編アクションプラン〈30年度改定版〉(案)」の第2章では、「2020年度末までの周波数再編の目標」を掲げた。『2020年の5G実現に向けた当面の目標としては、他の無線システムとの共用に留意しつつ、28GHz帯で最大2GHz幅、3・7GHz帯及び4・5GHz帯で最大500MHz幅の合計約2・5GHz幅程度の周波数を5G向けに確保し、既存の携帯電話用周波数やIoTで利用可能な無線LAN用周波数を含めて、2020年度末までに約4GHz幅の周波数確保を目指すことが適当である』とした。  続いて、第3章では重点的取り組みを挙げて、詳細を記した。「Ⅰ、第5世代移動通信システム(5G)等の円滑な導入に向けた対応」では①2020年の5Gの円滑な導入に向けては、研究開発・総合実証試験の推進、国際連携・協調の強化を推進するとともに、平成30年7月31日の情報通信審議会の答申を踏まえ、3・7GHz帯、4・5GHz帯及び28GHz帯について、平成30年度末頃までに周波数の割当てを目指す②2019年11月に開催されるITU世界無線通信会議(WRC―19)での5Gの追加周波数割当に向けて、欧米等の諸外国との連携を図りながら国際的に調和のとれた周波数割当てを早期に行うとともに、情報通信審議会において既存無線システムとの共用検討を行う等の有効利用方策を検討する③携帯電話用の周波数ひっ迫対策に向けては、1・7GHz帯及び3・4GHz帯において、周波数割当を受ける事業者に既存無線局の周波数移行のための費用を負担させる「終了促進措置」を活用しながら、既存無線システムの再編を進め、早期に周波数を割り当てる―としている。 「Ⅱ、自動運転及びConnected Car社会の実現に向けた対応」では、5・8GHz帯DSRC(ETCにも用いられている通信方式)の周波数利用の効率化及びサービス拡張性の確保に取り組むとともに、自動運転システム及びConnected Carの進展・重要性を踏まえ、既存のITS用周波数帯(760MHz帯等)に加えて、国際的に調和の取れた周波数帯(5・9GHz帯)も念頭に置き、同周波数帯の既存無線システムに配慮しながら、自動運転向け通信技術の導入を図る場合に必要となる既存無線システムとの周波数共用の可能性等について、平成31年度までを目途に検討する。 「Ⅲ、5GHz帯無線LANの高度化等に向けた対応」では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えた将来のモバイル通信のトラヒック増に対応するため、5GHz帯無線LAN システムの実効速度が向上するIEEE802・11ax規格の導入等のため、他の既存無線システムとの共用条件等の技術的検討を進め、平成31年度中に技術基準を策定する。 「Ⅳ、衛星通信システムの高度利用に向けた対応」では、2020年にサービス開始予定の非静止衛星コンステレーションの実現に向け、隣接する既存無線システム及び静止衛星システムとの共用条件等の技術的検討を行い、必要な制度整備を行う。また、Ka帯の移動体向けブロードバンド衛星通信システム(19・7GHz~20・2GHz、29・5GHz~30・0GHz)の普及に向け、サービスの紹介や導入効果等について、説明会等を通じた周知活動等の取組みを行う。 「Ⅴ、超高精細度テレビジョン放送(4K・8K放送)の実現に向けた対応」では、衛星による4K・8K放送(12GHz帯)については、2018年12月の実用放送開始(予定)に向けて、BS・110度CS放送で用いる中間周波数が既存無線システムに与える影響に関する技術的検討等を進める。また、地上波による4K・8K放送の実現に向けて、伝送容量拡大技術やSFN中継技術等について研究開発及び技術的検討を推進する。加えて、4K・8K伝送用FPU(放送番組素材伝送用の移動無線局)の研究開発及び技術的検討を進め、平成31年度中に技術基準を策定する。 「Ⅵ、提案を踏まえたV―High帯域の用途決定では、V―High放送用周波数(207・5MHz以上222MHz以下の周波数)は、放送のみならず通信用途として非常に貴重な周波数資源であることから、新たなサービスの実現に向けて、提案された計画やビジネスモデルについて公開ヒアリングを行い、また実験試験局等の制度も活用しながら、速やかに具体的な検討を進める。 「Ⅶ、2020年に向けた電波利用環境の整備」では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会で多数の様々な無線システムを使用可能とするための周波数確保や、新たなビジネス・イノベーションの創出を見据え、官官・官民を含む周波数共用等、周波数の有効利用を一層促進するための環境整備を推進する。 このほか「地域BWAの周波数の見直し・評価」では、地域BWAの周波数の更なる有効利用のため、有効利用度の評価、他の無線システムとの周波数共用及び全国系BWA事業者等のトラヒックのオフロード先としての活用等について検討を進める。また、一定期間(3~5年程度)経過後において、地域BWAの利用が低い水準にある場合には、地域BWAの在り方の見直しも検討する―とした。 「ワイヤレス電力伝送の制度整備に係る検討」では、空間伝送型ワイヤレス電力伝送については、無線設備として規律することを前提とした、周波数の割当て、無線従事者の配置等の制度整備に係る検討を行う。また、近接結合型ワイヤレス電力伝送については、個別の設置許可が不要となる型式指定の拡大や漏えい電波のレベルが高いものについて低出力であっても規律を設けることなど、新たな機器の出現に合わせて従来の仕組みの見直しを検討する―とした。 「VHF帯等無線システムのデジタル化の推進」においては、防災行政無線のデジタル化の推進のため、自治体の整備状況やニーズの更なる把握を進めるとともに、60MHz帯の同報系システムについては、デジタル方式の普及促進のため、補助制度の導入を含め、高度利用に向けた取組を推進する。また、60/160MHz帯の放送中継用無線(固定局)についても同帯域での稠密利用を含めた周波数共用を検討し、デジタル方式への移行等に向けた取組を推進する。