火星の気候変動！氷のタイムカプセル 岡山大学等、高解像度探査データ用い復元に成功
国立研究開発法人海洋研究情報機構（JAMSTEC）によると、岡山大学学術研究院先鋭研究領域（惑星物質研究所）のTrishit Ruj准教授＝写真＝は、JAMSTEC、イタリア・ダヌンツィオ大学、高知大学、アメリカ・ブラウン大学、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構（JAXA）、東京大学との国際共同研究により、今般、火星における氷の蓄積の長くダイナミックな歴史を明らかにした。
火星にはかつて大量の氷があり、その分布や量の変化は気候変動を知る重要な手掛かりだが、その全体像はこれまでよく分かっていなかった。国際共同研究では、NASAの探査機による高解像度画像（HiRISE、CTX）を用いて、中緯度の７５０以上のクレーターを調査。氷によって形成された地形やクレーター年代、気候モデルを組み合わせることで、過去６億年の氷の蓄積と分布の変化を解明。結果、氷は常にクレーター南西側に溜まりやすいことが分かった。
また、過去に起きた氷の蓄積は１回でなく２～３回あり、それぞれ供給方向や厚さが異なり、火星の自転軸の傾きの変動に伴う気候変化が影響。約６億４千万年前の火星には氷が厚く広がっていたが、その後減少し、最後の氷の蓄積（約９８００万年前）では限られた分布になった。これは、火星が湿潤な時代から乾燥寒冷な時代へ移行したことを示しているという。この成果は、火星の氷と気候の歴史解明だけでなく、将来の探査での水資源利用にも繋がる重要な知見とした。
今回の発表について、Trishit Ruj准教授は、「NASAの火星探査機による高解像度画像と、岡山大学惑星物質研究所の解析技術を活用することで、火星の氷の歴史や気候変動の詳細が明らかになり、将来の探査着陸地点の検討にも繋がると期待される。火星の謎を解き明かすワクワクドキドキするような研究を、私たちと一緒に体験してみませんか」とコメントした。