伊藤忠ケーブルシステム 高田武幸社長に聞く
伊藤忠ケーブルシステムは、2026年に設立40周年を迎える。同社は映像、通信、音響のシステムインテグレーターとして、ケーブルテレビからCS/BS放送、地上波、ポストプロダクションと幅広い分野へ製品・サービス・サポートを提供してきた。
高田武幸社長に、ケーブルテレビ業界の動向、新製品・新サービスの展開、今年の抱負などを聞いた。
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――2025年を振り返っていただきどんな年でしたか
高田 2025年を振り返ると、私にとっては、4月に社長に就任し慌ただしい状況での立ち上がりとなりましたが、そのような状況にもかかわらず、結果としては定量的に見て非常に堅調な一年であったと評価しています。
背景としては、2024年からのバックログが一定程度存在しており、期初から売上を計上することができました。当社は例年、第4四半期(1月~3月)に案件が集中し、年度末に収益が積み上がる傾向が強いですが、2025年度については、期初から比較的コンスタントに収益を積み上げることができた点が特徴的でした。この点において、事業運営としても安定感のある一年であったと考えています。
――事業分野別ではどうでしょう
高田 まずケーブルテレビ分野においては、従来から取り組んでいる自動送出システムをはじめとした各種システムのリプレース案件が順調に推移しました。また、FTTHシステムを更新された事業者もあり、一定規模の案件がまとまって発生したことも、業績面での追い風となりました。これらに付随する伝送路敷設工事についても受注を獲得することができ、トータルとして堅調な成果につながりました。
加えて、集合住宅向けのモデム、いわゆるHCNA端末についても引き続き多くの引き合いをいただき、継続的な収益の下支えとなった点は大きな成果でした。
放送分野においても、NHKをはじめとする放送局各社におけるシステム更新案件が複数あり、これらを着実に積み上げることができました。特に、以前から段階的な導入が進んでいたアーカイブ関連のソリューション「CERCA(セリカ)」については、地方局を中心に導入が拡大し、ユーザー数の増加という形で成果が表れた一年でもありました。
一方で、非放送分野や新規分野への展開についても一定の進展がありました。ドイツIHSE社製のKVMスイッチについては、本格的な展開を進め、新たな引き合いを獲得することができました。これにより、従来とは異なる業種・用途のお客様との接点を広げることができた点は、今後に向けた重要な成果です。
さらに、新規商材の取り組みとしては、伊藤忠関連の企業と連携しながら、ビデオ会議システムや携帯電話及びデジタル端末の補償サービスといった分野にも着手しました。これらの取り組みは、現時点ではまだ事業規模として大きなものにはなっていないものの、新たな分野への挑戦として、着実に前進することができた一年であったと捉えています。
総じて2025年は、既存事業において安定した成果を確保しつつ、新たな分野への布石を打つことができた一年であり、就任初年度としては堅調かつ次につながる年であったと考えています。
――2026年に期待されている製品・ソリューションは
高田 まずアーカイブ関連ソリューションについては、既存製品をベースに機能を絞り込んだ簡易版の展開を進めていく方針です。これはケーブルテレビ事業者や制作会社向けに加え、従来とは異なるエンタープライズ領域への展開も視野に入れています。
また、集合住宅向けHCNAモデムについては、新モデルの投入を予定しています 。「CEM8392」という型番のモデルで、すでに展示会など紹介しています。複数のチップを搭載することで、より多くの端末との接続を実現するといった機能強化を実現しています。本製品については、2026年に向けた重点商材の一つとして、積極的に展開していく方針です。
さらに、FTTH関連システムについては、市場が一巡したとの見方もありますが、各局においては引き続き通信品質の向上や高速化への関心が高く、継続的な投資や検討が進められています。当社としても、こうしたニーズに応える形で、引き続き提案活動を強化しています。
具体的には、25G GPONを含む高速GPONシステムについて、重点的に展開していきたいと考えています。国内で現在広く普及しているGE―PON環境から、より高速なGPONへのマイグレーションを見据えた提案についても、引き続き積極的に進めていく方針です。
非放送分野や新市場への展開という観点では、全くの新規ではありませんが、文教分野、特に大学市場については引き続き重要なターゲットと位置付けています。2025年には、大学に対してバーチャルプロダクション関連システムを導入する実績を作ることができており、こうした取り組みは2026年以降も継続していく方針です。
また、輸入商材を活用した新規市場開拓についても継続的に取り組んでいきます。例えば、「Harding FPA (HFPA)」(パカパカチェッカー)は、ゲーム業界への展開を進めていきたいと考えています。さらに、IHSEを中心としたKVMソリューションについては、これまでの放送用途に加え、金融、警察、防衛といったミッションクリティカルな分野への本格展開を視野に入れています。海外では、警察機関などへの導入事例も確認されており、こうした実績を踏まえながら、日本国内での展開可能性を探っていきます。


CERCA Touch
――AI関連はいかがでしょう
高田 AIに関連する商材についても、重要なテーマの一つです。各メーカーがAI技術を活用した製品を次々と市場に投入する中で、当社としてはシステムインテグレータの立場から、それらを適切に組み合わせ、顧客の具体的な課題解決につながる形で提案していくことが求められています。AIを単体で扱うのではなく、既存システムと統合したソリューションとして提供していきたいと考えています。
また、マンションISP事業においては、マンション管理人の人材不足という社会的課題を背景に、無人化ソリューションへのニーズが高まっています。これまでも同様の取り組みは進めてきたが、近年は自治体や行政単位で無人運営を認める動きが広がりつつあり、事業環境としては追い風となっています。この分野についても、動向を注視しながら、積極的に展開していく考えです。
――2026年の抱負を
高田 2026年は、当社が1986年の設立から40周年を迎える節目の年となります。ただし、この節目において、現時点で事業構造を大きく転換するような施策を打ち出しているわけではなく、基本的にはこれまで積み上げてきた事業の延長線上で、着実な成長を目指していく方針です。
ケーブルテレビ分野においては、通信系設備の更新や高度化については、引き続き一定数の案件が予定されています。こうした需要を着実に取り込み、安定した事業運営につなげていきたいと考えています。
また、放送・通信にとどまらないサービス領域についても、伊藤忠グループのリソースを活用しながら、引き続き提案の幅を広げていきます。
放送分野では、NHKをはじめとする放送局において、今後も継続的な設備更新需要が見込まれると考えており、制作やポストプロダクションを含めた領域は、当社にとって引き続き重要な事業の柱です。この分野については、今後も注力して受注拡大を図っていきます。
さらに、多業種展開という観点では、映像制作のニーズは放送局に限らず、一般企業やアリーナ施設などにも広がっています。いわゆるプロフェッショナルAV領域についても、将来的な成長分野として捉え、時間をかけてでも確実に開拓していきたいと考えています。
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。



