
日本ケーブルテレビ連盟が第53回定時総会
一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟は、6月13日に東商渋沢ホール(東京都千代田区)で、第53回定時総会、第21回日本ケーブルテレビ連盟功労者表彰贈賞式を開催した。
定時総会は開会後、今林顯一日本ケーブルテレビ連盟理事長が次のように挨拶した。
昨年元旦、能登半島地震がございました。多くの尊い命が犠牲になり甚大な被害がもたらされました。懸命な復旧作業の最中に9月に奥能登の豪雨が発災するという二重災害となりました。被災地の皆さんにおかれましては大変ご苦労の多い1年となったことと思います。心よりお見舞いを申し上げます。先月末、北陸支部の総会にお招きいただきその機会を捉えて金沢ケーブルさんにご案内いただき輪島に行ってまいりました。市長さんからは復旧復興においてケーブルテレビ業界全体からご尽力をいただいたことに感謝の言葉をいただきました。私からもケーブルテレビは通信・放送はもちろんのこと地域の様々な活動に引き続き貢献していきたいと申し上げました。輪島市内の朝市のあったところでは今でも空き地となっており、人通りもまばらでした。金沢市近郊でも道路はガタガタのところがあり、豪雨による流木、倒壊した人家が放置されているところもあって正直のところ復旧復興の道のりは遠い険しいこういったことを痛感しました。
能登半島地震の経験を踏まえて今年1月には気仙沼で東北支部主催の防災フォーラムが開催されましたが南海トラフ地震、首都直下型地震の可能性が高まる中、連盟本部でも改めて災害に真正面から向き合うことといたしました。もちろん災害、人口減少、地域経済の停滞とこういった課題は国家レベルの課題で、ケーブルテレビ業界だけで解決できる問題ではありません。
しかし、地域を基盤とするわれわれの業界は、地域が消滅することになれば最も強みとするところを失うことになります。したがって国や自治体の対応を受け身で待つのではなく、我々自身でも自ら考え行動を起こしていかなければいけないと考えます。すでに塩冶会長に委員長をお願いしている戦略推進委員会を中心として各委員会との横断的連携、各支部との縦断的連携のもと、まずは大規模災害への対応の検討を始めていただいています。個社で対応すべき自助、私たちが得意とする事業者間連携や関係業界の皆さまとの共助、そして自助や共助でカバーしきれない部分を補完するために政府や自治体の皆さまにお願いする公助という3つの軸を考えています。連盟としては自助の手助けとなる情報提供、共助に必要となる連携の橋渡しやその下地となる設定・運営、公助についての意見・要望などを関係方面に届け実現に結び付けるための渉外活動、こうしたことを役割として果たしてまいります。会員事業者にとっていつでもどこでも誰にでもお役にたつ連盟であるように、皆さまのお知恵をいただきながら取り組んでまいりますのでご協力のほどお願い申し上げます。
続いて来賓挨拶を豊嶋基暢総務省情報流通行政局長が行い次のように述べた。
今年は放送業界において大きな区切りになる年といわれています。例えばラジオがスタートしたことによる放送100年、BSデジタル放送は25年、ケーブルテレビも群馬県伊香保で始まって70年を迎える年になります。放送全体の社会的役割を踏まえた上で、ケーブルテレビにおいては、全国各地の地域住民の多様なニーズに応える重要な役割を果たしています。わが町のテレビとして地域情報をはじめとして様々なコンテンツを提供して発信しています。さらには災害時、緊急時には避難情報、被災状況を伝える重要な役割を果たす地域に根差したメディアとしての地位を確立しています。「地方創生2・0」の実現に向けて地域に根差したケーブルテレビ事業者におかれましては地域メディアの強みを最大限生かしていただいて地域経済社会のキイプレーヤーとしてますます活躍されることを期待しています。
議事は▽報告事項 2024年度事業報告の件▽第1号議案 2024年度決算承認の件▽第2号議案 定款変更の件▽第3号議案 役員改選の件で、事業報告の件で各委員会から委員長から活動内容が発表された。
村田太一専務理事が事業報告のポイントを次のように述べた。
取り巻く情勢などでは、コロナ禍で激変した我々の生活は、2023年5月の新型コロナウイルス5類移行後もコロナ前に戻ることなくテレワーク、オンライン会議、各種オンライン申請が新しい一般化すると、新しい生活様式として定着した。様々な行動制限が解かれ経済活動が活性化するなかでも高速インターネットサービスの需要は堅調に推移している。しかしながら視聴環境の変化による多チャンネル離れ、通信サービス分野における競争の激化、工事価格の上昇などケーブルテレビ業界を取り巻く環境は一層厳しくなっている。一方、わが国が抱える少子高齢化、人口減少、あらゆる分野のデジタル化の遅れなどの課題は解消されることなく深刻さは増している。能登半島地震の発災をきっかけに、その復旧を求める強い声からケーブルテレビの役割の重要性が再認識された一方で、被災地への支援とともに、緊急時の対応に資する平時における事業の在り方を検討することの必要性も喫緊の課題だ。地域課題の解決に向けて我々ケーブルテレビ業界が果たすべき使命が問われている。
