2025年8月8日(7844号)

 大林組(東京都港区)は、建物建設現場における熱中症対策の一環として、施工済みダクトに大型仮設空調機を接続させた仮設空調システム「建設現場〝涼人〟(りょうじん)プロジェクト」を構築し、7月上旬に東京都中央区日本橋のオフィスビル新築工事に適用した。技能労働者の作業環境改善を目的に、完成建物の空調稼働前に全館空調を行う取り組みは建設業界初の試み

▼2025年6月に改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症の重篤化を防止するため「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務付けられ、高温環境下での熱中症対策の強化が求められるようになった。建物の新築工事において、構造部分が組み上がり、外壁などが取り付けられた建物内部の環境は、外気から遮断された状態で日射の影響を受け、夏場は高温・多湿となり、屋内作業の熱中症リスクが高まる

▼大林組は従前より建設作業における熱中症から守るため、ファン付き作業服や深部体温の上昇を検知・警告を発するリストバンド型デバイスの装備を現場入場の条件とするなど独自の作業ルールを設け、重篤化を防ぐための環境改善に取り組んでいる。しかしながら昨今の気候変動による猛暑日の増加を受け、高温多湿な作業環境では追加対策が必要と判断し、建物全体を空調により冷却するプロジェクトの試行を開始した

▼地上に大型の仮設空調機(高圧ファン型モービルクーラー)を設置し、竣工後空調に用いるダクトに接続して各階へつなぐ仕組み。ダクトを活用した熱中症対策をぜひ普及してほしい。(T)

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田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。