2025年5月12日(7808号)
最後に映画館に洋画を見に行ったのはいつだったろうか。そこまで頻繁に映画館に足を運ぶタイプではない記者だが、それでもすぐには思い出せないほど遠い記憶となっていることに驚く▼トランプ米大統領が自身のSNSを通じて外国製の映画に100%の関税を課す方針を表明したことが話題となっている。ハリウッドをはじめアメリカの映画産業が壊滅的な状況にあることから映画産業の保護を理由に掲げ、国家安全保障上の脅威とも主張。「アメリカで映画を製作する時代を取り戻す」と息巻いている▼かつてハリウッドは映画の代名詞とも言うべき存在で、映画の興行収入も大半は洋画が占めていた。しかし近年は好調な邦画と比べてヒット作も少なく、いつしか「邦高洋低」と呼ばれる状況に。新型コロナウイルスによるロックダウンから、全米脚本家組合と米映画俳優組合による長期的なストライキによりコンテンツ製作が停滞。ハリウッドのあるカリフォルニア州での年間撮影日数もピークの半数以下に落ち込むなど、ハリウッド凋落の声が聞こえて久しい▼皮肉にもこの声明直後、米株式市場ではNETFLIXやワーナー・ブラザース・ディスカバリー等の映画関連企業の株価が一時下落した。アルカトラズ刑務所再開と合わせて場当たり的な発言に対する批判も多い中、関税政策が米映画産業の復活にどれほどの影響を与えるかははなはだ疑問が残る。(K)