次に主な取り組みについて。業界としての社会的役割の遂行、信用力の向上に向けた取り組みでは、コンプライアンス重視による信用力向上、著作権等適正な権利処理の徹底、サイバーセキュリティ対策、重要インフラの防護活動の推進、個人情報保護法への対応、固定ブロードバンドサービスのユニバーサル制度についてなど取り組んでいる。また、業界の利益確保・プレゼンス向上及び情報共有に向けた取り組み、ケーブルテレビ業界の競争力強化への取り組みを行った。
(主な委員会の活動報告は別掲)
①戦略推進委員会
【2024年度事業報告】
◇『2030ケーブルビジョン』の実践を推進、業界共通アイテムの対応、実践▽『2030ケーブルビジョン』第3版の作成▽経営者塾2024→各社の経営を担う人材、業界を牽引する人材の育成、ネットワーキング▽ケーブルコンベンション2024→2030ゼネラルセッション▽各支部への『2030ケーブルビジョン』浸透施策→支部毎にテーマをカスタマイズして実施◇業界戦略としてフォーカスすべき中長期重要テーマの選定、戦略検討等▽委員会に跨るクロステーマ、重要な戦略テーマ等について議論▽中長期重要テーマ→令和8年度(2026年度)予算概算要求への要望。「業界の災害対応」検討開始◇「産業としてのブランディング」推進
【2025年活動方針】
◇(現在の)業界重要テーマ、委員会を跨るクロステーマなどの検討、戦略立案、推進▽「災害の備えの検討」「地域ビジネス等新規事業拡大と業界内連携の検討」「人手不足解消に向けた具体的施策の検討」を重点課題として検討▽委員会連携対応の強化、委員会を超えた足元の重要課題対応▽(将来の)業界戦略としてフォーカスすべき、中長期重要テーマの選定、戦略検討▽連盟活動の総点検▽未来志向で、より業界成長に徹する活動への注力▽『2030ケーブルビジョン』の実践を推進、業界共通アイテムの対応検討、実践▽各支部や県協議会などの地域ニーズに応じた細やかな対応→各社実践へ▽業界外の有識者対応、関連団体間の連携、パートナーシップの推進▽業界としての発信力強化~「産業としてのブランディング」推進
②ID利活用推進タスクフォース
【2024年度事業報告】
◇マイページ利用拡大・機能拡充▽身近なIDと管理しやすい環境について全国説明会を実施→テーマ「お客様と社員の双方にメリットのある業務DXについて」参加事業者95社201名▽ID連携共通部分におけるSMS改修について全国説明会を実施→主要SMS3ベンダーと協議を行い、多くに事業者が共通で利用できる仕様を整理▽ケーブルIDPF導入件数→2023年度106社319万ID→2024年度107社335万ID(1社16万ID増加)▽SMS担当者間の強力体制の構築▽SMS毎に担当者同士の交流の場を提供、課題や運用におけるベストプラクティスを共有▽ケーブルIDPFと連携する新規サービスプロバイダーの発掘▽サービスプロバイダーとの連携について検討を実施
③地域ビジネス推進タスクフォース
【2024年度事業報告】
◇BtoB・BtoG・BtoC先進事例説明会(9回開催)▽『2030ケーブルビジョン』の地域ビジネステーマに関わる各社の実践推進、業界内の取り組み、すそ野拡大。参加者数229社(対前年+19社)、申込ID数1532件(対前年+332件)(いずれも重複除き)▽地域ビジネス戦略2025」作成▽2年前のTF活動のアウトプットとして、地域ビジネスの実践につながりそうな情報をまとめ▽業界内の事業者ソリューションの横展開▽地方自治体との「データ連携基盤と地域データの利活用」にフォーカス▽先行事業者とソリューションパートナー社との提言を受け、この指とまれ方式で、広域横展開へ▽業界内各社の地域ビジネス事例の紹介と議論・検討→「to Gビジネスのアプローチ」、「to Cビジネス展開」、「防犯カメラ」等々▽外部パートナーとのパートナーシップ推進▽パートナー候補と、協業モデル、提携可能性等を検討へ▽有力なフォーカステーマの絞り込み、戦略と展開を検討
【2025年活動方針】
◇『地域サービス・ビジネス』の実践推進→〝広く〟業界の推進力向上(多様なケース深堀によるビジネス視点共有、自社点検、実践のサイクル)▽引き続き「BGC先進事例説明会」の各月開催を重ね、実践社数の拡大▽業界内ユースケースや知見のアーカイブ化、ナレッジ共有の周知、AIの利活用◇〝深く〟各社の実践をハンズオンで支援▽内外関連情報の提供による実践推進の後押し、マッチング、自治体プレゼンなど▽「この指とまれ」スタイルで、先行実践者&意志ある事業者のプロジェクト化、自走化▽〝共創〟業界外とのパートナーシップによる協業事案創出▽委員会活動から業界内の仲間づくり、スケール化を志向◇地域ビジネスに乗り出すケーブルテレビ事業者の裾野拡大▽2年間のタスクフォースでの検討も踏まえ、「地域ビジネス戦略2025」を発表。より多くのケーブルテレビ事業者が地域ビジネスに乗り出し、業界としての大きなうねりとしていくことを期待
全文は6月20日(金)付け4、5面に掲載
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
最新の投稿
CATV2025.06.24日本ケーブルラボが第16回定時社員総会 (7)
CATV2025.06.24日本ケーブルラボが第16回定時社員総会(6)
CATV2025.06.24日本ケーブルラボが第16回定時社員総会(5)
CATV2025.06.24日本ケーブルラボが第16回定時社員総会(4)