NHK大阪放送局 連続テレビ小説「ばけばけ」 作者・ふじきみつ彦氏が作品に込めた思いを語る
「第5週からは平和なシーンが多くなります」
NHK大阪放送局は10月20日、現在放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」の作者・ふじきみつ彦氏の取材会をリモートで実施した。
連続テレビ小説第113作「ばけばけ」は、明治時代の島根・松江を舞台に、没落士族の娘・松野トキ(髙石あかり)と、外国人の夫・ヘブン(トミー・バストウ)が、日本独自の文化「怪談」を愛しながら貧しい生活をたくましく生きる夫婦の物語。実在の人物である作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と妻・小泉セツの生涯をモデルにしているが、大胆に再構成されたフィクションとして描かれている。
原作のないオリジナルストーリーで、脚本を手掛けているのは、NHKのドラマ「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」や「褒めるひと 褒められるひと」を手がけたふじきみつ彦氏。日常のささやかな出来事を丁寧に描き、登場人物たちの何気ない会話の中にクスッと笑えるユーモアと温かさをにじませる作風で知られ、リアリティのある空気感や人間味あふれる表現が持ち味とされている。
今回の「ばけばけ」でも脚本家発表時、本作について「何も起きない物語」と宣言し、「光でも影でもない部分に光を当てる朝ドラを書いてみたい。今回のモデルである小泉セツさんのことを知ってそういう考えに至りました。セツさんは特別なことを成し遂げたり、とてつもない夢をかなえたりした人ではありません。少し変わった、しかし何げない日常を送った、言ってみれば普通の人かもしれません。だけど、だからこそいとおしいのです」とコメントした。

今回の「ばけばけ」は、1話15分が全125回と放送回は膨大な数。ふじき氏にとってはこれまで体験してきた連続ドラマをはるかに超える量となる。「大変だろうな、とは思いましたが、引き受けたからには、ちゃんとやろうと。ただ、自分は先を見通して書けないタイプ。コロコロ変わるので、制作統括やスタッフと相談しながら書き進めています。ですので、この物語の最後がどうなるかはまだはっきり見えていません。でも悲しい感じでは終わりたくないないですね」と話す。
実生活では、幼い子どもを持つ父親で、保育園への送り迎えをしながら仕事に取り組んでいるそう。「子育ての時間と執筆時間ははっきり分けています。書くこと自体は好きなので、今は苦しいとか、そういうことは全くないです」

現在は第22週を執筆中とのこと。これまでを振り返り、「ヘブンさんが登場する第5週まではトキさんの生い立ちを中心に描いたので、かなり波乱万丈のストーリーになりましたが、ヘブンさんと出会ってからは、平和なシーンが多くなります。ヘブンさんは『怪談』を書いた小泉八雲がモデルなので本作も“偉人とその妻”として描く方法もあるのでしょうが、そうではなく、僕は普通の日々にスポットライトを当てることに力を入れていきたい。今後、『怪談』が重要な要素として出てくると思われているかもしれませんが、見ている方が思っているよりは出てこないと思います」という。その代わりに「隙を見て、どうでもいい話をちょいちょい入れていきたいですね」と、この人らしい野望を明かした。

第5週以降はトキとヘブンを中心に物語が展開していく。「トキさんとヘブンさんが夫婦になるまでをじっくり書いています。その中で、貧しいけれど平和な家族の時間が流れていきます。ヘブンさんは初めて日本に来て怖かったと思うし、トキさんも全く初めて出会う“異人”が怖かったと思う。でも、自分とは全く違う価値観を持った人と向き合い、関わっていくことで、人は心を開き、歩み寄ることができる。そんな姿を『ばけばけ』で描いていきたいです。」と話し、最後に「ヘブンさんが松江に来る第5週からは、がらっと雰囲気が変わります。彼がいろいろとひっかきまわすので、そこを期待していただきたいです。また、新たな人物が増えてくるので、そこも楽しんでいただければ」とメッセージを送った。
この記事を書いた記者
- テレビ・ラジオ番組の紹介、会見記事、オーディオ製品、アマチュア無線などを担当



