NTT東日本で地域ミライ共創フォーラム2026 プレスツアーリポート

 NTT東日本は1月28日(水)、東京都調布市のNTT中央研修センターで「NTT東日本グループ地域ミライ共創フォーラム」を開催した。今年は「地域の未来を切り拓くソーシャルイノベーション人材」をテーマに、基調講演やパネルディスカッション、各種展示を通じて取り組みや研究成果等を紹介。同日開催されたプレスツアーではその取り組みの一端が公開された。

 「地域の未来を切り拓くソーシャルイノベーション人材」のテーマに合わせて設置された特別展示ブースでは、様々な分野で課題解決を目指す社員の取組を紹介していた。
 このうち、「スマートシティ長井2・0の実現に向けたデジタルツイン活用」の事例では、2020年度に実施された内閣府によるデジタル専門人材派遣制度に合わせて山形県長井市に派遣され、現在も非常勤職員として勤務するNTT東日本営業戦略推進部の小倉圭さんの取組を紹介。市民路線バスの乗降データを自動認識技術のRFIDを使って取得・分析したバス停や時刻表ダイヤの改善事例や、モーションセンサーカメラ等のデジタル機器を活用した有害鳥獣対策の事例を紹介。またドローン等の撮影データを活用したデジタルツインの展開に向けた試みが紹介された。担当する小倉さんは「グループ連携のフロントランナーとしてモデルづくりを展開していきたい」と話していた。

 NTTアグリテクノロジーの越智鉄美さんは、「陸上養殖で切り拓く未来の水産業」と題して、宮崎県都農町で取り組む陸上養殖事業を紹介。環境の変化や天然資源の枯渇により国内各地での漁獲量減少を背景に、完全閉鎖循環式陸上養殖を使ったタマカイとベニザケの養殖に向けた試みを解説した。同社のICT技術を活用して海水温や塩分濃度等、各魚種に合わせた最適な環境を構築することでベニザケは従来の2倍の成長速度に、タマカイも3倍の成長速度を達成。既にふるさと納税の返礼品としても好評という。越智さんは「生き物相手で思い通りにいかない苦労もあったが気付きを積み上げてここまで来れた。新しい産業として地域に根付かせていずれは海外に持っていきたい」と話していた。
 このほか、「ドローンパイロット育成×ICT活用を通じたDX人材の育成」として、同社での500人規模のドローンパイロット育成体系や講習や競技会を通じた育成スキーム等が紹介されていた。
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 同社の実証施設である「NTTe-City Labo」では、NTT東日本の最新の研究成果を紹介。共創フォーラムと同日発表された、All-Photonics Connect powered by IOWN を活用したキヤノン(東京都大田区)との協業事業として、ボリュメトリックビデオシステムの新たな活用シーン創出に向けた技術検証について公開した。

 キヤノンではこれまで、撮影から映像生成までをリアルタイムに行うことができるボリュメトリックビデオシステムを、スポーツ中継や音楽ライブ配信など幅広い用途で提供している。一方、NTT東日本は高速・大容量・低遅延という特徴を持つAll-Photonics Connect を2024年12月から展開し、IOWNの社会実装に向けた取り組みを進めている。
 ボリュメトリックビデオシステムは、約100台のカメラで同時に撮影した映像から空間全体を3Dデータ化する技術で、映像生成や配信の過程で大容量のデータを扱う。また、自由視点映像のカメラワークを滑らかにするためには、低遅延かつゆらぎのない通信が重要となる。こうした特性から、 All-Photonics Connect とのかけ合わせにより新たなエンターテインメントの提供がで
きると考え、協業を開始したという。
 具体的な取り組みとして、従来は撮影拠点でカメラデータ処理から視点操作・映像生成までの全ての工程を実施してきたところを、撮影拠点、映像生成拠点、視聴拠点をそれぞれ All-Photonics Connect で接続。既存回線では伝送が困難な大容量のカメラデータを伝送し、視聴拠点からの自由視点操作において映像と視点情報を遅延やゆらぎなく処理するための検証を進める。この実現により、撮影拠点に集約していた各機能を分散することができ、自由度の高いボリュメトリックビデオシステムの提供が可能となるという。
 展示デモでは、神奈川県川崎市のキヤノンスタジオとNTT中央研修センターの同施設を遠隔接続し、リアルタイムのダンスパフォーマンスを自由な視点で鑑賞できる体験や、ボクシング映像をコントローラーでカメラマンのように操作できる体験が公開された。

