毎日放送・亀井プロデューサー「作品に携わる覚悟が持てるかが重要」~「ANIME TALKING JAM」
IMAGICA GROUPのグループ会社で、放送/映像関連機器の開発・製造・販売・輸出入を手掛けるフォトロン(東京都千代田区、瀧水 隆社長)は、アビッド テクノロジー(Avid)と共にアニメ業界関係者のためのイベント「ANIME TALKING JAM」を東京国際フォーラムで開催した。
同イベントでは、アニメ制作編集テクニック×ヒット論と題してトークセッションを実施。第1部は『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』リードエディターのネイサン・シャウフ 氏(Sony Pictures inc.,)に登壇してもらい、制作ワークフローや、Avid Media Composerでの実際の編集画面やタイムラインについて紹介した。
第2部はTVアニメ『ダンダダン』トークセッションで、毎日放送 プロデューサー 亀井博司氏が登場。亀井氏は、1987年大阪生まれで、京都大学文学部卒業後、2010年毎日放送に入社。テレビ営業、報道記者を経て現在はコンテンツ戦略部でアニメプロデューサー。主な担当作品:「炎炎ノ消防隊」「AIの遺電子」「でーじミーツガール」「ぽんのみち」「ダンジョンの中のひと」「ダンダダン」など。
亀井氏は、「元々のマンガの原作が本当に画力が高く素晴らしい作品だが、こういう原作を映像化するというのは結構ハードルが高い。それはやはり原作ファンが、映像になった時に違和感を覚えたり、アクションシーンはマンガの方が迫力があったとか思ったりするが、それは静止画と動画というところの違いもある。
ダンダダンは、追いかけっこのシーンや、バトルのシーン、大勢が出てくるシーンなど、結構動きも多く、登場するものも多い作品なので、映像化するときに非常に難易度が高い作品にはなるかなというふうに、原作を読んだときに思っていた」と語る。
ただ、色々な恋愛とかオカルトとかバトルとか、様々な要素が本当にカオス的に組み合わさって非常に面白いので、やはり自分がこれをプロデュースしたいなと強く思ったという。
ヒットした要因については、原作の面白さというのをうまく映像化できたというところに尽きる。しかし、この点はプロデューサーの力なのかというと、本当にそういうことではなくて、監督を含めて制作陣の力ではあると思っている。特に漫画のそのアクションシーンとかカロリーの高いところをきちんと、間をうまく埋めながら、なおかつアニメーションならではの表現をうまく組み合わせたところが、多くの人に受け入れられた要因だと思っている。
作画の部分も非常に力入れて作っていただいているが、実はカット数はすごく少ない。だんだんカット数が増えてくる作品が多いが、大体枚話数三百カットぐらいで、二百台の話もある。それぞれのカットの中でいろんな情報を処理していく、一個のカットの中で起きている事象が複数あることで、画面の密度が上がったり、情報の密度が上がったりということで、スピード感がありながら、体感としてあの漫画の迫力みたいなものが演出できているという。
ヒットする作品をどうやって見つけるかについては、アニメの制作は結構期間が長く、短くて二年、長いと三年とか、オリジナルタイトルとかだと本当に四~五年かかるものもある。自分はまずその期間、一番は言い過ぎかもしれないが、自分がずっと好きで、そこに熱中できるということが非常に大事だと思っている。これをずっとやり続けるという強い気持ちを持ち続けられるぐらいの愛を注げるかというところがまず一つポイントになる。これまで手掛けた作品でも、原作もオリジナルもそれぞれあるが、きちんと原作も読み込みつつ、数年間にわたってこの作品に携わるだけの覚悟が持てるかが重要だとした。
最近は海外での売上が見込めるもの、海外で評価されるものが一つの指針となりつつあるが、これについては、海外のために作るということはしないという。海外でも評価されるし、国内でも話題になりそうなもの、この二つを考えることが企画立案の中では大事だと思っている。
一方で、国内のビジネスを考えた時に、配信でかせぐのか、商品化グッズでかせぐのかについては、細かく考えていく必要がある。どうすれば、投資した以上のリターンが返ってくるかというところを考えながら作っているという。
テレビと配信の違いについては、テレビはみんなでその作品を見て楽しもうというお祭り感みたいなもので、配信はその後しっかり見られる大事なプラットフォームだと思う。しかし、ヒットしてくると、このお祭りにみんな参加したくなってきて、視聴率も上がってくるという感じがある。今まで見てなかった人が周りで話題になっているので、配信で見て追いつこうとして配信で見て、リアルタイムのテレビに戻ってくるというような感じがあると推察しており、それが作品のヒットにつながっているという。
また、様々な新技術については、「テクノロジーとビジネスの観点でいうと、結構できることが増えてくると思う。一方で、超えなければいけない法的な問題とかも色々でてくる。我々としては、この次には何がくるのだろうと考えながら、ある意味ビジネスチャンスがあるので乗っていきたいと思う」と述べた。
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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