富士通、骨格認識AIを活用したフィギュアスケート選手の動きの3次元デジタル化に成功

 富士通は、骨格認識AIを活用したフィギュアスケート選手の動きの3次元デジタル化に成功し、公益財団法人日本スケート連盟(東京都新宿区)がこの技術を導入したと発表した。フィギュアスケート競技のナショナルトレーニングセンター強化拠点「関空アイスアリーナ」(大阪府泉佐野市)で活用する。7月3日から5日に同施設でのトレーニング合宿でスケートリンクにおけるジャンプのモーションデータ収集、解析などを行い、地上での計測データと比較した。

 「動きの3次元デジタル化」とは「例えばフィギュアの高速な回転において、間違いなく正確に3次元での関節の座標情報を出力すること。従来の技術では左右の手や足の位置を間違えることがあった」(富士通広報IR室)という。
 同社は、高精度な骨格認識AIをベースに、人の動きの計測・検出を支援する技術開発を進めてきた。今回、独自の補正アルゴリズムにより、フィギュアスケートの高速かつ複雑で特徴的な動作において、ディープラーニングによる画像解析で課題だった姿勢認識のジッタ(推定誤差)を大幅に低減できた。AIが学習する際に必要な大量のトレーニングデータを独自の3Dデータ生成技術により人工的に生成し、学習期間を1000分の1に短縮。従来の数ヵ月の手動作業を、数時間で生成できた。

 これまで、スポーツのトレーニングにおけるモーションキャプチャー技術の活用には、機材の設置や選手の体へマーカーを装着しての試技が困難だった。フィギュアスケートでは、選手のジャンプやスピンなどの高速で複雑な動作を正確に分析する必要があるため、映像をもとに解析する一般的なマーカーレスのモーションキャプチャー技術では、姿勢のブレや誤認識に課題があった。また、解析可能な演技数に制限がある上、短時間での分析結果の出力が困難だった。

 同社の骨格認識AIは、2016年より体操競技の採点で培ってきた人の動きの3次元デジタル化の精度の高さ、分析における数秒での結果出力が可能なため、解析する演技数の制限なく早期にトレーニングの改善に生かせるようになった点を日本スケート連盟に評価され、採用となった。

 「電波タイムズ」の取材に対して「『早期にトレーニングの改善に生かせるようになった点』とは、これまでの技術では解析範囲や解析時間の関係で、氷上でのモーションデータ取得が難しかった。仮に取得できたとしても演技数も非常に限られていた。本技術でこれまでできなかった氷上のモーションデータが演技後すぐに出力可能となり、ジャンプの高さや飛距離、滞空時間、回転速度などのデータを、選手の感覚が残っているうちに共有することができるようになる。選手は内省と結果を比べて、トレーニングしていくことが可能。また、他の選手のデータとも比較をすることで、例えば4回転ジャンプを実現するために強化していく方向性をアドバイスしていくことが可能」(富士通広報IR室)と話した。

 今後、富士通は他のスポーツへ適用領域を拡大する。また、製造業での作業負荷解析、ヘルスケア分野での予兆検知など幅広い分野で骨格認識AIを活用していく考えだ。

写真は 3D MotionDataPic2