「業界のあるべき姿を考える」 CIAJ 森川博之会長
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)はこのほど、2026年新年賀詞交歓会を開催した。
冒頭、登壇した森川博之会長は、「昨年を振り返りますと、大阪・関西万博の開催、史上初となる女性総理の誕生、さらには日本銀行による17年ぶりの利上げなど、日本社会にとって大きな節目となる出来事が相次いだ一年であったと感じております。
一方、海外に目を向けますと、地政学的緊張の高まりや保護主義的な動きが顕在化し、経営環境を取り巻く不確実性は、これまで以上に増している状況にあります。
このような時代の変わり目、そして不確実性が一段と高まる局面においてこそ、将来への確かな備えとして、情報通信ネットワーク業界が果たすべき使命は極めて大きいと考えております。
情報通信は、いまや疑いなく社会のライフラインです。次の世代の日本のために、今を生きる私たちが責任を果たしていかなければならない。その強い思いを胸に、CIAJとしても引き続き取り組んでまいりたいと考えております。皆様には、今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
さて、今年を展望いたしますと、やはり避けて通れないのがAIの進展であると考えております。キーワードとしては、フィジカルAI、マルチモーダル化、そしてAIエージェントです。これらは通信トラフィックに対して、量・質の両面で非常に大きな変化をもたらすものと見ています。
生成AIのマルチモーダル化により通信トラフィックは大幅に増加していくでしょうし、これまで主流であったユーザーとクラウドを結ぶ縦型の通信に加え、今後はエージェント同士が連携する水平型のトラフィックという、新たな通信形態も本格的に生まれてくると考えています。
こうした認識のもと、CIAJといたしましては、オール光ネットワーク、APNの市場創出や社会実装に向けた議論を進めてまいりました。また、政策提言活動につきましても、これまで以上に力を入れて取り組んでおります。
その中で、私が特に強く意識しておりますのが、地政学的緊張の高まりであります。今後、経済安全保障の観点から、情報通信ネットワーク業界のあるべき姿を真剣に考えていかなければなりません。しかしながら、この課題は、CIAJ単独で取り組めるものでは決してなく、私どもだけでは不十分であると考えております。
関係省庁の皆様、そして通信事業者をはじめとする関係各位の皆様と一体となり、業界としてあるべき姿を共に議論し、形にしていくことが不可欠です。ぜひその点につきまして、引き続きご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます」と挨拶した。
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続いて来賓を代表して林芳正総務大臣が、「政府といたしましては、『強い経済』の実現を大きな政策目標として掲げており、その一環として『日本成長戦略本部』を立ち上げました。昨年11月には第1回会合を開催したところでございます。
情報通信分野は、社会活動はもとより、安全保障や災害対応においても不可欠な基盤であり、政府として総合的に支援すべき17分野の一つに指定され、総務大臣が担当することとなっております。
先ほど会長からもお話がありましたとおり、今後は『先手を打つ』ことが極めて重要であると考えております。官民が連携し、戦略的投資を促進する枠組みとして、総務大臣を議長とする『情報通信成長戦略官民協議会』を新たに設置することといたしました。
本協議会には、森川会長にも構成員としてご参画いただくとともに、CIAJにはオブザーバーとして参加いただく予定でございます。情報通信分野における成長戦略の策定と着実な実行について、活発な議論をお願いしたいと考えております。
これらの施策を支える重要な基盤が予算措置でございます。臨時国会において成立いたしました令和7年度補正予算では、「DXイノベーション加速化プラン2030」に基づき、令和6年度補正予算と比べ約2・5倍となる、総額約3600億円を計上いたしました。
特に、経済安全保障の観点から、自立性確保に向けた低軌道衛星インフラの整備、海底ケーブルの地方分散によるデジタルインフラの強靱化など、関連施策を大幅に拡充しております。
また、令和8年度当初予算においては、地方におけるデータセンター立地支援に関し、5か年の国債負担行為を設定し、初年度予算を計上いたしました。
これらの取り組みを通じ、オール光ネットワークの早期実現を図るとともに、地域活性化に資するワット・ビット連携を強力に推進してまいります。
オール光ネットワーク、AI、ワット・ビット連携といった施策を横断的に位置付け、総合的な政策展開を加速していきたいと考えております。
CIAJの皆様からは、毎年、政策要望として現場の率直なご意見をお寄せいただいており、政府としても大いに参考とさせていただいております。
皆様のビジネスが成長し、収益性を高めることが、情報通信産業全体の活力となり、将来への投資につながるものと期待しております。今後とも、忌憚のないご意見を賜りますようお願い申し上げます」と述べた。

林芳正総務大臣
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CIAJ副会長の濱田宏一氏(アンリツ 社長)が、「情報通信ネットワークは、社会と産業を支える極めて重要な基盤であり、同時に経済安全保障の要でもあります。
陸上、海底、そして宇宙。この三つのネットワークを、安定性、信頼性、そして強靱性をもって守り、育てていくことが、私たちに課せられた使命であると考えております。
さて、2026年は甲午(きのえうま)の年であります。甲午の年は、新しいことに挑戦するのに適した年であり、物事が良い方向へ進むとされています。情報通信ネットワークの分野においても、多くの新しい技術が本格的に立ち上がる年になると期待しております。
オール光ネットワーク、光電融合、衛星間光通信、そしてAIを基軸とした次世代6Gネットワークなど、日本が世界の情報通信の発展をリードしていく、まさにその元年になると考えております。
CIAJといたしましては、関係機関との緊密な連携のもと、情報通信の発展を先導し、実効性のある政策提言、標準化活動への貢献、さらには人材・技術基盤の強化に向けて、会員の皆様とともに全力で取り組んでまいります」と乾杯の挨拶を行い、賀詞交歓会がスタートした。

CIAJ副会長・濱田宏一氏
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。



