NTT西日本グループ&関西テレビ IOWN APN活用リモートプロダクション
NTT西日本グループは、関西テレビと共同で、2025年9月6日に京セラドーム大阪で開催されたプロ野球公式戦「オリックス・バファローズ 対 北海道日本ハムファイターズ」の地上波放送向け中継において、IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(IOWN APN)を活用し、データセンター集約型の制作設備を遠隔操作するリモートプロダクション環境を構築・運用したと発表した。
同取り組みは、西日本エリアのプロ野球地上波放送において、IOWN APNを活用した制作機能をデータセンターに集約することで、遠隔地からの番組制作を実現した初めての取り組みとなる。
現在、イベント会場での映像制作については各種制作機器を搭載した中継車を使うのが一般的だ。しかし、中継車を利用した現地での制作体制は、機材や人員を物理的に配置する場所の確保に制約があり、また中継車の維持コスト、スタッフを含めた現地派遣コストに加え、都度発生する制作環境構築のためのリードタイムも課題となっている。このため、制作ワークフロー全体の効率化と、放送局内の充実した設備を活用したより高度で快適な制作環境へのシフトが求められている。
NTT西日本グループは、次世代のコミュニケーション基盤IOWN構想の主要技術であるIOWN APNの大容量・低遅延・ゆらぎなしの特徴を活用することで、この課題解決を目指している。
同取り組みでは、データセンターと京セラドーム大阪および関西テレビ本社を、IOWN APNの技術を活用した「All―Photonics Connect powered by IOWN」にて接続した上で、中継制作の核となる主要な制作機能(IPスイッチャー、PTPグランドマスター)をデータセンターに集約した。さらに、関西テレビ本社から、IOWN APNの超低遅延ネットワークを通じてデータセンター上の制作設備を遠隔操作することで、スイッチャーやミキサー担当者が現場にいなくとも地上波放送向けの高品質な番組制作が可能であることを実証した。
将来的に上記の環境が確立されれば、中継車の手配や大規模な現地設営を省力化でき、番組制作稼働の効率化、個別の設備投資・維持管理コスト、構築リードタイムの削減が可能となる。また、CCUを必要としないスタジオカメラを利用した運用にも成功した。
関西テレビ放送は、「IOWN APNを活用したリモートプロダクションの実証は、今回が2回目です。前回は大阪・関西万博会場におけるイベントの配信コンテンツ制作でしたが、今回は地上波放送での取り組みとなり、これまで以上に緊張感のある貴重な経験となりました。実地運用だからこそ、机上の検討では見えなかった課題を抽出することができました。MoIP(Media over IP)機器をほとんど保有していない当社にとっても、今後の設備計画を具体化するうえで有意義な機会でした。今後、運用面や費用面でも具体的な検討を進めていきたいと思います」とコメントしている
今後、NTT西日本グループは、今回の取り組み結果を踏まえ、放送事業者が共通で利用できるデータセンター集約型のメディア向けIP設備の構築を推進し、IOWN APNを活用したリモートプロダクション技術の高度化と標準化に推進していく。これにより、放送業界の制作設備の共同利用と運用効率の飛躍的な向上に貢献する。
なお、IOWN APNの特性である大容量・低遅延・ゆらぎのない通信環境に対応した中継拠点として、関西では京セラドーム大阪、阪神甲子園球場など、主要な拠点での活用を進めており、その他の拠点についても順次拡大を予定。
している。
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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