
ソニー、国際放送機器展「IBC 2025」に出展~放送局や幅広い分野のコンテンツクリエイターと共に、未来のエンタテインメントを共創する最新のソリューションや商品群を展示
ソニーは、オランダ・アムステルダムで現地時間9月12日(金)から開催される国際放送機器展「IBC(International Broadcasting Convention)2025」に出展します(ホール13、ブース番号:13.A10)。「Creativity Connected(クリエイティビティ コネクテッド)」の展示テーマのもと、「ニュース制作」、「ライブ制作」、「多様な映像制作」の3つのテーマで最新の機器やソリューションを展示します。
「ニュース制作」では、報道現場の運用性向上に加え、信頼性のあるニュース制作を実現するXDCAMメモリーカムコーダー『PXW-Z300』などを活用した新たなワークフローを紹介します。「ライブ制作」では、効率的なライブ制作を実現する「Networked Live(ネットワークド ライブ)」をさらに進化させるマルチパーパスカメラとカメラエクステンションアダプターの新製品などを展示します。加えて「多様な映像制作」では、バーチャルプロダクションを含む空間コンテンツ制作や、『FX2』など最新のCinema Line カメラやソフトウェアアップデートを紹介します。
ソニーは、これらの商品やソリューションを用いて、進化し続ける映像制作ワークフローを提案するとともに、信頼性のある創造的な映像表現を実現し、放送局、コンテンツクリエイターとともに未来のエンタテインメントを共創します。
主な展示内容および各商品・ソリューション概要
1. 報道取材、映像制作現場での運用性向上や信頼性のある報道を支えるワークフローの進化
XDCAMメモリーカムコーダー 『PXW-Z300』
『PXW-Z300』(2025年7月発表)は、1/2型 4K 3板式CMOSイメージセンサーExmor R(エクスモアアール)と、最新の画像処理エンジンBIONZ XR(ビオンズ エックスアール)に加えて、AI処理専用のプロセッシングユニットを搭載した、XDCAMハンディカムコーダーのフラッグシップモデルです。本機は、カムコーダーとして世界で初めて、真正性情報を記録する C2PA規格に対応し、動画に電子署名を付与して記録することが可能です。静止画で対応してきた真正性への取り組みを動画にも拡大することで、近年報道機関から求められるコンテンツ信頼性向上のニーズに応えます。
『PXW-Z300』などと連携し、即時的な映像伝送ワークフローを実現する『LiveU TX1』
映像伝送機器メーカーとの協業の一環として、LiveU社がソニーとのパートナーシップに基づき共同開発し、2026年に商品化を予定している小型のデータトランスミッター『LiveU TX1』を参考出展します。本機は、複数の回線を同時に使用することで伝送速度を向上させる「ボンディング伝送」や、カメラにUSB接続するだけで自動的にファイル転送が始まる機能に対応しています。これらにより、撮影現場から直接ファイルを伝送する、より即時的な映像制作ワークフローの実現をサポートします。USB接続に加え、SDI接続も予定されており、幅広いカムコーダーでの活用が可能になります。ソニーは、高速・低遅延映像伝送を実現する5G対応ポータブルデータトランスミッター『PDT-FP1』の活用や、様々なパートナーとの連携を通じ、幅広い映像伝送ワークフローをお客様に提案していきます。
クラウド制作プラットフォーム「Creators’ Cloud(クリエイターズ クラウド)」
「Creators’ Cloud」は、クラウド技術と多様なカメラ、通信技術、AI、メタデータなどを組み合わせることで、新たな映像表現や効率的な制作を実現する様々なサービスを提供します。法人向けのサービスでは、C3PortalやCi Media Cloudの最新のソリューション展示を行います。C3 Portalは、収録メディアを使わずにカメラやスマートフォンで撮影した映像を「Creators’ App for Enterprise」で直接クラウドに伝送するサービスです。今回初展示の『PXW-Z300』などのカムコーダーとの親和性をさらに強化し、トランスミッターとの組み合わせでさらに安定的に高画質映像を伝送し、ニュースコンテンツの即時制作に貢献します。Ci Media Cloudは、メタデータを通じて報道機関が映像の出所を確認できるようにする、C2PA規格に準拠した電子署名情報表示への対応を行います。この他、クリエイターの映像制作をサポートする「Monitor & Control」や「Catalyst Prepare」「Catalyst Prepare Plugin」など個人向け「Creators’ Cloud」で提供するアプリの最新バージョンを展示します。
2. 効率的なライブ制作を実現する「Networked Live」向けのカメラやソリューションの拡充
最新ニーズに対応したシステムカメラソリューションの強化
近年スポーツ中継では、撮影場所の制約から省スペースでの運用ニーズが高まっています。マルチパーパスカメラ『HDC-P50A』は、そのニーズに対応した小型で軽量なシステムカメラです。放送業界での採用が進むSMPTE ST 2110でのIP伝送にカメラ単体で対応するほか、カメラコントロールユニットとの接続も可能なため、カメラの設置場所とコントロールルームが離れた撮影環境でも柔軟な運用が可能です。2025年9月に対応予定のアップデートにより、カメラコントロールユニットと接続することなく、カメラ単体で4K 2倍速のハイフレームレート撮影が可能となります。
また、カメラエクステンションアダプター『HDCE-500』を発売します(2026年3月予定)。本機は、システムカメラHDC-5000シリーズ、HDC-3000シリーズ、『HDC-P50A』に対応します。カメラとカメラコントロールユニットの間に接続することで、カメラ本体に電源を供給するとともに、光ファイバーからシングルモードファイバーに変換することで、最長10 kmの伝送が可能となります。『HDC-P50A』との接続時は、1本のSMPTEケーブルで電源供給、映像信号の伝送が可能で、より柔軟な運用ができるようになります。
