天地人、衛星で水道管漏水リスク減らす

 株式会社天地人(東京都中央区、櫻庭康人代表取締役社長)は、2月18日に「Tokyo Innovation Base」 (東京都千代田区)で、「地方自治体インフラAXサミット」(同実行委員会主催)を開催した。同サミットでは、デジタル庁・国土交通省、そして愛知県豊田市・静岡県磐田市の両市長とともに、さまざまな切り口でAIの活用を議論し、これからの地域インフラのあり方を再定義した。国家成長戦略から現場実践まで、3つの基調講演と3つのテーマ別セッションを通じて、限られたリソースの中で持続可能なインフラ管理を実現する道筋を示した。
 オープニングメッセージ(ビデオレター)を自由民主党衆議院議員の小林史明氏が行い次のように述べた。
 今回のこのサミットの重要なテーマは、「8がけ社会」をどう豊かにするか、これだと思う。「8がけ社会」は、今から15年後、 2040年には働き手が今よりも2割減少する、この時代をどうするかということ。
 どうしても人口減少の話になると、皆さんも会社や地域でも暗い話だと捉えられがちだ。しかし、その現実は実際にやってくる。だとするならば、今日の集まりのリーダーの皆さんには、そのチームの皆さんをしっかり鼓舞して、明確な目標を立てて、一緒にこの社会を良いものにする、一緒に乗り越えていきたいという思いがある。
 その時にリーダーの重要な役割は、チームのメンバー、仲間のメンバーを迷わせないことだ。そのために必要なのはわかりやすい目標だと思う。人手が8割になるのであれば、今までやっていた10人で回した仕事を8人でできるようにする。10人で回っていた社会構造を8人で回るような社会構造に変える。これさえ実現することができれば、今までよりも一人ひとりは必ず豊かになる、そういう社会が実現できる。
 官民が力を合わせていけば、もっと我々はその道を深めることができると思う。そのひとつがやはりテクノロジーの活用である。そのために規制をこれからもさらに徹底的に我々は見直していく。規制を徹底的に見直して、テクノロジー、AIを活用する。これができる社会を作ることで、私たちはもっと効率化できるし、スタートアップにとっては新しいビジネスチャンスが生まれてくる。加えてもう一段進めたいことは、国、都道府県、市町村、このガバナンスモデルを変えていくことである。
 市町村がほんとうに体面でやらなければいけないことと、都道府県や地域ブロック単位、場合によっては国一括でですね、広域でサービスを提供した方がいいもの。これをテクノロジーの進展に合わせて再整理を進めることで、もっと自治体の皆さんの負担を下げて、より住民に寄り添っていく、そして自治体職員の方々自体もですね、豊かさを感じられる、そういう社会像が作れるのではないかと思う。
     ◇ 
 『基調講演1』は「10人の仕事を8人で回す―人口減少局面における社会システムの再構築と成長戦略へのパラダイムシフト』と題して行い、内閣官房デジタル行財政改革会議事務局次長の吉田宏平氏が行った。モデレーターは日本ディープラーニング協会専務理事の岡田隆太郎氏が行った。
 吉田氏の講演要旨は次の通り。
 地方公共団体の職員数は、業務の効率化等によりピーク時から減少している。1994年のピーク時から比べると50万人近く減っている。デジタル化による更なる業務効率化も、3名以下の自治体が55%であり課題だ。インフラの関係を含めて自治体の役割が増えていくが、ヒト自体は減っている。労働需給ギャップはどんどん増えていく。
 次にデジタル行財政改革の必要性について。少子高齢化の前提の上で、デジタルを最大限活用して、担い手を支援するための制度改革も含めた行財政改革を進めていこうと取り組んでいる。その柱は▽公共サービス等の強靭化▽現役世代の活躍を支える働く環境整備。自治体の職員もどんどん減っていく中で、それぞれ1741の自治体が個別の取り組みでバラバラのシステムを作っていくのは、サスティナブルではない。システムの標準化、共通化を進めて、同じシステムを、あるいは同じサービスを自治体をまたがって、広域に展開する、利用していくことを前提とした制度、制度設計が必要だ。その上でDXを進めていこうと。
 このあとのセッションで出てくる上下水道の話も、デジタル×インフラということで、人工衛星とAIにより漏水可能性のあるエリアを絞り込むことで現場の負担を軽減する。これまでは人海戦術、その勘と経験で行っていたものを、人工衛星の技術を使って、AIを使って解決をしていく。
 課題解決には、自治体のシステムの標準化と共通化、そして共同調達、この3つを武器にして自治体業務のサステナビリティというものを図っていくことだ。達の動きにも通るものだというふうに思います。
     ◇
 『基調講演2』は「インフラの未来を描く―国交省の『インフラ経営』と、地方都市の『未来戦略』DXとPPP/PFIで実現する、持続可能な群マネジメント」と題して、国土交通省総合政策局社会資本経済分析特別研究官の小林正典氏、豊田市長の太田稔彦氏、磐田市長の草地博昭氏が講演した。
 小林氏の講演要旨は次の通り。
