25年の世界生産額は史上初の4兆ドル超 ―26年も対前年比10%増で過去最高を更新見通し

 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA:代表理事/会長・漆間啓 三菱電機株式会社代表執行役執行役社長CEO)は2025年12月16日、同協会大手町オフィス(東京都千代田区)で記者会見を開き、電子情報産業の世界生産見通しを発表した。2025年の電子情報産業の世界生産見通しについては、対前年比11%増で史上初の4兆ドル超となる4兆1184億ドルを見込み、2026年については、2025年を上回る4兆5103億ドル(対前年比10%増)と過去最高を更新する見通しとなることを明らかにした。
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 漆間会長は冒頭で2025年の振り返りとして、「今年6月の就任会見において、地政学リスクの高まりや関税をはじめ、世界的な不確実性が増すなか、日本の潜在成長率や生産性の低さの克服が不可欠であり、デジタルによる真のトランスフォーメーションを社会全体で実現することが急務であると申し上げた。AI をはじめとするデジタル技術が急速に浸透する一方で、日本社会に内在する構造的な課題も明らかになりつつある」と述べた。
 電子情報産業の2025年の世界生産額は、対前年比11%増となる4兆1184億ドルを見込む。世界経済は、地政学リスクの高まりや関税などにより不確実性が重荷となる一方、AI需要の拡大が成長を下支えして底堅さを見せている。電子情報産業においては、サーバやストレージ、AI搭載のパソコンやスマートフォンの普及により、電子部品・デバイス分野では高性能半導体やメモリが市場を牽引、他方、ソリューションサービス分野では、自動車や産業機器のデジタル化、データ利活用の高度化が進み、企業のDX需要が拡大していることから、世界生産額は史上初の4兆ドルを超え、過去最高の世界生産額を更新する見込みとなった。
 2026年は生成AIをはじめとする先端技術の普及が進み、特に、AI搭載デバイスの普及やクラウド・エッジコンピューティングの進化により、サーバ・ストレージ関連の需要が底堅く推移することが期待されることから、世界生産額は前年比10%増の4兆5103億ドルとなり、過去最高の世界生産額をさらに更新する見通し。
 2025 年の海外生産分を含む日系企業の世界生産額は、前年比2%増となる41兆8134億円を見込む。Windows10サポート終了に伴うパソコンの買替需要が堅調で、生成AI の普及を背景にした半導体や電子部品、ソリューションサービス需要も全体を下支えした。2026 年は、デジタル化投資の加速によりソリューションサービスが着実に成長、電子部品・デバイスも堅調に推移する見込みであることから、前年比3%増の43兆1450億円となる見通し。国内生産額は、2025年に前年比2%増の11兆5466億円、2026年には3%増の11 兆9116億円に伸長する見通しとなった。

