総務省、火山防災対策に関する行政評価・監視

 平成26年の御嶽山噴火(長野県)を契機として、翌27年に活動火山対策特別措置法が改正され、警戒地域の地方公共団体やホテル・ビジターセンター等の登山者等が集まる施設では、利用者の安全確保のための計画作成や訓練実施が義務付けられた。しかし、必ずしも取組が進んでいない状況となっていたことから、総務省行政評価局は、今回、全国の状況を把握しつつ、大雪山(北海道)、磐梯山(福島県)、白山(石川県・岐阜県)、霧島山(宮崎県・鹿児島県) の4火山を対象として実地に調査した。 調査の結果をみると、近年火山活動が活発な火山では、施設の避難確保計画の作成率は高い(全体で89・5%)が、その他の火山の作成率は低調(同46・9%)だった。調査対象火山では、現場自治体のノウハウ不足などにより、施設への支援が十分に実施できておらず、計画の作成等が進んでいない例などの課題がみられた。 総務省は、改正活火山法の趣旨・目的、避難確保計画の必要性・重要性等に関する周知徹底のほか、市町村等における計画作成支援に係る課題等の適切な把握・分析や施設の計画作成を進捗させることなどを内閣府に求めた。総務大臣から内閣府(防災担当)大臣に勧告した。    ◇ 避難促進施設の指定及び避難確保計画の作成での全国の状況をみると、避難促進施設の指定状況は、延べ202市町村のうち、99市町村(49・0%)が未指定だった。 避難促進施設指定済みの52市町村のうち、域内の全施設で避難確保計画を作成済みのものは27市町村(51・9%)にとどまった。近年噴火活動が活発化している火山(直近20年間に噴火した10火山)では、作成率89・5%となっており、取組が進捗している状況。一方、それ以外の30火山では作成率46・9%にとどまった。 一方、調査対象火山の取組状況をみると、磐梯山では、関係3市町村とも、施設に対する避難確保計画の作成支援は十分に行われておらず、いずれの施設においても計画は未作成。一方、施設側においては、自らによる噴火時における具体的な避難行動の検討や避難確保計画の作成はノウハウ等が無いため困難としており、行政による支援等を要望している状況だった。 白山では、いずれの施設においても避難確保計画は作成されているが①関係施設と連携した避難誘導等を前提とした計画がある一方で、相手施設側の計画では関係施設との連携について記載がないなど、有事の際に機能しないおそれ②市町村が主体的に計画を作成したが、施設への共有等が行われておらず、施設側が避難促進施設に指定されていること自体を認識していない状況だった。 次に避難訓練の実施をみると、調査対象火山における避難訓練の実施状況では、大雪山は令和2年10月に、火山防災協議会の事務局である北海道及び東川町が中心となって、図上訓練形式による避難訓練を初めて実施した。 磐梯山は令和3年9月に、火山防災協議会の構成機関(16機関)による情報伝達訓練を初めて実施。また、火口周辺の3市町村(北塩原村、磐梯町、猪苗代町)で構成する火山防災連絡会においても、毎年、サイレン吹鳴訓練及び情報受伝達訓練を実施した。  白山は火山防災協議会の構成機関(54機関)による情報伝達訓練等を毎年実施。石川県側及び岐阜県側のそれぞれにおいて、関係地方公共団体間で連携した各種の避難訓練を実施。白山市では、地域住民も対象とした避難訓練を実施した。  霧島山は宮崎県えびの市では、集客施設で組織する自主防災組織、地方気象台、警察署等と連携して、えびの高原(硫黄山)の噴火を想定した避難訓練を年2回実施した。 避難訓練実施に係る課題・意見要望では、単独の市町村による訓練は、専門的な知識やノウハウがないため、実施が困難、 住民や登山者等を含めた避難訓練に係る災害想定や計画を策定するのが難しいため、実際に活用された訓練シナリオ等を提供してほしい―との声があった。 内閣府では、地方公共団体等からの要請に基づいて、火山防災対応の経験がある実務者等を火山防災エキスパートとして派遣しているが、活火山法改正以降、避難訓練の企画や実施に関する支援実績としては4火山(5例)にとどまっている。