Networked Live
「Networked Live」は、オンプレミス/クラウドの環境を選ばず、制作機器や人などのリソースをハイブリッドに活用することで、より効率的なライブ制作を実現するソリューションです。会場では、効率的なライブ制作やリモート制作をサポートする製品およびソリューション群を展示します。
メディアオーケストレーションプラットフォーム「VideoIPath(ビデオアイパス)」においては、各種新機能の紹介とともに、ソフトウェアスイッチャー『M2L-X』やHawk-Eye Innovations(以下、ホークアイ)と連携したオンプレミスとクラウドを統合したオーケストレーション機能をデモ展示します。ソフトウェアベース IPメディアノード「Virtuoso(バーチュオーソ)」は、新たにSRT/HEVC伝送に対応します(2025年12月対応予定)。オンプレミスとクラウドの接続性を高め、より実践的なクラウドライブシステムの構築が可能となります。また、ライブプロダクションスイッチャー『MLS-X1』においては、タリーやクロスポイントの情報を組み合わせて、自動的に操作を実行する新機能「Conditional Action」を展示します。その他、GPUの拡張性や汎用性を生かしたソフトウェアベースのライブ制作・リモート制作ソリューションの将来的な機能拡張を参考展示として紹介します。
ソニーのグループ会社であるホークアイは、HawkREPLAY(ホークアイリプレイ)、HawkNEST(ホークネスト)、ConfigureREPLAY(コンフィギュアリプレイ)を用いた放送エコシステムを展示します。これらのサービスは、ソニーの技術と統合されることで、ライブスポーツおよびイベント放送向けによりシームレスで高品質な映像づくりを支えるワークフローを提供します。IBC 2025では、ホークアイが2026年にサービス開始を予定しているHawkREPLAY in the Cloudの技術展示をします。
3. 多様な映像制作ニーズに応えるバーチャルプロダクションや空間コンテンツ制作、イメージング商品群の進化
バーチャルプロダクション(VP)や空間コンテンツ制作の最新クリエイティブツール
より効率的にVPや空間コンテンツ作成を行える最新のクリエイティブツールを展示します。『VENICE 2』など撮影用のデジタルシネマカメラ、カメラトラッキングシステム『OCELLUS』、背景映像を映し出す最新のLEDディスプレイCrystal(クリスタル) LED CAPRI(カプリ)やCrystal LED VERONA(ベローナ)に加え、プレビズ(Pre-visualization)とオンセットの制作を効率化するVirtual Production Tool Setの最新バージョン(Ver3.0)やVFX作業を効率化するツールの技術展示を行います。
またVENICEエクステンションシステムMiniと空間再現ディスプレイ『ELF-SR2』を組み合わせた3D映像制作の展示を行います。 撮影現場で立体映像を裸眼で即座に確認できることで、シーンの奥行きや被写体の立体感を正確に把握することができ、高品質な3D映像表現や制作効率の改善が可能です。
・Virtual Production Tool Set Ver3.0
バーチャルプロダクションの映像制作ワークフローを効率化するVirtual Production Tool Setの最新バージョン(Ver3.0)を2025年冬以降に無償で提供開始します。Ver3.0では、Camera and Display PluginにCrystal LED向けの視野角色補正や高速レイトレーシング機能を新たに搭載します。また、Color Calibratorでは他社製カメラのキャリブレーションに対応する他、2Dプレート映像にも適用可能なLUT作成機能も追加します。
・VFXのワークフローを効率化する技術展示
カメラトラッキングシステム『OCELLUS』で記録したデータを活用することで、ポストプロダクションで行うマッチムーブ作業※4を効率化するツールの技術展示を行います。
最新のCinema Line カメラとソフトウェアアップデート
『FX2』など最新のCinema Lineカメラの展示に加え、クリエイターのワークフローの選択肢を広げる最新のソフトウェアアップデートを紹介します。『FX3』『FX30』は、
最新ソフトウェアアップデート
により、本機とHDMI 接続したBlackmagic Design社のRAWレコーダー※5にRAW形式の動画が出力できるようになりました。また、Cinema Lineの旋回型カメラ『FR7』は、SMPTE RIS OSVP※6が策定した、バーチャルプロダクション向けの新たなオープンソースプロトコルであるOpenTrackIOに、2026年2月以降のソフトウェアアップデートで対応予定です。また本プロトコルに対応することで、『FR7』で、標準化された高精度なレンズデータを含むカメラトラッキングデータの送出が可能になります。OpenTrackIOに対応している他社製品や各種CGエンジンとの連携が容易になり、業界全体での互換性・拡張性が向上します。
この他、nablet社がソニーとの協業で開発した「nablet X-OCN Media Extension plug-in for macOS※7」を新たに提供開始し、本プラグインを使用することで、CineAltaカメラ『VENICE 2』と『BURANO』で記録したX-OCNフォーマットの動画が、Apple社の動画編集ソフトウェアである「Final Cut Pro for Mac」で利用可能になります。
4. 環境への取り組み
再生プラスチックを活用した展示ブース
ソニーは2050年までに環境負荷ゼロを目指す環境計画「Road to Zero」を推進しています。IBCの展示什器には、回収された医療機器や食品包装廃棄物などを含む、再生プラスチックおよびリサイクル可能なプラスチックから作られたPolygoodパネルを採用し、3年間以上の再利用を予定しています。長期使用やリサイクルを前提とした展示ブースの設計で、新たな採掘資源を減らす取り組みを推進します。
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。