JEITA Press Release

JEITA Press Release


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 テクノロジーの注目分野として、「データセンターの動向」を取り上げた。データセンターとは、企業や団体が保有する膨大な情報(データ)を安全に保管・管理・処理するための専用施設で、停電時でも稼働できる電力インフラや冷却システム、高速かつ冗長なインターネット回線等安定したネットワーク環境や高いセキュリティを備えることが求められる。
 JEITAでは、主要国政府の政策や海外先進企業の動向など公知情報の分析と、国内外先進企業へのヒアリングをもとに需要を推計。2030 年におけるデータセンターサービス世界市場は1兆7200億ドルと見通した。
 SaaSやIaaS、PaaSなどのクラウドサービスが大きく伸長する見通しで、生成AIの普及の他、クラウドサービスを中心としたサービス利用の加速、動画配信やゲームなどデジタルコンテンツ需要の拡大、AI学習・推論に対応するGPUサーバーや高速ネットワークの需要拡大が複合的に作用して、世界中のデータセンター投資を強力に後押しする。日本のデータセンターサービス市場も、産業のデジタル化やAI活用の広がりにより、2030年に5兆6540億円へと成長する見通しで、堅調に推移していく見込みとした。 
 データセンターサービス市場の伸長に伴い、関連製品の市場も成長する。2030年データセンター関連製品の世界市場は1兆6907億ドルに成長すると予測。データセンターサービス市場を上回る大きな伸びで、2025年比で約2・5倍の市場拡大となる見通し。インフラの高度化に向けた投資によって、GPUやCDU、サーバー、ネットワークスイッチ、SSDといった主要コンポーネントが市場をけん引する。  
 漆間会長は「国際情勢が不透明さを増す中、経済安全保障の重要性はかつてなく高まっている。エネルギー、半導体などと並び、『データ』と『デジタル基盤』は、国家の機能を左右する『新たな戦略資源』になりつつある。とりわけ、データセンターは行政・産業・国民生活のすべてを支える「基盤インフラ」に位置付けられる。AI の学習に用いられるインターネット上のデータは2028年までに学習され尽くされるとの見方もあり、今後のAI活用による経済発展には各産業分野が現場で保有するデータの重要性が一段と高まる。とりわけ我が国の産業分野の現場で生まれる『OT データ』は極めて高品質で有効なデータ。これらは領域特化型AIを活用した生産性向上と付加価値創出の源泉であり、産業競争力と経済安全保障を支える鍵であることからも、国内におけるデータセンターの整備は喫緊の課題といえる」と述べた。
 また現状の課題について、「データセンター整備を図る上での課題として、電力供給が挙げられる。指数関数的に上昇する処理能力への要求に応じて、データセンターの電力需要は2030年に現在の2倍以上になると予測される。電源の確保と省エネ技術の革新は今後ますます重要となり、電力供給がサプライチェーンのボトルネックにならないよう、産学官の連携が必要不可欠」と指摘。「AI 時代の成長は、もはや、『データと電力の戦略的確保が決める』と言っても過言ではない。データセンターと電力は、半導体に次ぐ『国家の戦略資源』であるという視点を持たなければ、日本のデジタル競争力は維持できない。日本の産業競争力、国際的なプレゼンス、そして国民生活の利便性は、この基盤を確保できるかどうかにかかっている」と強調した。
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 このほか漆間会長は、デジタル産業を取り巻く動向を踏まえたJEITAの取組として、「データ活用」と「イノベーションの促進」の二点を挙げた。発言の要旨は次の通り。
 【データ活用】
 製造業が日本の強みであり続けるためには、単なるデジタル化では不十分。そこで重要度を増すのが、OT データをはじめとする、各産業分野のデータ活用。日本の生産性を高めるには、製造現場のデータとAIを組み合わせることで、付加価値化を高め、ものづくりの強化につなげていくことが重要。日本が競争力を取り戻すには、ソフトウェアとデータに本気で投資できるかどうかに尽きると言える。JEITA では、複数の組織や企業が互いに信頼できる仕組みのもとで、安全かつ自由にデータを活用できる「産業データスペース」を目指し、「デジタルエコシステム検討会」を来年度に発足させる予定。現在は準備フェーズにあるが、実際に産業界で進めている取り組みをベースに、将来のユースケース創出につながる検討課題やアクション等の整理を進めている。2025年6月に発足した「デジタルエコシステム官民協議会」に検討内容を共有しつつ、官民一体で産業分野のデータ活用を進めていく。
 データ活用の基盤となるデータセンターには、安定的な電力供給と革新的な省エネ技術における産学官の連携が必要不可欠。電力・ITリソースの統合管理を実現する「ワットビット連携」の推進、再生可能エネルギーの効率的な活用や省エネ半導体の開発、光電融合による高速・低消費電力通信などの技術導入を提案していく。さらに、経済安全保障の観点から産業のみならず行政等さまざまな分野でのクラウドの整備を進め、デジタル赤字の解消を目指す。
 【イノベーションの促進】
 「Innovation for All」を掲げた「CEATEC 2025」には、約10 万人の皆様に来場いただいた。世界の展示会の多くが商業的な要素が中心であるのに対し、CEATECは未来を構想し、共感を生み、社会実装につなげる「イノベーションの実験場」。企業にはブランド価値の向上と新産業の萌芽を、行政には政策形成の視座を、研究者には新たな問いと連携の機会をもたらし、また、学生や生活者には学びと希望を、そして社会全体には「共感から社会実装へ」という推進力を提供する、イノベーション促進の「インフラ」として、CEATECをさらに進化させていく。
 研究開発と社会実装を両輪で進めていくことは、日本の国際競争力にとって、極めて重要。研究開発税制における戦略分野への支援強化は、飛躍的に AI が進歩する中、データを起点とした産業競争力の強化につながるものと考えている。研究開発そのものが産業分野のデータと不可分となっており、データは日本の「戦略資源」に他ならない。産業競争力と経済安全保障の両面から、AI 等を戦略分野と位置付けた今回の支援措置は、デジタル化と産業競争力の強化を後押しするものであり、尽力いただいた関係者に深く感謝申し上げる。また、デジタル基盤はハードウェアとAI等のソフトウェアを一体として整備することが不可欠であり、生産性向上に資する設備投資について、ソフトウェアを含めて後押しいただけることも大変有意義と期待している。
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 質疑応答で漆間会長は、「パワー半導体は日本企業が世界と競争する中でキーとなる。各社連携しながら世界に勝てるチップを作るのが鍵。どこまで連携できるかは各社の努力次第だが、先端半導体を日本で作る動きも出てきており、国内での調達が将来実現できると考えている。連携しながら各製品、各分野で相乗効果を出せるようになる」と述べた。
 またデータセンター需要に伴う世界的なメモリ等の部品不足への懸念については、「不足の懸念は事実としてある。今の生成AIの伸長からいくと供給が追いつかないという見方もあるが、データセンターの効率化や参加企業の力を活用しながら、制約がある中で追いついていけるか注視しながら連携していきたい」と述べた。
 このほか悪化傾向にある日中関係の影響については「築き上げたものを継続するに尽きる。影響はないわけではないが理解しながら経済を維持したい」とした。
 結びとして、「JEITAは『デジタル産業の業界団体』として、Society 5・0の実現に向け、会員企業や政府などと密に連携し、デジタル技術による課題解決、競争力強化、新市場創出に向けた取り組みを加速させ、より多様な産業の皆さまと協力しながら、日本の未来を切り拓いていく」と締めくくった。