 私は、政府のインフラ戦略、インフラのマネジメント政策の最近の動向をお話しする。高度経済成長期以降に整備された道路橋、トンネル、河川、上下水道、港湾等について、建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に高くなる。人口減少が進む中で、社会資本も急速に老朽化が進行する。老朽化が深刻化する時代に既になっている。これが2040年になると、そのうち7割が整備後50年以上になって非常に深刻なインフラの老朽化の時代を迎える。これから全てのインフラにおいて、こうした老朽化の対策が待ったなしになってくる。
 こうした中で、インフラのメンテナンスで点検、診断改修などは事後的に行うのではなく、予防保全的に前もってそのリスクを把握して予防していくインフラメンテナンスを国土交通省が各自治体に対して推奨している。ただ、将来的なインフラの維持管理更新費用が30年間で約190兆円になる、非常に多額の予算が必要になってくる。
 こうした状況の中で、昨年1月、埼玉県の八潮市で大規模な事故が起こってしまった。事故を踏まえて、国土交通省は対策について有識者委員会を設置して検討を開始。下水道管路マネジメントの転換を図る。先ほどの予防保全のメンテナンスという観点だけではなく、ちゃんと優先順位を付けてメリハリをつけて改修を決めていく。点検ではドローンといった先端技術を活用して点検を行っていく。
 国では第6次社会資本整備重点計画の概要を発表。そして、新しいインフラマネジメントのあり方について議論が始まっている。
 最新の社会資本整備重点計画におけるインフラ政策の方向性を軸にお話をすると、4つ大きな柱があって、そのひとつが『活力のある持続可能な地域社会の形成』。その中で最初に出てくる政策の柱が『地域の将来像を踏まえたインフラの再構築』。インフラ老朽化対策の充実・強化とともに、まちづくりと老朽化対策の連携によるインフラの再構築(集約・再編等)を推進。また、自治体の取り組みを『見える化』し、国として取り組みを後押しするもの。
 2番目の柱は『持続的で力強い経済成長の実現』。強靱な国土を支える力強い経済社会の中で、人流や物流インフラの整備、経済安全保障に資する企業立地の周辺インフラ整備といったものを官民連携でインフラ産業の成長力を強化していこうとしている。
 このほか『民間事業者の取り巻く事業環境の改善』、『地域課題の解決に資するような官民連携の取り組みの推進』。今年度はこの4つの視点で官民連携を取り組んでいるところだ。
 ところで、我々にはオープンデータ、あるいはビッグデータがある。それを総合的に統合してインフラをマネジメントすることが、これからもっと重要になってくると思う。こうした中、天地人は、衛星データも使って、水道管の損傷リスクを把握する、あるいは様々なビッグデータを重ね合わせて、そのマネジメントをするための支援を行っている。こうした民間企業の連携などもこれからさらに重要になってくる。地域のインフラをマネジメントして、大きな事故が起こらないように地域の資産を上げていく、価値を上げていく、資産価値を高めていく。それを行政だけではくて、地域住民、様々なステークホルダーと連携をして、その維持管理、利活用していく。こうしたことがいわゆるインフラ経営ということだ。
 続いて、豊田市の太田市長は「チェンジ!チャレンジ!で持続可能な社会の実現 ~官民共創でつながる社会へ~」と題して次のように講演した。
 豊田市に張り巡らされている水道管路の総延長は3700㌔㍍もある。このメンテナンスは極めて深刻で、限られた財源、限られた人材でこれからメンテナンスをかけていくので、とても危機感を持っている。それでいろいろな取り組みをしている、せざるを得ないという背景がある。
 具体的な事例として、漏水リスクの評価では市の上下水道局、ベンチャー企業、漏水調査会社の3社にて漏水リスクを評価する実証実験を実施した。複数の衛星から水道管にストレスを及ぼす要因及び水道管データをAIで解析する。このほか超小型のドローンを使った水道管下水道管の点検作業も行っている。どうしても狭くて人の手が入らない、あるいは危険性がある。そういうところの検査で企業と連携の協定を結んで取り組みを始めた。さらに車載用赤外線センサーを道路に照射して、そこから取得した路面温度をAIが解析する事例では、路面の地下がどうなっているかは、見てわかるわけではないが、地下に例えば水が漏れている、あるいは空洞があるという状態になると、このセンサーで状況がある程度判断できる。
 続いて、磐田市の草地市長が「『笑顔』をKPIに ~対話で拓く、ウェルビーイングな官民連携~」と題し次のように講演した。
