デジタルインフラ整備等に1532億円 総務省が令和7年度補正予算案を公表

 総務省はこのほど、令和7年度所管補正予算案の概要を公表した。経済対策に係る追加所要額は5276億6千万円。「地方の伸び代の活用と暮らしの安定」として、自動運転社会実装に向けたデジタルインフラ整備等に206億3千万円、「経済安全保障の強化」として低軌道衛星インフラ整備等に3326億円、「防災・減災・国土強靭化推進」として通信復旧体制強化や放送ネットワーク強靭化等に179億円、「未来に向けた投資の拡大」として、放送・配信コンテンツの製作力強化や海外展開推進等に1532億円を盛り込んだ。
  【生活の安全保障・物価高への対応】
 「地方の伸び代の活用と暮らしの安定」に206億3千万円、「中小企業・小規模事業者をはじめとする賃上げ環境の整備」に31億7千万円を盛り込んだ。情報通信や電波放送に関連する主な事業は次の通り。
 ▽自動運転の社会実装に向けたデジタルインフラの整備:自動運転の推進地域において、携帯電話網による自動運転車両の遠隔監視等のための携帯電話基地局の高度化(5G SA化)を支援する(5億円)▽デジタルインフラ整備の推進:地理的に条件が不利な地域において、5G、光ファイバ等を整備する場合に、整備費用の一部の支援等を実施(31・1億円)▽AI等のデジタル技術と通信インフラを活用した地域の社会課題解決の推進:デジタル人材/体制の確保支援、AI・自動運転等の先進的ソリューションや先進的通信システムの実証支援、地域の通信インフラ等整備の補助等の総合的な施策を通じて、全国における早期実用化を促進する(129・3億円)▽電話及びブロードバンドのユニバーサルサービスの確保に向けた調査研究:最終保障提供責務に係る新たな交付金の在り方について、それに要する費用を試算する等の調査研究を実施(0・3億円)▽ 字幕番組、解説番組、手話番組等の制作促進:放送を通じた情報アクセス機会の均等化を実現するため、字幕番組、解説番組、手話番組等の制作等を支援し、視聴覚障害者向けテレビジョン放送を充実(1・0 億円)
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 【危機管理投資・成長投資による強い経済の実現】
  「経済安全保障の強化」に3326億円、「防災・減災・国土強靱化の推進」に179億円、「未来に向けた投資の拡大」に1532億円を盛り込んだ。情報通信や電波放送に関連する主な事業は次の通り。
 「経済安全保障の強化」
 ▽信頼できるAIの開発・活用支援に資するデータ整備及び 能動的評価基盤構築に関する研究開発:情報通信研究機構(NICT)において、民間企業等におけるAI開発に必要となる大量・高品質な日本語を中心とする学習用言語データを整備して民間企業等へ提供するとともに、進化するAIを評価可能な能動的評価基盤の構築に係る研究開発等を実施(383億円)▽量子暗号通信網の早期社会実装に向けた研究開発:量子暗号通信の長距離化・高度化を可能とする要素技術を確立するための研究開発を実施(15億円)▽広域量子暗号通信ネットワークの構築技術・運用技術の実証:量子暗号通信の社会実装を加速するため、広域量子暗号通信ネットワークの運用技術に係る実証環境の構築と技術課題の実証を実施(217億円)▽宇宙戦略基金事業の実施:宇宙戦略基金を活用し、宇宙通信分野における民間企業の国際競争力につながる商業化等に向けて、最先端通信技術の開発支援を強化(310億円)▽自律性確保に向けた低軌道衛星インフラの整備の推進:海外に依存している低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスについて、我が国の自律性向上のため、インフラ整備を支援(1500億円)▽革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の実施:2030 年代の導入が見込まれる次世代情報通信基盤(Beyond 5G)について、我が国の 技術を確立し、社会実装や海外展開を目指すため、研究開発基金を活用し、民間企業や大学等による研究開発・国際標準化を支援(239億円)▽オール光ネットワーク技術開発の促進及び普及・拡大:AI 社会の基盤となるオール光ネットワーク(APN)の早期社会実装を目指し、段階的 に先端技術を取り入れ、多様な関係者が実際に製品化等の開発成果の確認・検証が可能なAPN イノベーションハブを構築(70億円)▽安全性・信頼性を確保したデジタルインフラの海外展開の推進:海底ケーブルやオープンRAN、オール光ネットワーク(APN)等、安全保障の観点から 自律性の確保が必要な領域、将来において不可欠性の獲得が期待できる分野を中心に、海外における受注拡大に向けた支援(規制・ニーズの事前調査、実証事業等)を実施( 