 「移動用モビリティによる地域課題解決実証」として、本田技研工業製の次世代モビリティ「UNI―ONE」と連携し、地域社会が抱える移動課題の解決に向けたICT活用の一環としてデジタルツインを活用したARナビゲーションの実証の取組が発表された。
 実証では、レーザー光を利用して対象物を測量するリモートセンシング技術「LiDAR」による3D点群データと画像情報を基に構築したデジタルツインと、ARナビゲーションアプリ「e-City Navi」を組み合わせて、NTTe-City Laboへの来場者の施設周遊支援を実施する。
 来場者は、座ったまま体重移動だけで操作できるハンズフリーの電動パーソナルモビリティ「UNI―ONE」に搭乗し、ARグラスを装着することで、施設内の案内ナビゲーションに加え、NTTe-City Labo の実証環境および展示ソリューションの解説や社会実装イメージをARコンテンツとして視覚的・直感的に体験できる。両手が解放されることで、コンテンツを楽しむ際の「歩きスマホ」やモビリティ乗車中の「ながらスマホ」を抑制することが可能といい、利用者の安全性向上にも期待できるとした。
 終了時期は未定とし、実証により得たノウハウやデータは地域の商業施設や観光地等の賑わい創出に活用し、集客力向上や滞在時間延長、収益増加等につなげるとしている。
 このほか、西松建設(東京都港区)と連携し、建設重機の超遠隔操作に次世代通信技術IOWNとローカル5Gを適用した事例を紹介。IOWNのオール・フォトニクス・ネットワーク(APN)とローカル5Gを活用して東京から栃木県那須塩原市にある西松建設の実験施設「N―フィールド」間約200㌔を疑似的に接続し、実際の重機を使って映像伝送遅延約100㍉/秒を実現した様子を公開した。

 また生成AIの技術を悪用したディープフェイク対策技術として、総務省主催の「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業」に採択された「電話音声フェイク検知技術の開発・実証事業」による検知アプリを紹介した。
 NTT東日本が提供しているひかり電話と検知エンジンを連携させ、着信側の電話端末から検知エンジンに通話データをタイムリーに送り込むことでAIによるなりすまし音声を検知できる仕組みで、今後は最新モデルへの対策や電話越しの音声に対する検知精度向上を目指しながら2026年中のトライアル開始を目指していくとしている。

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 第二部では、澁谷直樹代表取締役社長による基調講演やパネルディスカッション等が開催された。
 澁谷社長は、「今年のテーマは『人』。記録的な大災害、加速する人口減少と高齢化AIによる急激な技術革新、社会の分断等、私たちは予測不能な時代に立っている。この時代を切り拓くためにどのようなリーダーが必要かを考える中でこのテーマを選んだ。NTT東日本グループはかつて固定通信の会社、電話やインターネット、通信基盤を提供してきた。しかし頻発する災害や深刻な担い手不足、老朽化するインフラ等通信だけでは解決できない社会課題がたくさん出てきている。そこで私たちは、通信を提供する会社から一歩踏み出し、地域の課題を解決するソーシャルイノベーションパートナーに向かっていこうと舵を切らせていただいた」と呼び掛けた。
 グループで取り組むソーシャルイノベーションの分野として「サステナビリティ」「防災」「Well-being」「アグリ(一次産業)」「スマートインフラ」を挙げ、「これからの日本、世界を作る次世代の人材を育てていかないといけないニーズを感じる。地域の皆さんや他企業の皆さんと共に育てるために一歩踏み出したい」とあいさつした。
 医療崩壊や消滅自治体の危機といった地域課題を解決する鍵として、自ら「問いを立てる力」と「実現する力」が重要とし、次世代リーダー育成に向けてどこからでも最先端の知識を学べる通信環境の整備や、地域そのものが持つ現場を活かした学びのフィールドを展開していくとし、「私たちは現場力の会社。その上に高速なネットワークを築き、デジタルの力と通信を組み合わせて多様な社会課題を解決していくのが私たちグループの使命と考えている」と強調。具体例として、昨年12月に連携を発表した河合塾グループの広域通信制高校「ドルトンX学園高校」での取り組みにつなげた。
 続くパネルディスカッションでは、ドルトンX学園が教育モデルを参考にしたミネルバ大学のマイク・マギー学長、ドルトン東京学園の安居長敏校長に澁谷社長を交え、人材育成や教育をテーマに意見交換が実施されていた。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。