 インフラの維持は安心の要だと思う。道路、河川、橋梁、水道、下水などインフライコール安心の土台である。未来に負債を残さないようにしなければいけない。磐田市の水道管総延長は1400㌔㍍で、そこで毎年800万円お金をかけながら調査をしてきた。非常にお金がかかる。古くなった水道管を見ると、実は目に見えないだけで、管の中はもう錆でいっぱいというところが増えている。これをいかに効率よく更新していくかが重要で、昔は棒を持ちながら漏水調査をしていたが、これをなんとかテクノロジーの力でできないかと思い、豊田市の視察にも行った。そして、天地人の漏水リスク管理業務システム「天地人コンパス 宇宙水道局」を使わせていただいている。メッシュを組んで、その中で空から見た解析をしていただいて、リスク評価をしていただいている。調査した区域のうち40%のところで漏水を発見できて、導入前の6倍の発見率で、宇宙から見たシステムを使うとかなりの的中率で漏水がわかるということが結果としてわかった。
     ◇
 『特別講演』は『「インフラ経営」を科学する―なぜ今、EBPM型インフラマネジメントなのか? AI×データが変える意思決定の『新』常識」と題して、大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻教授でサステイナブル・インフラ研究センター長の貝戸清之氏が行った。
     ◇
 『セッション1』は、「ベテラン引退後も水道を守る―AIが継承する、現場の『経験と勘』 ~見えない地下インフラを『データ化』する技術とチーム論~」と題して、福島県会津若松市上下水道局上水道施設課兼下水道施設課主幹の遠藤利哉氏、磐田市環境水道部上下水道工事課水道工事グループの松尾聡幸氏、佐賀市上下水道局水道工務課管路計画係主査の姉川和彦氏、宮崎県都城市上下水道局水道課副主幹の山﨑裕太氏、天地人執行役員COOの樋口宣人氏、天地人経営企画室の小蔦久美子氏(モデレーター)がパネルディスカッションを行った。
 都城市の山﨑氏は「市民に応えていく水道ということで、将来像に掲げた5つの目標がある。健全で持続可能な水道、安心な水道、いつでもどこでも使える水道、親しみやすい水道、優しい水道。安心と安定という部分を特に意識して、私自身、水道課の配水担当として、水道管の維持管理と漏水調査を主に担当している。安心な水を安定して供給していくためには、常日頃からの漏水調査をしっかり行って、早く見つけて早く修理して、市民の皆様に不利益を与えないようにするっことを、考えながら毎日業務にあたっている。令和6年度から『天地人コンパス 宇宙水道局』を導入して、漏水の起こる発生している可能性が高い範囲を、色分けして表示するので、これまでよりも範囲がだいぶ絞られて、そういう色のついた地図を調査員に渡すと、、調査に対する意欲も上がって、調査効率自体もだいぶ上がったと実感している」と述べた。
 天地人の樋口氏は「皆さん、ほんとうにその水道インフラの維持管理、それからその保全に対して誠心誠意取り組んでいることが、今日ほんとうに伝わったのではないかと思う。通常のどこの自治体でもここに普通に取り組めるような状況を作り上げることこそが、何より我々が次世代に向けて取り組むべき課題だと思っているし、何よりこれはただ単に技術の話ではなく、水道インフラをマネジメントすること、社会システムの経営である。。そこの住民を十分巻き込んで、地方の企業も産業も官も民も学も全てを巻き込んでようやく成立するような話である。ぜひこの取り組みをもっとも可視化していっていただきたいし、住民を巻き込んでいってもらいたい。住民側としても、これを全員が自分事だと思わないと、この大事な社会インフラというものが破綻しかねないと思う」と述べた。
     ◇
 『セッション2』は、「道路を『コスト』から『価値』へ ~AIと移動データで、維持管理と都市活動を最適化する~」と題して、元国土交通省大臣官房技術調査課建設技術政策分析官の西尾崇氏、愛知県岡崎市土木建設部道路維持課の新川寛成氏、東京電機大学システムデザイン工学部情報システム工学科教授兼エクスポリス株式会社CEOの松井加奈絵氏、アイシンLBS製品本部移動サービス事業推進部新規事業推進室室長の手嶌亨氏、一般社団法人ベンチャー・カフェ・東京の長森ルイ氏(モデレーター)がパネルディスカッションを行った。
     ◇
 『セッション3』は「日常の点検から、緊急時の対応まで―『正しいメンテナンス』を再定義する 平時のDXが、有事の命を守る。フェーズフリーなインフラ管理」と題して、熊本県玉名市建設部土木課課長補佐(橋梁メンテナンス係長兼務)の木下義昭氏、和歌山県田辺市建築課調査計画係係長の田上健太郎氏、福井県総務部知事公室(土木部政策推進G兼務)ドローン活用ディレクターの朝井範仁氏、Spectee代表取締役CEOの村上建治郎氏、一般社団法人ベンチャー・カフェ・東京の前田明子氏(モデレーター)がパネルディスカッションを行った。
     ◇
 JAXA認定の宇宙ベンチャー「株式会社天地人」は、自治体の緊急対応を支援するため、要請に応じて迅速に全域の漏水リスク評価を行う「災害時支援サービス」を展開している。同サービスは、宇宙ビッグデータを活用した水道管の漏水リスク管理業務システム「天地人コンパス 宇宙水道局」を活かし、災害時等の土地の変化をピンポイントで評価できる。

この記事を書いた記者

アバター
田畑広実
元「日本工業新聞」産業部記者。主な担当は情報通信、ケーブルテレビ。鉄道オタク。長野県上田市出身。