80・5億円)▽海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラの強靱化:特定の地域に集中する海底ケーブル等の地方分散を推進するため、デジタルインフラの整備を支援(400億円)▽国際海底ケーブルの防護策の強化:陸揚局・国際海底ケーブル防護の実態把握等の各種調査を実施(3億円)▽我が国のサイバー対処能力強化に向けた研究・人材育成基盤の整備:情報通信研究機構(NICT)においてサイバー攻撃に関する情報(脅威情報)の高度分析及び高度な人材育成のための基盤を整備(43・4億円)▽地方公共団体におけるサイバーセキュリティ対策の強化:地方公共団体におけるセキュリティ基盤(自治体情報セキュリティクラウドや地方版脆弱性診断システム等)を強化(40・3億円)▽ケーブルテレビの安定的運用に向けた対策の強化:地上放送の代替として期待されているケーブルテレビについて、サイバーセキュリティ対策等を行うことにより、その安定的運用を支援(8千万円)▽インターネット上の偽・誤情報等への総合的対策の推進:インターネット上の偽・誤情報等の流通・拡散に対応すべく、対策技術の開発・実証及び社会実装、意識啓発を推進(24億円)
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 「防災・減災・国土強靱化の推進」
 ▽消防指令システムにおけるAI実証事業の実施:消防指令システムへのAI実装に向けた実証事業を実施(2億円)▽消防団ドローン・DX推進事業の実施:都道府県の消防学校において、ドローンの操縦講習に加え、ドローンを活用した実践的な技術取得に向けた講習を実施(4千万円)▽AI・IoT等の新技術を活用した効果的な危険物保安等のあり方の検討:ドローン等DX新技術を活用した屋外貯蔵タンク等の点検方法について検討を実施(4千万円)▽携帯電話基地局の強靱化:災害発生時における停電や伝送路断による携帯電話基地局の停波を回避するため、大容量化した蓄電池や発電機、ソーラーパネルの設置及び衛星の活用により、基地局機能を維持(7・5億円)▽非常時における携帯電話網の相互利用による接続性向上に関する技術的検討:携帯電話網の相互利用時における接続性等の課題を解決し、より確実な緊急通報等を実現するために必要な基盤の検証及び付随する環境整備等に係る技術検討を実施(5億円)▽災害発生時の通信復旧体制の強化:南海トラフ地震等の大規模災害に備え、電気通信事業者による、市町村役場や災害拠点病院等の防災拠点の通信確保に用いられる移動基地局や移動電源車等の応急復旧機材の配備を促進(13億円)▽災害時等における非地上系ネットワークの国内活用に向けた調査:HAPS(高高度プラットフォーム)の国内における離発着運用の実現のための調査検討を実施(6千万円)▽放送ネットワークの強靱化:ケーブルテレビネットワークの光化、複線化等による耐災害性強化及びケーブルテレビ関連施設の災害復旧等を支援(20・2億円)▽地上基幹放送の小規模中継局等のブロードバンド等による代替等支援:あまねく全国において安定的かつ効率的な放送ネットワークを構築し、放送の視聴環境を確保するため、小規模中継局等のブロードバンド等による代替支援に向けた調査研究等を実施(2・6億円)
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 「未来に向けた投資の拡大」
 ▽ワット・ビット連携の推進:小規模分散データセンター間をオール光ネットワーク(APN)で接続し、仮想的な大規模データセンターとしての運用等を実証(21億円)▽多様化する電波利用に対応するための電波監視体制の確立:電波の監視及び不法に開設された無線局の探査を実施するため、必要となる電波監視施設等の整備を実施(15・3億円)▽総合無線局監理システムの制度改正等対応:新たな電波利用システムに対応した制度改正等のプログラムの開発等を実施(12・1億円)▽特定ラジオマイクの高度化に向けた調査検討:番組制作や舞台・ライブなどの興業等で使用されるラジオマイクについて、既存無線システムとの共用検討等の技術基準の策定に資する調査検討を実施(3億円)▽スタートアップ創出型萌芽的研究開発の支援:ICT 分野におけるスタートアップのうち、協業により新たな市場やビジネスモデルの 獲得を目指すスタートアップ等を対象に、重点的な研究開発費支援及び事業化に向けた伴走支援等を通じてユニコーンを創出(5・5億円)▽放送・配信コンテンツの製作力強化・海外展開推進:コンテンツ製作における「企画・開発」、「製作」、「権利処理」、「流通」の各工程の課題への対策を講じるとともに、人材育成やDXなど各工程に共通して必要な取組を行うことにより、企画・開発から流通に至るまでの好循環の実現・加速を図り、放送・配信コンテンツの製作力強化・海外展開を推進(28・3 億円)

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。