
NTTが2024年度第3四半期決算発表
NTTは2月7日、2024年度第3四半期決算を発表した。売上高にあたる営業収益は、対前年比3・4%増の10兆497億円、営業利益は同5・9%減の1兆3992億円で増収減益となった。営業収益は第3四半期としては過去最高を記録した一方で、モバイル事業や固定通信事業における収益減や、NTTドコモの顧客基盤強化に向けた施策展開などが利益を圧迫した。島田明社長は「年間の利益計画達成は厳しいものとなっているが、各社の増益努力によって最大限のリカバリーを図っていく」と述べた。
営業収益は過去最高を更新。データグループにおける国内外の増収やドコモにおけるスマートライフ事業の増収などにより対前年3329億円の増収の10兆497億円で、このうち為替影響は約1250億円だった。
営業利益はデータグループの増益やスマートライフ事業の拡大があったが、モバイル、固定における通信サービス収入の減やドコモにおける顧客基盤強化に向けた施策展開に加え、前年度のノンコア資産のスリム化による反動等により、870億円減益の1兆3992億円となった。販売強化の取り組みによって、光サービスの純増数は前年比で増加。MNPも着実に成果が出ているとした。
当期利益は、営業利益の減に加えて前年度の株式売却益の反動等によって、対前年度1604億円減益(15・9%減)の8507億円となった。税引前利益に支払利息、減価償却費を加えたEBITDAは、営業利益の減益等により、対前年比192億円減(0・7%減)の2兆5525億円だった。
セグメント別では、総合ICT事業セグメントはモバイル通信サービス収入の減はあったが、スマートライフ事業における金融決済を中心とした成長等により、対前年増収。スマートライフ事業の増収はあったが、顧客基盤強化に向けた施策展開により対前年減益となった。年間計画達成は厳しい状況となっているが、顧客基盤強化やネットワークの品質向上を着実に実行しつつ、さらなるコスト削減等あらゆる対策を講じて最大限のリカバリーに取り組む。
地域推進事業セグメントは、ネットワーク収入の減に加えて、前年度に実施したノンコア資産スリム化影響の反動で対前年減収減益。光サービスの純増数は10ギガプランやマンション向けの全戸一括プランの販売強化により、対前年比増加となった。
島田社長は「収益利益共に想定通りの進捗であり、中期的な成長に向けて事業の選択と集中や、オペレーション業務改革等の抜本的なコスト構造の見直しに積極的に取り組む」とした。
グローバル・ソリューション事業セグメントは、日本における公共金融法人分野の増収や為替の影響により対前年増収となった。国内での増益や、海外におけるデータセンター事業の増益が影響した。
その他(不動産、エネルギー等)のセグメントは、アーバンソリューションズにおけるデータセンターエンジニアリングの拡大に伴い対前年増収。増収に伴う増益はあったが、物件売却益の減等により、利益は前年並みとなった。
このほか地域活性化・街づくりの取り組みとして、大阪・関西万博開催に合わせて、大阪周辺にホテル「パティーナ大阪」や公園「難波宮跡公園」、商業施設「なにのわ」や、京都周辺に文化施設「宮川町歌舞練場」といった文化施設やアリーナ等を今年春から夏にかけて順次開業し、周辺地域の活性化と万博後の街づくりに貢献していくとした。
またインド・ムンバイで3月17日(月)に「NTT DATA Leadership Event」を開催し、インド国内のデータセンター(DC)事業やIOWN APN接続、インドとシンガポール、マレーシアの海底間ケーブル「MIST」の接続開始といったDC関連事業強化を図るとした。
3月にバルセロナで開催されるMWC(Mobile World Congress)では、NTTグループの宇宙ビジネス戦略や生成AIを活用したネットワーク運用ソリューション等について出展。また、「IOWN Global Forum」として、ソリューション展示やセッション等を予定していることを報告した。
昨年11月以降の中期経営戦略の進捗については、次の通り報告した。
「IOWNによる新たな価値創造」:▽世界最高水準となる最大800Gbpsのユーザー拠点間帯域保証型通信サービス「All―Photonics Connect powered by IOWN」の提供開始(NTT東西・12月)▽国連標準化機関ITU―T CxOラウンドテーブル会議においてIOWNを活用した大規模AIインフラの基本方針を合意(NTT・12月)
「データ・ドリブンによる新たな価値創造」:▽世界に先駆けて光方式の量子計算プラットフォームを実現(NTT・11月、1月)▽Google Cloudを活用したサービスを提供するインドNiveus Solutions社の買収(NTTデータ・11月)▽国内初、リルズ社と目視での建物点検をAIで代替する共同検証を開始(NTTファシリティーズ・12月)▽ドコモ独自の顧客理解AI エンジン「docomo Sense」を活用し、マーケティングのさまざまなニーズに合わせたプロファイリングデータを提供開始(NTTドコモ・1月)
「循環型社会の実現」:▽循環式陸上養殖システムの研究/開発/提供を行う「NTTアクア」の事業開始(NTTコム・12月)▽日本最大級のエビ生産陸上養殖プラント(静岡県磐田市)が竣工・生産開始(NTTグリーン&フード・12月)▽バイオマスレジンHD、パソナグループとの持続可能な農業の推進と脱炭素社会の実現に向けた新たな取り組みを開始(NTTコム・12月)
「事業基盤の更なる強靭化」:▽大規模災害発生時のネットワーク早期復旧に向けた通信事業者間の協力体制の強化(NTT、NTTドコモ、NTTコム、NTT東西・12月、1月)
「お客さま体験(CX)を重視したサービスの強化」:▽「d払い」にネットワークへ接続していなくても支払いが可能な機能を追加(NTTドコモ・1月)
「自律的なキャリア形成への支援強化」:▽職場のLGBTQ+に関する取組評価「PRIDE指標」で9年連続ゴールド受賞(NTT及びNTTグループ22社・11月)
続く質疑応答で、中国版ChatGPTと呼ばれるディープシーク(DeepSeek)や、ソフトバンクグループが米オープンAI社と共に取り組む企業用AI「クリスタル・インテリジェンス」について意見を問われた島田社長は、「LLM(大規模言語モデル)を自ら提供する企業として、どういう機能がありどういう特徴があるか調べる必要がある。色々なモデルが出ているが、負けないようなものを作っていかないといけない。具体的な中身の説明を見ながら対応を考えていく。『tsuzumi』については顧客の要望に沿って進化させていく。超軽量型サービスとして開発しているが、パラメータを増やして欲しいという要望もあるので年内に新しいサービスを出していきたい」と話していた。
この記事を書いた記者
- 主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。
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