
第八回羽倉賞受賞記念講演会を開催、表技協
一般社団法人最先端表現技術利用推進協会(長谷川章会長、表技協)は5月13日、「表技協シンポジウム―第8回羽倉賞受賞記念講演会」を東京都港区のフォーラムエイト本社で開催した。昨年11月に表彰式が開催された第8回羽倉賞の各受賞者がそれぞれの作品と経緯について講演した。
羽倉賞は、表技協の創設者の1人でもある故・羽倉弘之氏の功績を称え、2017年に創設。最先端技術を使った研究や取り組みなど幅広い分野の作品を募集し、表彰している。今年度の第9回羽倉賞は7月1日から作品募集を開始し、10月1日まで応募を受け付ける。審査を経て11月21日に品川インターシティホールで表彰式を開催する予定。
講演会では冒頭、表技協理事長でフォーラムエイト社長の伊藤裕二氏があいさつし、「新しい技術や取り組みをウォッチして色んな分野で使ってもらおうと取り組んでいる。受賞を通じてビジネスや協力関係のチャンスも生まれてくる。スポンサーとして今後も活動を支援していきたい」と話した。
第8回羽倉賞では、応募のあった18作品から奨励賞に5作品、優秀賞に2作品、フォーラムエイトDKFFORUM賞に1作品、最優秀賞に当たる羽倉賞に1作品を選定。映像作品や調理器具、3次元表現など幅広いジャンルの作品が集まった。
奨励賞を受賞した「Chronospoon:時を操る調味食器」は、味の味覚変化、特に熟成課程をセンサで測定し、味物質の添加量を数式としてモデル化することで、食品の味の時間変化を操れるようにしてまるで食べ物の時間を早送り、巻き戻ししたかのような体験を味わえるスプーン状の作品。研究を手掛けた明治大学総合数理学部の宮下芳明専任教授は「フードロスの解消に役立てたい」と話していた。
優秀賞の「光源アレーを用いた3次元ディスプレー」は、視点位置に応じて自然な3次元(3D)映像を表示する技術の研究。電気的に切り替え可能な光源アレーを用いることで、好みに応じて3Dと2Dの映像を選択して視聴できるディスプレーを開発した。ディスプレーを見る視聴者は、3D/2D表示モードや海の生き物等のコンテンツをボタン一つで簡単に切り替えることができる。NHK放送技術研究所の岡市直人氏が説明し、今月開催予定のNHK技研公開でも展示予定と紹介した。
「フォーラムエイトDKFORUM賞」を受賞した「デジタル能舞in高台寺2024」は、北政所「ねね」の400年遠忌記念として太閤秀吉公に京都を代表する寺院の一つで、ゆかりある高台寺で太閤能を奉納。高台寺の方丈前庭と開山堂前で、プロジェクションマッピングと能舞とを融合した表現で、全国で初めての開催事例という。発表したDroots社長の土井大輔氏は、「デジタルと本物を見比べることで本物の良さが引き立つ。新しい技術を活用して歴史的遺産を組み込み、観光導線や普及啓発につなげたい」と話した。
羽倉賞を受賞した「Spot Shadow:インタラクティブな空間デザインに向けた影の操作を可能にするシステム」は、室内の照明環境を「光」ではなく「影」の制御を使って実現するための技術開発事例。室内の任意の位置に任意の大きさや形の影を生成できる装置で、影を赤外線LEDやジョイスティックにより操作できるコントローラーも紹介した。研究を担当する東京都立大学の阪口紗季氏は、「今後は新しい体験に対してどんなコントローラーが適当かを使ってもらいながら評価していきたい。影が空間デザインに有効かどうかを検証していきたい」と話していた。
最後に表技協の長谷川章会長が総括し、「日増しに映像アイデアが集中しているが、今回の羽倉賞では阪口さんのアイデアを見て大変なことを忘れていたことに気づかされた。光だけでなく影の大切さを思い出させてくれたのが刺激的だった。素晴らしい作品ばかりで、作品について議論して形にすることができるならこの場も意味がある」と話していた。
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