実録・戦後放送史- 電波取材に生涯を捧げた 記者・阿川秀雄の記録 -


実録・戦後放送史 第117回

「テレビ標準方式で意見書①」

第3部 テレビ放送波乱の幕開け(昭和27年)

 第13回電波監理委員会聴聞「白黒式テレビジョン放送の送信の標準方式」を主宰した柴橋審理官は、昭和27年2月26日電波監理委員会に、次のような「意見書」を提出した。
〈注〉本文は速記録を原文のまま紹介するが、文中の( )の部分は筆者の傍注と感想であることをお断わりする。

[意見書]
 一、意見 
①この標準方式の適用範囲を明確にされたい
②この周波数帯幅の適否は聴聞会において行われた委員会および各当事者の主張、提出された証拠によっては、なお判定困難である。よってわが国におけるテレビジョン放送のあり方との関連において、さらに検討を加え決定するのを相当とする
③同期信号の波形については、第二図に示すものと同じ効果をもつものならば、差し支えないような表現に改めること。
 (以上が「主文」であって、この判定では6メガ、7メガのいずれがよいとは明言せず、むしろ決定には「なお検討の要がある」と指摘している)。

 最も重点事項であった「周波数帯幅」についての論議を、意見書は次のように要約している。

▽周波数帯幅について=委員会の意見は次の理由により6,000KC(6メガ)を適当とする。

①毎秒像数30、走査線数525本とし、水平解像力と垂直解像力とをほぼ等しくすると、映像周波数帯幅は4,000KC(4メガ)で十分である
②将来天然色に移る場合を考えると、通常では3倍を要するはずであるが、技術研究の進歩により実際には6メガで行える可能性が実証されている。これはアメリカ方式の理論的根拠でもある
③国際中継の便不便は5分5分である。
 (要するに委員会は「7メガにする利益、6メガを不利益とする等の合理的根拠はなく、6メガが最も有効と考えている」という主張であった)。

 これに対して日本テレビは「6メガ原案を支持し、7メガ反対の理由」を7項目掲げ、
①国際的に孤立した方式をとることは世界各国との交流の妨げになる
②7メガにしても絵の品位はたいして改善しない
③7メガでは受像機の価格が高くなる(NHKの調査でも2%高だ)
④カラーに移る場合も6メガで何ら支障はないと主張。

無線通信機械工業会は
①CCIR(国際無線通信諮問委員会)でも、1951年総会では「電源非同期」だけについて結論を出しており、バンド幅については各国の自主性を尊重するといっており、欧米各国ともそれぞれ異なる方式を考えている
②1メガ増やすことにより多少の混信妨害は認められるが、(それは)広帯域幅にするため映像の品位を増大するために発生するもので(略)受像機の周波数帯幅を圧縮すれば何らの支障もない
③アメリカとの番組交流についても、映像信号を4,500KCに制限して搬送し、音声はそのまま搬送波に乗せて送れば何らの支障はない
④将来カラーに移る場合をも考慮すると、周波数を広げておくことが第一条件である。
(第118回に続く)

阿川 秀雄

阿川 秀雄

1917年(大正6年)~2005年(平成17年)

昭和11年早稲田大学中退、同年3月、時事新報社入社、以後、中国新聞社、毎日新聞社等を経て通信文化新報編集局次長。昭和25年5月電波タイムス社創立。

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