ウラノス・エコシステム実現に向けた実証に9件採択、NEDO・データ連携システム構築など

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、ウラノス・エコシステム実現のためのデータ連携システム構築・実証事業で、日立製作所・NTTデータグループ等の9件のテーマを採択した。実施期間は2025年度から2027年度の予定で、本年度予算額16億4900万円。データベース基盤整備・普及事業や、産業界でニーズの高い蓄電池及び化学物質情報分野でのデータ連携システムの開発・実証を行い、企業や業界の枠、国境を越えた円滑・安全なデータ流通の実現による豊かな社会を目指すとした。
 現在、様々な産業のサプライチェーンは川上から川下まで流通が国境を越えて広がっている。製品の安全性を確認するためには、サプライチェーン全体での製品に関するデータの流通が不可欠で、異なる組織・国間、異業種間で、信頼性を確保しデータを共有できる仕組みが必要。近年の欧州における資源循環や化学物質情報の分野での新たな環境データの管理強化などの動きへの対応も急務となっている。
 そこで、同事業では、ウラノス・エコシステムの実現に向けて、海外プラットフォームなどとの相互接続やトラスト確保の在り方などを検討し、その実現に向けたデータベース基盤整備・普及促進事業を行うとともに、産業界でニーズが高い蓄電池及び化学物質情報分野におけるデータ連携システムのの開発や実証を行うことにした。
 今回の同実証事業に係る9件の実施予定先は、ウラノス・エコシステムに資するデータスペース基盤整備・普及促進事業委託が(一社)自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター(再委託先:日立製作所)及びNTTデータグループ、蓄電池トレーサビリティ分野のカーボンフットプリント情報の流通促進のための高度化事業助成が(一社)自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター、化学物質情報の流通に係るシステム開発事業/化学物質情報のトレーサビリティ管理システムの開発助成がNTTデータ、化学物質情報の流通に係るシステム開発事業/化学物質情報のトレーサビリティ管理システムのアプリの開発・実証助成がdotD及びSotas、日本電気、富士通、それと化学物質情報の流通に係るシステム開発事業/資源循環の静脈系における化学物質情報等のトレーサビリティ管理のあり方に関する調査・研究委託が野村総合研究所、データスペースの構築及び普及・拡大に係る調査及びプロジェクトマネジメントオフィス業務委託がデトロイトトーマツコンサルティング、でそれぞれ事業に着手する。

 ◎(一社)自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センター(日立製作所)及びNTTデータが委託・実施する、ウラノス・エコシステムに資するデータスペース基盤整備・普及促進事業の概要:ウラノス・エコシステムがデータ連携の中心的役割を担い、多様なステークホルダーとビジネスプロセスの連携を促して強調領域と競争領域の双方から産業が活性化する仕組みが必要。システム構築においては、様々な産業分野がそれぞれのデータ連携システムを構築・拡張できるように、構築・拡張・運用が容易な仕組みを設計・開発。実証においては、産業が実ニーズを持つ複数のユースケースを対象に、各種業界団体・事業者と連携して業界ニーズに即したデータ連携システムを構築・評価する。この事業を通じて開発する技術仕様・ソフトウェアは原則公開して関係者から広く意見を受け付けるとともに、普及・促進のための取組みを実施してデータ連携システムの継続的な発展に貢献するとした。

 ◎NTTデータが化学物質情報の流通に係るシステム開発事業/化学物質情報のトレーサビリティ管理システムの開発助成の概要:サーキュラーエコノミー情報流通プラットフォーム実現の先鋒として、産業界からのニーズ・注目度の高い製品含有化学物質情報と併せて部品リユース情報、リサイクル材情報までも伝達可能とする「製品含有化学物質情報・資源循環プラットフォーム(CMP)構想」の実現に向け、サプライチェーンにおける川上から川下までの動脈系企業などが利用するCMPを社会実装する。CMP構想具体化のうち、動脈系企業などの製品含有化学物質の伝達を行うCMPの開発/アプリケーション実装を行う。アプリケーション実証の結果や普及活動を通じてウラノス・エコシステムの高度化に資する提案及び開発を行う。

 ◎日本電気が化学物質情報の流通に係るシステム開発事業/化学物質情報のトレーサビリティ管理システムのアプリケーションの開発・実証助成の概要:企業や業界などを越えたデータ連携の実現に向けて、CMPとデータ連携するアプリケーションを開発し、両システムを接続して実証する。実証の内容は、現状の化学物質管理業務の課題である「個社ごとの回答内容・フォーマットの違い」「開示範囲の制御・情報精度低下」「法規変更に対応した情報伝達」について、標準データモデルに基づく業務シナリオで実施し、課題対応に必要な技術確率がされているかを確認する。

 ◎富士通が化学物質情報の流通に係るシステム開発事業/化学物質情報のトレーサビリティ管理システムのアプリケーションの開発・実証助成の概要:化学品メーカー、商社、部品材料メーカー、部品メーカー、セットメーカーといった、最終製品の製造に関わるサプライチェーン上の企業(動脈系企業)が、実際のビジネス現場において製品含有化学物質情報を円滑に伝達できるかを確認する。法規制対応などの効率化が実現できているかを検証するため、自社が有するアプリケーションとCMPとの接続実証及びアプリケーションによるユーザー企業との接続実証を実施する。

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kobayashi
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