実録・戦後放送史- 電波取材に生涯を捧げた 記者・阿川秀雄の記録 -


実録・戦後放送史 第44回

「放送法の原則②」

第1部 放送民主化の夜明け(昭和25年)
次に網島長官は、NHKの性格と業務などについて次のように説明する。
 [NHKの性格]
 新しい日本放送協会は、この法律により目的が与えられ、設立される法人でありまして民法に基づいて設立される公益法人でもなければ、商法に基づいて設立される会社でもございません。
 従いまして民法または商法の規定は、当然適用されないのでございます。
 この法律によりまして社団法人日本放送協会から承継した財産を運用し、経営委員会という議決機関と、会長その他の執行機関を持つところの特殊法人であります。
この法案の第九条に、その目的を達成するに必要な業務を掲げております。
 そして他の別段の規定がない限りは、その限定された業務の範囲内だけでなければ、行為能力がないわけでございます。
 その業務につきましては、特に厳重な制限を設けまして、放送事業に関係ある事業に協会が大きな支配力を持ち、その事業の死命を制することのないように、受信機器等を認定し、無線用機器の運用業者、販売業者及び修理業者の行う業務を、規律または干渉するような行為を禁止しておりますし、また放送用受信機器の修理場所も、電波監理委員会が特に指定する場所に限ってこれを行い得るということになっております。
 [協会の業務と経営]を民主的に行うために、協会には経営委員会を置きますが、経営委員会は協会の経営方針を決定し、かつその業務の運営及びこれを指導統制するものでございまして、協会がその事業を運用いたしますには、この経営委員会の決定によらなければならないのでございます。
 経営委員会は、委員八人と会長で組織されますが、委員は両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することにしたのでございます。
 両議院の同意を得ることにしましたのは、内閣総理大臣が独自の判断で一方的に任命することのないように、また国民の代表である国会の同意によって、国民の意思が反映されるようにはからったのでございます。
 また委員を選任する場合には、放送が全国のあらゆる分野に関連する文化事業であり、公共事業でありますから、文化、科学、産業その他の分野が公平に代表されるように考慮いたしますとともに、全国を八地区にわけまして、その各地区から一人ずつ任命されるように定めてございます。
 次に会長につきましては、会長は協会の業務を執行する最高の責任者であり、対外的には協会を代表し、対内的には協会の業務を総理する地位にありますが、その権限を行使するには、経営委員会の議決に従わなければならないのでございます。
 議決機関でありまするところの経営委員会と執行機関であるところの会長との一体性を保ちつつ、協会の業務の能率的な、円滑な運営をはかりますために、経営委員会が会長を任命することにいたしまして、会長を経営委員会の構成員にしているのでございます。
 また会長は経営委員会の同意を得て、副会長及び理事を任命いたしますが、会長、副会長及び理事によって理事会を構成しまして、理事会は協会の重要業務を審議するのでございます。
        (第45回に続く)

阿川 秀雄

阿川 秀雄

1917年(大正6年)~2005年(平成17年)

昭和11年早稲田大学中退、同年3月、時事新報社入社、以後、中国新聞社、毎日新聞社等を経て通信文化新報編集局次長。昭和25年5月電波タイムス社創立。

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