NTT本社を2031年に移転、グループ誕生の地日比谷でスマートシティ開発目指す

 NTTグループは12月8日、持株会社であるNTT(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田明)と、NTTアーバンソリューションズ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:池田康)、NTT都市開発(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:池田康)の本社機能を、東京都千代田区で開発中の「NTT日比谷タワー」(2031年10月末竣工予定)に移転すると発表した。1961年に当時の日本電信電話公社(現NTT)が本社を構えた縁の地でもある日比谷に拠点を移し、次世代情報通信基盤「IOWN」を中心とした次世代スマートシティ実現の一端を担う。
 NTT日比谷タワー(東京都千代田区内幸町一丁目1番10他)は延床面積約36万1000㎡で、高さ約230mで地上48階、地下6階、塔屋2階を予定。オフィスや産業支援施設、ホール、商業、宴会場、ホテルなどを備え、NTT都市開発と東京電力パワーグリッドを事業主に2031年10月末の竣工を目指している。街区全体の竣工は2037年度以降を予定している。
 NTTによると、日本が少子高齢化にともなう人手不足、気候変動による地球温暖化、頻発する自然災害など、深刻な社会課題に直面する中で、持続可能な社会の実現に向けた対応が急務となっている中、AI・ロボット・モビリティ市場の拡大により生活が豊かになる一方で、電力消費量の著しい増大が課題となっている。こうした課題に対し、膨大なデータを大容量・低遅延・低消費電力で処理する次世代情報通信基盤「IOWN」を活用し、これらの基盤で社会を支えることにより、企業の業務効率化・自動化、災害や気候の予測、そしてインフラや環境の自動制御など、さまざまな分野での課題解決を目指すと共に、〝「光の街」づくり powered by IOWN〟として、街づくりの分野でも、光技術などの力で人々に豊かな暮らしを提供し、より安全・安心で持続可能な社会の実現を図りたい考え。
 取り組みでは、NTT都市開発と東京電力パワーグリッド株式会社が事業主として開発中のNTT日比谷タワーを含む内幸町一丁目街区で掲げる次世代スマートシティ実現の一端を担う。本社移転に伴い、これまで培ってきた同グループの技術力とノウハウを結集することにより、これまでにない〝新しい価値の提供〟と、圧倒的な〝超・低消費電力化〟を実現。さらに、パートナー企業との共創を通じて、多様な知見や最先端の技術を融合させ、人を中心とした、より持続可能で魅力的な社会の実現を推進していくとしている。
 移転とスマートシティ実現に向けた取り組みの概要は次の通り。
 ①新しいビジネス・イノベーション
 IOWN が実装されたタワーは、世界中のパートナー企業とリアルタイムでのコラボレーションを可能にし、イノベーティブでクリエイティブな企業活動を支える。また、IOWNによる空間伝送に加え、NTT版LLM「tsuzumi2」や、大規模AI連携技術「AI コンステレーション」などの先進技術と組み合わせたサービスの活用により、企業・オフィスワーカーの業務効率化・生産性向上、国境を越えた共創を実現する。  
 将来的には、打合せで出たアイデアが容易にモデル化され、時には相談相手、時には行動支援(コンシェルジュ)、時には資料を検索・提示する業務コンサルの役割を担うなど、クリエイティブな活動をサポートし、オフィスワーカーのパフォーマンスを最大化する環境を整える。
 ②新たなライフスタイル・エンターテイメント
 IOWNで世界中の街と街、エリア同士など空間をリアルタイムでつなぐことにより、今までにないライフスタイル・エンターテイメントを実現。タワー低層部に位置し、日比谷公園とつながる大規模なパサージュ・アトリウム空間である(仮称)Cross Gateには、壁面・天井一体型の大型LEDビジョンが実装され、巨大な屋内プレゼンテーション&エンターテイメント空間が広がる。企業の新商品・サービスを世界・日本各地とつないで同時発表したり、企業価値向上のための広告展開、低層部に広がる商業施設との一体的なイベントなどでも活用できる。また、イベント開催時以外も、オフィスワーカーや来街者の方々が働き・憩う場として機能する。
 将来的には、NTT のリアルとバーチャルが融合した音響体験を提供する「音響 XR 技術」などのより深い没入感を生み出す技術が掛け合わさることにより、世界各地の会場と連携した映像ギャラリーやアート展示、体験型のゲームやアトラクションなど、さまざまな目的に応じた体験を提供することが可能。
 ③超・低消費電力化によるサステナビリティ
 新しいビジネスやライフスタイルなどの〝新しい価値の提供〟を、タワーの建物性能や最先端のエネルギー技術などにより支えることで、持続可能な社会の実現を目指す。
 具体的には、建物仕様の設計工夫により、従来建物で必要なエネルギー消費量を 50%以下にまで削減する「ZEB Ready」をオフィス部分で実現。さらに、光電融合デバイスの活用による圧倒的な〝超・低消費電力化〟に加え、IOWNを基盤としたAIなどの活用による未来予測で建物設備を最適制御し、省エネと快適性を両立する「Just Enough Energy」により運用効率を最大化し、CO2排出量を10%から20%削減する。さらにはクリーンエナジーなどの活用により、カーボンニュートラルを実現する。
 将来的には、光量子コンピュータなどの新たな技術による更なる運用効率化や、水素などの次世代のクリーンエナジーの活用にも取り組む。

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kobayashi
主に行政と情報、通信関連の記事を担当しています。B級ホラーマニア。甘い物と辛い物が好き。あと酸っぱい物と塩辛い物も好きです。たまに苦い物も好みます。