AI活用しセキュアな環境で文書検索 「KDDI Conata Data Agent」提供開始

KDDIは2025年9月17日から、セキュアな環境で高精度な社内文書検索と回答生成が可能なデータ活用アシスタント「KDDI Conata Data Agent」の提供を開始した。KDDIの閉域網サービス「KDDI Wide Area Virtual Switch 2」を組み合わせることで、点在している社内文書の横断検索と高精度な回答の自動生成をセキュアな環境で実現するとしている。
 企業や自治体で生成AI導入による業務効率化のニーズが高まっており、業務への活用が進んでいる。生成AIを効果的に業務で活用するには、社内の経験や知見などをデータとして適切に保管・蓄積し、活用するのが重要だ。
 一方で、これらを実現するためには、開発やデータ収集など技術的な課題がて存在する。また、技術課題を解決する上で社外のサービスを活用するには、「社外システムに社内情報を連携するのはセキュリティ上心配である」「生成AIと社内データをより安全・安心な形で連携したい」といったセキュリティリスクを懸念する声もある。
 同サービスは、フライウィール社の情報検索技術と生成AIを活用したデータ活用アシスタント「Conata Data Agent」と、KDDIの閉域網サービス「KDDI Wide Area Virtual Switch 2」を組み合わせることで、閉域網での接続が可能となるため、利用者は情報漏えいやセキュリティリスクの心配をすることなく、PDFなどの文書ファイルやテーブルデータなど異なる形式の社内データを自動で検索・分析し、過去の顧客データやプロジェクト資料などの知見を迅速に得ることが可能となる。
 サービス導入・活用に向けた伴走支援も提供し、業務におけるAI活用・浸透をサポート。情報流出のリスクを低減しながら社員の業務効率化に貢献する。
 「Conata Data Agent」では、利用者が「ある企業の案件確度を上げるにはどのようなアプローチが必要か」といったプロンプト(指示文) を入力すると、生成AIが社内データを瞬時に参照し、チャット形式で回答を生成する。
 「KDDI Wide Area Virtual Switch 2」は、広域に配備したSDN装置によって仮想化されたネットワーク。パブリッククラウドにインターネットを経由せず閉域で接続可能となり、利用者は安定性と保守性の高い帯域確保型のネットワークを利用できる。
 主な特長は次の通り。
 ①専門知識なく社内データを簡単にAI活用:RAG(Retrieval―Augmented Generation) などの情報検索技術により、データ分析の専門的な知識なく、社内データの効果的な活用が可能。
 ②データ収集により利用者の手間を軽減:上記技術によって、膨大な社内データから必要な情報を見つけ出すという、これまで担当者が行っていた一連の業務の工数・時間を大幅に削減。自動で利用者の求める回答にあったデータを探し収集するため、利用者はデータの整理や資料アップロードを行う必要がなくなる。
 ③セキュアに利用可能:KDDIの閉域網サービスを活用することで、情報漏えいやセキュリティリスクを心配することなく、より安心して生成AIサービスを使うことができる。
 利用プランは次の通り。
 ①資料検索プラン(情報システム部門向け):自然言語で質問を入力するだけで、社内情報の中から必要な情報に瞬時にアクセス。多様な形式の社内規定やFAQから、情報を探し回る必要がなくなる。
 ②横断検索プラン(営業部門向け):オフィスドキュメントやテーブルデータを横断的に検索し、社内に散在した情報を一元的に検索可能となる。KDDIの閉域網サービスと接続しており、セキュアな環境下で安全に利用者の情報を取り扱うことが可能。
 KDDIは2024年11月1日から、本サービスを活用した社内資料の検索の効率化および生産性向上に関する実証実験を実施。これまで週に1人あたり8時間ほどかかっていた社内資料の検索、分析、資料作成などの業務の作業負荷を約3割削減できるといった効果を確認した。
 2025年7月18日から、実証の結果を踏まえ、社内の法人営業部門において本サービスを先行導入し、顧客ニーズの分析や提案資料の骨子作成などにおいて業務の効率化を実現。導入したユーザーの8割以上が調査時間の短縮や情報検索の容易さを実感しており、「問い合わせ先がわかりやすくなった」「回答の比較や提案内容の検討が効率化された」といった声も寄せられたとしている。
 KDDIは、KDDI VISION 2030「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」の実現に向けたビジネスプラットフォーム「WAKONX」を通じて利用者の事業成長・社会課題解決へ貢献し、日本のデジタル化のスピードアップ推進を目指す。同サービスはWAKONXにおけるAI enabledを促進する取り組みの1つとして位置づけ、利用者の生成AI活用を推進することで、生産性の向上に貢献するとしている。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。