Verbex、放送時の〝つながらない〟を解消へ

 Verbexは、テレビ通販事業を展開するテレビ東京ダイレクトと連携し、テレビ通販受電業務における顧客体験向上を目的とした音声AIエージェントの実証実験(PoC)を開始すると発表した。同実証は、同社のお取り寄せグルメ通販番組『虎ノ門市場』の一部商品を対象にスタートし、段階的に適用範囲を拡大していく予定。
 テレビ通販は、番組放送中や放送直後に購入意欲の高い顧客からの電話が一斉に集中するという特性を持っている。そのため、ピークタイムには回線が混み合い、顧客を待たせてしまう状況が発生しやすくなる。
 また、呼量が想定を上回った場合には受電しきれず、電話がつながらないまま終わってしまう、いわゆる〝受け逃し〟も起き得る。これは売上機会の損失につながるだけでなく、「買いたいのにつながらない」という体験を生み、顧客満足度の低下にも直結する。
 さらに、放送ピーク時にはオペレーター業務が極端に集中するため、現場負荷の増大も課題となっている。これらは単なる業務効率の問題ではなく、〝購買の瞬間体験〟そのものに影響する重要なテーマである。
 実証実験では、Verbexの音声AIエージェントがテレビ通販受電の一次対応を担い、待ち時間を極小化し、より多くの顧客に応答できる環境の構築を目指す。
 まずは2月中に放送の『虎ノ門市場』において、一部商品を対象に導入を開始。対象業務は、電話による注文受付および基本的な案内対応。運用開始後は対話ログや運用状況を分析しながら改善を繰り返し、対象商品や番組、対応時間帯を段階的に拡大していく計画。
 音声AIは、商品の注文受付に必要な情報のヒアリングを行い、基本的なFAQへの回答や注文内容の確認までを担う。その上で、個別事情への配慮が必要なケースや折り返し対応が必要なケースなど、AIのみで完結しない場面では、適切なタイミングでオペレーターへ引き継ぐ。
 同取り組みは全業務の自動化を目指すものではなく、人とAIが役割分担するハイブリッド体制の中で、最適な顧客体験を設計・検証するもの。
 同実証実験の中心にあるのは業務効率化ではなく、顧客の買い物体験の質の向上という。放送直後でも待たされることなく注文できる環境に近づけることで、実質的に待ち時間を感じさせない体験の実現を目指す。
 また、呼量超過による取りこぼしを減らすことで、応答率の向上を図る。これにより、顧客はストレスなく注文でき、販売側にとっても機会損失の低減が期待される。さらに、定型的な対応を音声AIが担うことで、人のオペレーターはより配慮が必要な対応や付加価値の高いコミュニケーションに集中できる体制づくりも視野に入れている。
 Verbexの音声AIは、人間に近い自然な日本語対話を実現する対話制御技術を基盤とし、リアルタイム性の高い音声処理によってスムーズな会話体験を提供する。呼量の変動にも柔軟に対応できるスケーラビリティを備えているため、放送直後のような急激なアクセス増にも対応可能。また、人のオペレーターとの連携を前提とした設計により、AIから人への引き継ぎが自然に行える点も特長。
 同PoCで得られる対話データや運用知見をもとに、対象商品の拡大や他番組への展開、対応時間帯の拡張などを段階的に進めていく予定。さらに、蓄積された対話データを活用し、顧客のつまずきポイントや問い合わせ傾向を分析することで、番組設計や商品案内の改善にもつなげていくことが期待されるという。
 Verbexは、「声で世界をつなぐ」をミッションとして、独自の音声対話技術を研究開発しているAIスタートアップ。
 STT/TTS/LLM/Speech Engineなど音声対話に必要な機能やデータのトレーニングメソッドを独自研究開発し、極めて自然で低遅延な対話を実現するため音声AIプラットフォームを提供している。

この記事を書いた記者

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成澤誠
放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。