
宇宙建設技術の研究開発を加速へ 国交省、月表面の地盤調査ミッションと連携
国土交通省大臣官房参亊官(イノベーション)によると、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と慶応義塾大学、立命館大学、東京大学が共同開発する月表面の地盤調査(RISE)ミッションに、国土交通省が研究開発を進めている「宇宙建設革新プロジェクト」が連携し、お互いの研究成果を相互活用することになった。これにより、宇宙建設に不可欠な月表面の地盤条件について把握することができ、月面建設を目指した宇宙建設技術の研究の加速や新たな成果の創出を目指すことになった。
国土交通省では、日本の建設事業で開発、導入を進めている自動・遠隔施行、ICT施工等の建設技術を将来的に月面等での建設活動で応用することを視野に入れ、地上の建設事業における基盤技術としての確立を目指す「宇宙建設革新プロジェクト」を進めている。 宇宙建設革新プロジェクトとRISEミッションが連携することにより、月面での地盤の調査法の研究が進むとともに、地上での調査方法への波及も期待され、また、調査結果により建設機械や月面建造物などの設計条件の設定や評価ができ、高精度なシミュレータの構築等が可能となり飛躍的に宇宙建設技術の研究開発が加速するとした。
月の表面は「レゴリス」と呼ばれる、細かい砂や砕けた岩石の層に覆われている。これは、数十億年にわたる微小天体の衝突や昼夜の温度差による熱疲労によって作られたもので、地球の土とは大きく異なる。アポロ計画で持ち帰った月のサンプルで得られたデータはあるが、今後の月面活動を安全に進めるには、月面環境でのさらなる調査が必要となる。
特に、「レゴリス」の硬さや強さに関する機械特性(土質力学特性)は、月面で使用する機械の動きや作業を正確に予測するために欠かせない重要な情報であることから、同ミッションでは、月着陸船に超小型の地盤調査装置を搭載し、レゴリス表層の機械特性を調べる。
RISEミッションの実施時期は2027年度。IM―4ミッション着陸機に搭載された地盤調査装置から、加速度計を内蔵した球体を月面に向けて落下させ、「レゴリス」と衝突する際の球体の挙動を観測する。球体内部で計測される加速度応答を分析することで、月の表面がどのくらい硬いのか、どれくらいの圧縮性を持っているのかといった、月レゴリスの機械的な特性を調べる。調査結果から建設機械や月面建造物などの設計条件設定や評価が可能となり、高精度なシミュレータの構築が可能となる。