ケーブルラボの生成AI活用とは
一般社団法人日本ケーブルラボ(東京都中央区、松本修一理事長)は、日本ケーブルラボ内で記者説明会を開催した。2025年度活動概説、25年度期末に向けた活動トピックスについて宇佐見正士専務理事、杉野勲主席研究員が会見した。
日本ケーブルラボの25年度内発行予定の技術文書は次の9点である(文書名称〈成果物〉、関連プロジェクトの順に記載)。
▽放送のIP化に関わるガイドライン、ガイドラインの理解促進(追加事項反映)▽調査報告書、Wi―Fiセンシング サービス・技術動向調査▽同、コミチャンアーカイブへのAIタグ付け技術調査▽同、サイバーセキュリティ関連情報の提供及び共有▽同、コンテンツ制作への生成AIの活用▽運用仕様書(改定版)、Wi―Fiの品質改善と可視化技術活用の検討(DOC―106等)▽宅内Wi―Fi保守ガイドライン、同(Part2)▽調査報告書、VPPによる新規ビジネスとしての可能性調査▽導入手引書、ケーブルGIS(地図情報連携)。
続いてこの中からピックアップして説明した。
『Wi―Fiセンシング サービス・技術動向調査』の背景・ニーズは次の通り。
Wi―Fiセンシングは、Wi―Fi電波を用いて人の動きを検知する技術で、「IEEE802・11bf」としての標準化が進められている。監視カメラと異なり、広範なセンサエリア、プライバシーへの配慮などを特徴とし、高齢者見守り、防犯などのニーズは今後も高まり、同技術の活用が期待される。ここでの目的は、新たなケーブル事業者のサービスとしての可能性を調査することだ。具体的には、物体により複数の電波経路が生じ、アンテナやサブチャネルごとに受信状態が異なる(伝送路歪み)。これに対処するため、アンテナごと・サブチャネルごとの受信状態を一定の時間間隔で測定する。
宇佐見専務理事は「Wi―Fiをアクセス手段としてではなくて、その信号を処理することによって、そこに人がいるのかいないのか、モノが動いたのか動かないのかという、センシングにも使えるという技術動向調査に取り組んでいる。Wi―Fiで使われている2.4GHz、5GHz、6GHz帯の電波の波が障害物にぶつかると反射したり散乱したりする。人間は電波にとっては障害物にあたるので、人が部屋の中で動いたりすると、Wi―Fiの電波の状態は少し変わる。その変わることで人が動いたと検知したとすれば、Wi―Fiの電波を見ているだけで、人が居るか居ないかわかる。例えば独居宅にそういうのを設置しておくと、しっかり動いているか、センサーにもなるというサービスの調査である。高度化すると睡眠の状態までわかる。呼吸時の胸の動きを検出し睡眠の質までわかるものもある」と述べた。
次に『コンテンツ制作への生成AIの活用』を説明した。これは、ケーブルテレビ事業者におけるコンテンツ制作でのAI活用を網羅的に調査し、各ワークフロー(コンテンツ企画→プリプロダクション→プロダクション(制作・撮影)→ポストプロダクション→コンテンツ配信アーカイブ)におけるAI活用による効果を評価する。
「これは、コミュニティチャンネルなどの映像系で、アナウンサーがニュースをしゃべったり、あるいは地域の取材をしてそれをコンテンツにするところで、今の生成AIツールを使うと、コンテンツの企画もAIでできる。基本的な映像があると、自動的にAIがそれらしいストーリーに合わせた映像にして、かつ編集・配信までAIでできてしまう。AIアナウンサーも出てきた時代となって、現在使えるAIツールを網羅的に調査している。ケーブルテレビ事業者の協力で、制作部門に使ってもらい評価してもらっている」(同)。
次に『ケーブルGIS(地図情報連携)』について。GISとは、地理的位置に関する情報を収集、管理、分析し、地図上に視覚的に表示するシステム技術のこと。ケーブルGISプロジェクトでは『無料データで手軽に始める、街の課題解決シミュレータ』としており、特長は1、軽量・高速な描画2、導入コストを最小化3、ハイパーレイヤリング。
1は、OSS「SVGMap」を採用。Webブラウザ標準技術で動作し、モバイル端末でも複雑な地図情報を軽快に可視化する。2は、ライセンス費用ゼロ。巨大なデータベースを必要としない分散型アーキテクチャにより、手軽にGIS運用を開始できる。3は、自社設備と国・自治体のオープンデータを即座に重畳。専門知識不要で街の課題を鮮明に可視化する。
具体的には、地図(オープンライセンス)やケーブルテレビ事業会社の線路・設備データ、国土交通省ハザードマップポータルサイト、気象庁公開情報などを取り込んで表示する。
このシミュレータによって▽災害リスク低減:ハザードマップと重要インフラを重ね、ルート選定や被災評価をリアルタイムに実行▽安全・安心な街づくり:獣害目撃情報やライブカメラ映像の統合による迅速な状況把握▽データ駆動マーケティング:地域の統計データと加入者情報の可視化による精緻な分析―などで貢献する考えだ。
ロードマップをみると、26年3月、「ケーブルGIS導入ガイド」を発行する予定。そしてGIS活用アイデアやユースケースの共有、事業者間の共有(横連携)を図る。
「地図情報を活用してサービスに使っていこうと、ケーブル版をラボで構築中だ。オープンの地図データの上に例えば自社線路設備データを重ね合わせると、自社設備の管理ができる。その上で国土交通省のハザードマップを重ね合わせると、どの辺が浸水する危険があるか、地震でも弱いところがわかる。リアルタイムで何が起こっているかがわかって、災害対応、あるいは設備対応、監視計画等に使える」(同)。
このほか『EPON相互接続推進のための仕様改定および機器認定』を紹介した。EPON機器の業界価格競争力の確保、サプライチェーンリスクの回避であり、ラボ仕様書で「マルチベンダ機器でのOLT―ONU相互接続性の実現」を示した。ラボ認定として「適合性確認による10G―EPONの接続性の明示」を行った。
なお、日本ケーブルラボはAI特別委員会を立ち上げており、そこでの26年度計画案も説明した。「業界全体であらゆる点からAI技術の〝目利き〟をしようと動いている。5つのタスクチームで、各ケーブルテレビ事業者の方にそれぞれ関心の高いところにに入ってもらい活動を行っている」(同)。
続いて「Wi―Fi HaLow×AIで地域課題対策」の取り組みを紹介した。
「自前インフラで届かないエリアをランニングコスト不要のWi―Fi HaLowで行い、高画質の様々な映像を生成AIによる画像認識する。例えば駐車場管理や鳥獣害対策、津波監視が利用用途」(同)。具体例として三重県いなべ市で実証実験をしている「Wi―Fi 7/Wi―Fi HaLowとLiDARセンサー、カメラ、Edge AIを活用した撃退機能付き害獣検知システムの実現」の実証内容を挙げた。実施体制は日本ケーブルラボ、CCJ、シー・ティー・ワイ、DXアンテナ、来栖川電算、いなべ市。LiDARセンサー、カメラ及びEdge AIによる常時監視と既存通報システムとのリアルタイム連携で、音や光による撃退効果を検証している。
この記事を書いた記者
- 元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。
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