
「Well―Moving」な移動社会に向け実証実験
NTT(本社:東京都千代田区、島田明代表取締役社長)、NTTデータグループ(本社:東京都江東区、佐々木裕代表取締役社長)、NTTデータ(本社:東京都江東区、鈴木正範代表取締役社長)、阪神高速道路(本社:大阪府大阪市北区、吉田光市代表取締役社長)の4社は、Well―Movingな移動社会の実現に向けた、「交通」と「情報」の融合による交通マネジメント技術を活用した実証実験を、2025年6月18日から10月13日(予定)にかけて、大阪・関西万博開催中の阪神都市圏で開始した。実証では、両者で開発中の交通デジタルツイン「RASiN」を活用した経路検索サービス「Welmos Route」(Webサービス)とスケジュール管理アプリ「Welmos Agent」(モバイルアプリ)の2つの実験サービスを一般公開し、その効果を検証する。
近年、IoT技術やAI等の情報処理技術進歩は目覚ましく、同時に、これら技術を用いることで、既存の施策やサービスは大きく発展しようとしている。道路交通サービスにおいても、テクノロジーの発展に伴い、ユーザーサービスの向上や、多様性や社会性への配慮等に対応したサービスが求められている。
これらの背景を踏まえて、NTTグループと阪神高速は、交通マネジメント実績に基づく阪神高速の知見・ノウハウと、NTTグループのIOWN構想の一環となる4Dデジタル基盤などの情報処理技術といった、「交通」と「情報」の融合による交通マネジメントシステム「Welmos System」を構想。新たなサービスの創出等を通じて、多様な移動ニーズに個別に対応し、交通全体も円滑化された移動社会(Well―Moving Society、Welmos)の実現をめざす取り組みを推進している。
「Welmos」の実現に向けた取り組みの第1弾として、大阪・関西万博開催中の阪神都市圏で、実験サービスの提供を通じた実証実験を実施。実証では、実験サービスの有用性やその利用を通じた行動変容の効果等を検証していく計画という。
実証では、阪神都市圏を対象に、交通マネジメントシステム「Welmos System」を構成する交通デジタルツイン「RASiN」を使って、阪神都市圏の高速道路および主要一般道路の30日先までの交通状況を予測。移動を工夫(行動変容)することによる交通影響の変化に伴い、地域社会が享受する総旅行時間の短縮や二酸化炭素排出量削減、事故リスク低減といった次元の異なる社会的効果を、コスト換算により総合評価し、社会貢献スコアとして可視化する。「RASiN」と連携する実験サービス、「Welmos Route」、「Welmos Agent」の提供を通じて、「Welmos」の実現に向けたこれらサービスの有用性や利用を通じた行動変容の実行性等を検証する。
阪神高速とNTTデータは、将来、データ駆動型社会への対応が必要とされることを見据え、交通マネジメントシステム「Welmos System」のエンジンとして、都市圏の大規模交通シミュレーションが可能な交通デジタルツイン「RASiN」を共同開発し、実証で試験的に実装する。NTTグループのIOWN構想の一環である4Dデジタル基盤の情報処理技術を活用し、現実世界でセンシングされるさまざまな時空間データをリアルタイムに統合し、高速に分析処理・未来予測を行う。
「RASiN」の主な特長として、さまざまなデータから推定した交通需要を日々更新しながら、30日先までの阪神都市圏の交通状況を随時予測する。また、交通状況や利用者の移動計画を都度反映した予測を繰り返すことで、時々刻々と変動する交通状況にも高精度で適応する予測システムを実現する。さらに、未来の交通状況の流れと、連携するサービスで提案した移動が実行された未来の交通状況とを並列で予測、比較し、行動変容の効果を評価。行動変容を促す指標等を算定する。
実証で活用するアプリは次の通り。
【経路検索サービス「Welmos Route」】
多様な移動ニーズに対応した、交通デジタルツイン「RASiN」連動の経路検索サービス。主な特長として、「RASiN」連動で、阪神都市圏の30日先までの交通状況予測に対応しているほか、迂回・時間変更・公共交通利用等の複数の移動選択肢を、時間や料金、社会貢献スコアの条件を一括比較することにより、渋滞をさけた移動を計画することが可能となる。多くの人が社会貢献スコアの高いルートを移動することになれば、渋滞緩和等への寄与が期待される。
【スケジュール管理アプリ「Welmos Agent」】
普段使いのスケジュールアプリとの連携で経路検索の手間を軽減し、「RASiN」と連動して、渋滞による移動への影響等を知らせるスケジュール管理アプリ。登録された移動の計画・実行により、社会貢献スコアが蓄積し、渋滞をさけるだけでなく、渋滞を減らす等の地域社会が享受する社会的効果への貢献度が確認可能となる。スコアは登録された所属組織単位での集計にも対応しており、企業等による渋滞緩和等への取り組みにも活用できる。天気予報のように気軽に渋滞予報が確認できるため、外出の計画・見直しにも便利で、個人スコアは所属組織での集計も可能なため、企業・団体でのCSR活動にも活用できる。
各社では今後、今回試作したシステムやサービスを評価し、社会実装に向けた課題を整理したうえで、本格運用を目指す。さらに、さまざまな外部サービスとの連携や、社会課題対策としての利活用等、多様な「共創」による取り組みの拡大も重視しながら、新たな移動社会の実現を図っていくとしている。
◇
※IOWN構想:革新的な技術によりこれまでのインフラの限界を超え、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想。
※4Dデジタル基盤:ヒト・モノ・コトのさまざまなセンシングデータをリアルタイムに収集し、「緯度・経度・高度・時刻」の4次元の情報を高い精度で一致・統合させ、多様な産業基盤とのデータ融合や未来予測を可能とする基盤。
※Well―Moving Society:本実証の先にめざす、多様な移動ニーズに個別に応えつつ、交通全体として円滑化された移動社会。
※Welmos(ウェルモス):「Well―Moving」な移動社会の実現への願いを込めた、「Well-Moving Society」の略語。
※RASiN(ラシン):NTTデータと阪神高速道路株式会社が共同開発中の交通デジタルツインで、羅針盤のように進むべき方向を示すものであることを意味する。
この記事を書いた記者
- 主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。
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