ソニー、XDCAMハンディカムのフラッグシップモデル

 ソニーは、1/2型 4K 3板式 CMOSイメージセンサーExmor R(エクスモアアール)と、最新の画像処理エンジンBIONZ XR(ビオンズ エックスアール)、AI処理専用のプロセッシングユニットを搭載し、3連リングのフルマニュアルレンズを備えたXDCAMハンディカムコーダーのフラッグシップモデル『PXW―Z300』を発売すると発表した。
 1/2型 裏面照射型 4K 3板式 Exmor R CMOSセンサーと画像処理エンジンBIONZ XRを搭載し、優れた色分解性能とF12の感度、被写体の質感やディティールを忠実に再現する4K 60p撮影が可能。レンズには、開放F値F1・9の光学17倍、マニュアルで回転角度による直感的な操作が可能な3連リングのフルマニュアルレンズを採用している。デジタルエクステンダーを使用すると、4K撮影時には1・5倍、HD撮影時には解像度の劣化が少ない最大4倍の高倍率ズームが可能となり、報道取材やイベント記録などの幅広い撮影シーンに対応する。
 また、フィルターの透過率を1/4から1/128までシームレスに変更できる電子可変NDフィルターおよび、光学式手ブレ補正機能を備えます。明るい屋外から暗い室内など明るさの異なる場所を移動しながら撮影するシーンでも、スムーズに明るさを調整しながらブレの少ない撮影が可能。
 なお、同機は、画像処理エンジンに加えて、AI処理に特化したプロセッシングユニットを搭載している。顔や瞳、骨格や姿勢などの情報に基づいた高精度な被写体(人物)認識が可能となり、後ろ姿やマスクを着けた人物でもオートフォーカス撮影が可能なことに加えて、カメラが自動的に構図を調整し、被写体(人物)を中心に捉えるオートフレーミング機能も備えている。
 LCDモニターには3・5型で約276万画素の高輝度LCDを採用し、明るい場所でも高い視認性を発揮する。また、新開発の3軸可動アーム「フレキシブルLCDアーム」により、モニターの向きや角度を柔軟に調整することが可能。カメラを肩に載せた撮影スタイルにおいてモニターとの視距離を調整したり、カメラ光軸中心にLCDモニターを配置して腹部固定で構えたり、前方に反転させてセルフ撮影を行えるなど、さまざまな撮影スタイルに対応する。
また、筐体側面に新たに採用した、Vマウントアタッチメント「サイドVマウント」は、カメラアクセサリーに加えて、スマートフォンやデータトランスミッターなどの伝送端末をワンタッチで一体的に装着することが可能。
 同機はスマートフォンまたはWi―Fi/有線LANとの接続により、撮影現場から収録素材を即座に転送したり、ライブストリーミングを行えたりするなど、5Gやクラウド技術を活用した新たなワークフローに対応している。収録素材はネットワークを介して、高画質かつ高圧縮率のフォーマットでクラウド上の素材共有サービスやオンプレミスのストレージに転送することが可能。低解像度のプロキシ素材の伝送においては、新たにHEVCコーデックにも対応し、より高画質、高圧縮率で転送できることに加え、チャンク形式(分割記録)で撮影中にクリップを転送することもできる。撮影終了後にメディアを取り出してから素材を送るといった作業を経ず、すぐに編集作業を開始できる。
 RTMP/RTMPSやSRTなどの主要な映像ストリーミングプロトコルにも対応し、動画配信サイトに接続することで、撮影現場からライブ配信を行うことができる。ポータブルデータトランスミッター『PDT―FP1』(別売)を「サイドVマウント」に装着して本機と接続することで、より安定した通信で映像素材を伝送するといった運用も可能。
 また、クラウド素材伝送サービス「C3 Portal(シースリーポータル)」やクラウドメディアストレージ「Ci Media Cloud(シーメディアクラウド)」などのクラウドサービスを活用することで、報道ファイルベースシステムとの連携や、プロジェクトメンバー間での素材共有や共同作業も可能。
としたり、クラウドスイッチャー「M2 Live(エムツーライブ)」との組み合わせで複数台カメラによるライブ配信を行ったりといった、より即時的かつ効率的な映像制作ワークフローの実現をサポートする。
 同機はニュース映像やドキュメンタリーを始めとした幅広い映像制作での活用を想定し、さまざまな記録フォーマットに対応している。XDCAMシリーズで採用している「MPEG HD422」や「XAVC Intra(4K/HD 4:2:2 10bit)」、「XAVC Long(4K 4:2:0 8bit/HD 4:2:2 10bit)」のMXFファイル記録に標準で対応することに加え、MP4でのプロキシ記録にも対応している。
 また、同機は多様なルックにも対応する。Cinema LineシリーズやXDCAM、HDCシリーズで選択できる「S―Cinetone(エスシネトーン)」や「ITU709」「709tone」に加え、「HLG Live」「HLG Mild」「HLG Natural」やユーザー3D LUTに対応し、メモリーカードや「C3 Portal」からユーザー独自の3D LUT(.cubeファイル)を取り込むことができる。
モバイルアプリケーション「Monitor & Control」にも対応し、スマートフォンやタブレット端末からアングルの確認やカメラの設定やリモコン操作を行うなど、マルチカメラ環境での撮影をサポートする。
同機は、真正性情報を記録するC2PA規格に対応する。カムコーダーとして世界で初めて動画に電子署名を付与して記録することが可能。静止画で対応してきた真正性への取り組みを動画にも拡大することで、近年報道機関から求められるコンテンツの信頼性向上のニーズに貢献していく。


新開発のフレキシブルLCDアームの使用イメージ


左:サイドVマウント 右:データトランスミッター装着イメージ