【InterBEE報告】NHKテクノロジーズ 「超体験!~メディア技術で拓く未来~」

 NHKテクノロジーズ(NT)は、国際放送機器展「Inter BEE 2022」にNHKエンタープライズ(NEP)と共同出展で、2社での共同出展は初めてとなる。今回の出展テーマは「超体験!~メディア技術で拓く未来~」。 AM・FM ラジオ再送信ソリューションとして展示する「高機能FM中継装置」は昨年も展示しているが、今年は「AM・FMラジオ再放送装置」と一緒に、AMラジオのFM補完放送も睨み展示した。 AMラジオ再放送装置(iラジオ)は、地下街や地下駐車場、トンネルなど、電波の届きにくい場所でもラジオをクリアに聞くことを可能にする製品。再放送装置と結合器を用いて既存の配線などを利用して簡単に構築できる。変復調や周波数転換等を行わないため放送音質の劣化はほとんどなく、システム構成はシンプルなため保守も容易という。さらに FM ラジオの再放送装置を導入する場合は、漏洩ケーブルの吊り線を利用することで AM・FM 両方のラジオ放送の伝送をローコストで実現する。 「遠隔監視ができる簡易 V―ONU」は、機器の監視を容易にするシステム。放送設備に用いられるV―ONU はダウンリンクのみであり、監視機能は有していない。故障・不具合時には原因を探すため V―ONU の状態を現地で個々に確認する必要がある。そのため、V―ONU の光信号の有無や通電の有無などを検出し、ネットワークを介してスマホやPCで監視できる簡易ウォッチャを開発した。光出力や通電の情報をLPWA(Sigfox)を通じてネット輪0区に送り監視するもの。これにより、実際に人が現地に行く前に、故障個所や原因を特定することが可能になり、故障診断の切り分けが容易となるという。 また、「高機能FM中継装置」は、山口放送と日本通信機との共同開発品で、回り込みキャンセラー機能を内蔵し、放送波受信による同一周波数中継放送を可能にする装置。すでに3件の特許を取得している。放送文化基金の放送文化基金賞(放送技術)を受賞しており、ブースで実機と共にトロフィーも展示していた。 「22.2ch音響対応 MPEG―H 3D Audio (Level4) 制作・配信/受信システム」は、受信側で任意のスピーカーレイアウトに変換し、ホームシアタースピーカーやサウンドバー、ヘッドフォンを使うことで、より身近に22.2ch音響を体感できるシステム。22.2ch音響は自宅などで使用するのはかなりハードルが高い。同システムを用いることで、22.2ch音響をより身近に親しめることを目指している。期間に渋谷のNT本社から、幕張メッセの同社ブースまでライブ配信するデモを実施した。8K映像および22.2ch音響をクラウド(AWS)とインターネットを用いて配信した。 「IP映音マルチトラックレコーダー」も紹介。音声のマルチトラック収録は当たり前に行われているが、映像は1台のカメラに対し1台の収録機(ストレージやメディア)が必要となっている。一方、複数のカメラを用いるマルチカメラは日常化している。このため、1台のカメラに1収録機器ではバックアップの系統作成も含めると非常に大変になる。また、IP伝送メディア方式も複数あるが、これらを一元的にまとめて収録、バックアップする手法は確立されていない。IP映音マルチトラックレコーダーは、どんなエンコードフォーマットでも、混合して収録することを可能にした。ブースでは8K ST2110 VICO IP プレイヤーとして展示した。 「リニア編集シンクロナイザー」は未だ根強いVTRリモートを利用したリニア編集機能、JOG操作などを継続しスタジオ設計/運用のニーズに応えた製品。見慣れたGUIにより他社製品のノンリニア編集機やDAWシステムとの同期走行やチェイス機能を備えMAスタジオ運用にも対応するだけでなく、コントローラ間をIP化したことでリモートプロダクション運用も可能とした。 大日本印刷株式会社と共同開発した「感情表現字幕システム」は、話す人の感情を AI で読み取り、デザイン性の高い字幕を自動生成する。昨年の展示ではその技術をアプリ化したものを展示したが、今年はNHK開発の「まねっこどーもくん」とコラボ展示を行った。来場者はカメラに向かって動き、マイクに話しかけることでどーもくんとのコミュニケーションを実体験できるもの。自分が表現したことに対して、フォントが変化した字幕が表示されるなど、視覚的な情報を増やすことで、伝わり方の広がりをアピールしていた。